第769話 2014/08/20

都塚古墳と大谷1号墳

(岡山県真庭市)

 階段状の方墳として明日香村の都塚古墳がマスコミに取り上げられていますが、 その報道内容が「初めての発見」とか「日本唯一」のようなものもあり、昨今の「地球温暖化」や「異常気象」報道のような扇動的・感情的な非科学的「受けねらい」の表現が蔓延しているように、メディアの報道姿勢に疑問を感じざるを得ません。
 「洛中洛外日記」765話で紹介しましたように、石積みを伴う階段状の方墳は岡山県真庭市の大谷1号墳が従来から知られており、都塚古墳が「新発見」「日本唯一」ではありません。『岡山県の歴史散歩』(2009年、山川出版社)によれば、大谷1号墳は7世紀後半の一辺約22mの方墳で、吉備地方におけ る代表的な終末期古墳とされています。斜面を利用した3段築成の墳丘の前面に2段の外護列石をもつ構造で、合計5段の階段状列石の方墳とのことです。石切 横穴式石室から家形陶棺とともに見事な金銅装双龍環頭太刀などが出土しています。
 付近には定(さだ)北古墳(7世紀中頃の一辺約25mの方墳)、定東古墳・定西古墳(7世紀前半から中頃の一辺約15~25mの方墳)、さらには定4号墳と定5号墳(小規模な方墳)などがあり、これらの古墳は外護列石をもつ段構造の方墳という共通性があり、吉備地方を代表する豪族の墓と見られています。
 こうした階段状の列石をもつ方墳という共通性が都塚古墳と真庭市の大谷1号墳などに見られるのですが、明日香(蘇我氏)と吉備との関係も検討が必要かもしれません。
 なお、岡山県赤磐市には方形の3段石積みの構造物の熊山遺跡があり、都塚古墳や大谷1号墳との関係が気になります。熊山遺跡は一辺約11.7mで、戒壇説・墳墓説・経塚説などがあるようで、謎につつまれた遺跡です。同類の遺跡が熊山山中には大小30数基確認されているそうです。このように吉備地方には方 形の階段構造の古墳・構造物の伝統があり、明日香や他の地域との比較など、科学的・学問的な報道が期待されます。

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