第2584話 2021/09/30

親鸞『歎異抄』の「悪人」とは何か

 9月25日に開催された「東京古田会」の月例会(注①)にリモート参加させていただきました。午後1時から5時まで、しっかりと勉強しました。
 古田先生の著書『古田武彦の古代史百問百答』を読みながら、質疑や意見交換するというコーナーもあり、出された疑問に対して、参加者が答えるという、「古田史学の会」関西例会では見られない取り組みで、興味深く思いました。なかでも同書の7章「思想家としての古田武彦」にある親鸞の『歎異抄』の中心思想について寄せられた質問は重要なものでした。それは「逆謗闡提(ぎゃくぼうせんだい)」と「悪人正因」について、どちらがより根源的な親鸞思想なのかという問でした。このような問が出されることに、同例会の素晴らしさ感じました。
 同質問について、僭越ながら私の理解を次のように説明させていただきました。

(1)「逆謗闡提」、すなわち念仏集団を迫害した上皇・天皇や臣下、彼らが救われることこそが阿弥陀仏の究極の悲願とするのが親鸞の中心思想である(古田武彦説)。
(2)『歎異抄』に見える「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」という思想も『歎異抄』の中心思想である。
(3)共に親鸞晩年に至る思想であり、両者は通底する親鸞の中心思想と思われる。
(4)親鸞時代の「悪人」とは「被差別民」のこととする河田光夫氏(注②)の研究がある。

 このときの対話がきっかけとなり、わたしは河田光夫氏の著書『親鸞と被差別民衆』(明石書店、1994年)を四半世紀ぶりに再読しました。(つづく)

(注)
①来月、10月30日(土)の例会テーマは「倭の五王」とのこと。
②河田光夫(1938~1993)。大阪府に生まれる。神戸大学文学部国文学科卒業、大阪市立大学大学院研究科修士課程修了。大阪府立今宮工業高校定時制に勤務。親鸞と被差別民の関係に論究した論文多数。

フォローする