第362話 2011/12/16

映画「アレクサンドリア」の衝撃

この数年、多忙のため映画鑑賞の機会がめっきり減りましたが、最近ものすごい映画に遭遇しました。2009年、スペインで制作された「アレクサンドリア」という作品です。
原題はラゴラ(広場という意味)で、舞台は紀元四世紀の古代都市アレクサンドリア(エジプト)です。美貌の女性哲学者(数学者・天文学者)ヒュパティア の半生を描いたもので、ヨーロッパ映画史上最高額の制作費といわれる壮大なスケールにまず圧倒されるのですが、よくこんな映画がヨーロッパで作られたもの だと、本当に衝撃を受けました。しかも、主人公のヒュパティアが実在の人物ということに、さらに驚きました。
当時のローマ帝国皇帝がキリスト教徒になったこともあって、アレクサンドリアでもキリスト教徒が増大し、多神教の信者やユダヤ教徒への迫害(虐殺)が荒 れ狂う中、天動説を疑い地動説を研究するヒュパティアを魔女としてキリスト教徒が迫害するという、史実に基づいた映画でした。そして、「わたしが信じるも のは真理だけです」と言い放ち、キリスト教への改宗を拒否し、学問研究を続ける主人公の言動に深く感銘を受けました。
古代エジプトにおける宗教対立や奴隷制など、さまざまな問題を内包した作品ですが、わたしがもっとも驚いたのは、キリスト教徒による集団的残虐シーンが これでもかこれでもかと続くこの映画が、国民の75%がカトリック信者というスペインで作成されたという事実です。そして、この映画が興業的にも成功した という事実に、ヨーロッパでもついにこのような映画が製作され、受け入れられる時代になったということに、感銘したのです。
別の視点から見れば、この映画は古代を題材にしながらも、極めて現代的な問題を提起しているといえます。この映画の成功は思想史的にも貴重なものではな いでしょうか。学問と真実を愛する、古田学派の皆さんに是非見ていただきたい作品でしたので、紹介させていただきました。

フォローする