肥後と信州の共通遺伝性疾患分布
九州と信州が古代から交流があったことを「洛中洛外日記」でも紹介してきました。本稿末尾にそのタイトルを転載しています。それらの記事を読まれた読者のSさんから興味深い情報がメールで寄せられました。
Sさんは長崎県在住の医師で、家族性アミロイドポリニューロパチーという遺伝性の病気の集積地が熊本県と長野県にあり、このことは両地域の交流を示す痕跡ではないかとお知らせいただいたのです。それは専門家の間ではよく知られた分布状況とのことです。アミロイドポリニューロパチーは難病の一つで、患者さんは同じ遺伝子異常を持っていることがわかっており、長野のかたは熊本から移住したひとたちの子孫の可能性があるのではないかとSさんは考えておられました。
この疾患は、常染色体優性遺伝形式をとり、お父さんかお母さんのどちらかにその遺伝子があれば50%の確率で子供に遺伝するそうです。実際に発症するのはそれほど多くはないそうです。
送っていただいた分布図を見ても、熊本県と長野県に大きな分布が見られ、両者に血縁的関係があることを示唆していました。もっとも遺伝子情報だけではどちらからどちらへ伝播したのか、その時代が現在からどのくらいまで遡るのかは未詳です。歴史研究に遺伝子情報がどの程度有効なのか、その分野の進展が期待されます。今回、アミロイドポリニューロパチーの分布情報をお知らせいただいたSさんにお礼申し上げます。
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