第1651話 2018/04/15

九州王朝系近江朝廷の「血統」論(1)

 今上天皇の御譲位が近づいていることもあり、皇位継承における男系・女系問題などを考える機会が増えました。そうした問題意識もあって、九州王朝の「血統」についても考えてみました。
 近年発表された正木裕さん(古田史学の会・事務局長)の九州王朝系近江朝という仮説は、『日本書紀』に見える「近江朝廷」の位置づけを九州王朝説から論究した最も有力なものと、今のところわたしは考えています。その正木説の主要根拠の一つである、九州王朝の皇女である倭姫王を天智が皇后として迎えることにより、天智は九州王朝の「血統」に繋がることができたとするものがあります。この意見には賛成なのですが、九州王朝の皇女を皇后に迎えても天智の子孫は女系となり、果たしてそのことで九州王朝やその家臣団、有力豪族たちを納得させることがてきたのかという疑問を抱いていました。
 もちろん当時の倭国内で男系が重視されていたのか、そもそも九州王朝が男系継承制度を採用していたのかも不明ですから、別に女系でもかまわないという批判も可能かもしれません。しかしながら、『日本書紀』によれば近畿天皇家は男系継承制度を採用したと考えざるをえませんから、当時の代表的権力者の家系は男系継承を尊重したのではないでしょうか。とすれば、天智が九州王朝のお姫様を正妻にできても、「ブランド」としての価値はあっても、九州王朝の権威をそのまま継承する「血統」的正当性の根拠にはならないように思われるのです。
 そうしたことを正木説の発表以来ずっと考えていたのですが、今朝、あることに気づきました。(つづく)

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