古田武彦一覧

第203話 2008/12/31

2009年新年賀詞交換会済み

 202話を書き終わってから気がついたのですが、孝徳紀の白雉改元儀式はかなり詳細に記述されています。当初は、九州王朝系史書をからの盗用かなと考えていたのですが、もしかすると孝徳自身が九州王朝の臣下の一人として列席していたのではないかと思うようになりました。

   場所も大阪ですから大和からもそう離れてはいませんし、『日本書紀』の記載するところでは、孝徳の宮殿を難波長柄豊碕宮としていますから、おそらく前期難波宮の北方に位置する長柄に自らの宮殿を構えていたのではないでしょうか。
  九州王朝による白雉改元の儀式が完成間近の前期難波宮で執り行われることになり、孝徳は臣下ナンバーワンとして列席した可能性大です。ですから、孝徳や「大和朝廷」の官僚達はその見事な宮殿と絢爛たる改元儀式を実際に参加し、実見したため、『日本書紀』に詳しく掲載できたのではないでしょうか。ただし、主客を置き換え、前期難波宮を自らの宮殿であるかのような記述にして。
    前期難波宮九州王朝副都説は万葉集の史料批判にも有効のようで、このことについてもいつか述べたいと思います。
 さて、2009年1月10日、古田史学の会では古田先生のご自宅近くの向日市物集女公民館にて、古田先生をお迎えして新年賀詞交換会(参加無料)を開催します。詳細は次の通りです。終了後、近くの焼き肉やさんで懇親会(有料、定員あり)も開催します。ちょっと交通の便は不便ですが、古田先生にお会いできる数少ない機会です。ふるってご参加下さい。
    それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい。
 
日時 2009年1月10日(土)午後1時〜3時
場所 向日市物集女公民館(向日市物集女中条26)電話075−921−0048
   阪急らくさい口駅 西へ徒歩約13分
※会場はややわかりにくい場所ですので、事前に地図などで調べてからおこし下さい。


第185話 2008/08/14

『奪われた国歌「君が代」』

 待望の新刊、古田武彦著『奪われた国歌「君が代」』が出ました。情報センター出版局刊、1400円+税です。
 カバーの帯に『「君が代」は、本当に天皇を讃えた歌なのか?数奇な運命を辿った「国歌」成立の過程が、隠された「邪馬壱国」「九州王朝」をあぶり出す。独創的異説が絶対的な説得力をもって「定説」を凌駕する。』とあるように、古田史学九州王朝説の真髄が凝縮された一冊となっています。初心者はもとより、研究者にとっても古田史学の再理解を深める上でわかりやすい好著といえるでしょう。
   北京オリンピックの表彰式で「君が代」を聞くとき、この本を読んだ人と、そうでない人との決定的な「落差」を感じさせる、暑い夏、熱い一冊です。


第162話 2008/02/19

古田先生からの朗報

 2月16日の関西例会途中で、木村賢司さんの携帯に古田先生から電話がありました。古田先生は群馬県のとある病院で手術を受けられていたのですが、その手術が大成功だったというものでした。古田先生自らのお電話での報告に、例会参加者は胸をなで下ろしました。例会後の懇親会でも、手術成功を祝って乾杯をしました。『古田史学会報』4月号にも古田先生の寄稿が予定されており、これで益々お元気に活躍されることと思います。
 2月例会の発表は次の通りです。なかでも、竹村順弘さんの報告はミトコンドリアやY染色体の科学的な解説を伴ったもので、非常に参考になりました。定年退職後、中国留学されている会員の青木さんが一時帰国を利用して、例会に参加されるなど、関西例会は参加者や発表者が増えて、回を重ねる毎に充実してきました。
 なお、今回より発表者増加に伴い、発表の事前申請や時間制限(原則30分)などの運用が始まりましたので、ご理解とご協力の程、お願いいたします。

〔古田史学の会・2月度関西例会の内容〕
○研究発表
1). 故郷への手紙(豊中市・木村賢司)
2). 一寸千里の法2(交野市・不二井伸平)
3). 谷本茂氏「古代史研究の方法について」への反論(神戸市・田次伸也)
4). 南米先住民と日本人のDNA比較─ミトコンドリアと染色体(木津川市・竹村順弘)
5). ナゾの写真の史料批判・九州年号─未知の文献3件(相模原市・冨川ケイ子)
6). 岐須美々は蔵耳(大阪市・西井健一郎)
7). 常陸国風土記に見る「天下立評」(川西市・正木裕)
8). 沖ノ島6(生駒市・伊東義彰)
9). 『日本書紀』における帝紀的記事・他(たつの市・永井正範)

○水野代表報告
  古田氏近況・会務報告・八代海の大宮姫伝説・他(奈良市・水野孝夫)


第157話 2008/1/20

九州王朝論の独創と孤立

 昨日は古田先生による新年講演会が開かれました。今後は著書執筆に専念されるため、特段の事情のない限り、古田先生の講演会は行われないとのことで、遠方からも多くの聴講者が集まりました。「九州王朝論の独創と孤立について」という演題で、最近の研究テーマとともに、社会体制が変わっても、その体制に都合の良い「歴史観」が採用されるだけであり、そうではなく、真実のための歴史観を獲得しなければならないと、情熱を込めて話されました。講演内容は『古代に真実を求めて』12集に掲載されることになると思います。
 講演に先立ち、午前中は関西例会が行われ、短里研究で著名な谷本茂さん(会員)の研究発表がありました。短里はなかったとする田次伸也さん(会員)への反論で、質疑応答では他の参加者も交えて、激しい論争になりました。例会への初参加者は、その激しさに驚かれたようですが、古田史学の会・関西例会ならではの光景で、面目躍如といったところです。
   講演後は古田先生を囲んで、40名近くで新年会を開催し、盛り上がりました。ペルーから筏で日本まで航海するプロジェクトの関係者などもご参加いただき、楽しい一夕でした。
   常連組は引き続き3次会へと突き進み、四国から参加された阿部さん(古田史学の会・四国 副会長)、合田さん(古田史学の会・全国世話人)を交えて、親睦を深めました。

  〔古田史学の会・1月度関西例会の内容〕
  ○研究発表
  1). 古代史研究の方法について−田次伸也氏の所論を巡って−(神戸市・谷本茂)

  ○水野代表報告
   古田氏近況・会務報告・伊勢穴津は淡海=八代海に面していた・他(奈良市・水野孝夫)

  ○古田武彦氏新年講演会
   九州王朝論の独創と孤立について(古田武彦)


第156話 2008/1/4

松本郁子著

『太田覚眠と日露交流
  — ロシアに道を求めた仏教者』

 あけまして、おめでとうございます。
 この年末年始は、テレビで「のだめカンタービレ」の再放送を見て過ごしました。娘が高校のオーケストラでファゴットを演奏していることもあって、オーケストラドラマの「のだめカンタービレ」を家族で見ました。なかなか、面白いドラマで、いつか時間があれば原作(漫画)も読んでみたいものです。ちなみに、このドラマのテーマ曲であるベートーベンの7番は私が大好きな曲です。
 それともう一つ、松本郁子著『太田覚眠と日露交流−ロシアに道を求めた仏教者』(ミネルヴァ書房)を著者からいただき、読んでいますが、この本は太田覚眠研究の名著というにとどまらず、アウグスト・ベエグ、村岡典嗣、古田武彦と続くフィロロギーの学問を継承した一冊です。古田史学、とりわけ日本思想史の分野に関心を持つ者には必読の一冊であることを断言します。
 ロシア語に堪能な若き著者は、日本国内は当然のこととして、ロシアまで史料探索を行っており、その結論だけではなく、学問の方法が見事です。しかも、その文章力により、読みやすく、面白く感動的です。まるで、古田先生の著書を読んでいるかのような錯覚さえ覚えました。
 著者の松本郁子さんは、これからもロシアへ赴き調査を続けると言われており、早くも続編の刊行が楽しみです。新年最初の読書に相応しい本でした。

松本郁子氏研究の一部分は古田史学会報により読むことが出来ます。

例 太田覚眠における時代批判の方法ー昭和十年代を中心としてー
(古田史学会報六五号)


第115話 2007/01/14

1月20日(土)、古田武彦講演会を開催済み

 昨日、三条河原町のBALビルにある喫茶店で、年始の御挨拶を兼ねて、古田先生と4時間近く対談しました。和田家文書寛政原本や最近の発見などについてお話をうかがうことができました。中でも、親鸞の越後流罪に関する新発見は大変興味深いものでした。
  この時うかがった新発見については、古田史学の会主催の新春講演会(1月20日・大阪市)で発表されるとのことでした。多くの皆さんのご参加をお願い申し上げます。
  古田先生も今年で81歳になられますが、お元気そうで何よりでした。聞けば、1月7日に吹雪の中、登山されたそうです。また、わたしにも、健康に留意し早く本を出すようにご忠告をいただきました。執筆時間を捻出することが今年の課題になりそうです。


第113話 2007/01/06

『なかった 真実の歴史学』第2号発刊

  昨年末、古田先生直接編集『なかった 真実の歴史学』第2号がミネルヴァ書房より発行されました(定価2200円+税)。第2号も盛り沢山の内容で読み応えがあります。古田先生による論稿や講演録も下記の9編が掲載されています。

  ○序言
  ○三つの学会批判
 九州王朝の門柱(太宰府)
 九州年号の木簡(芦屋市)
 「国引き神話」の新理論(ウラジオストク)
○太田覚眠と「トマスによる福音書」 第1回
○古田による古代通史 第2回
○敵祭−−松本清張さんへの書簡 第2回
○中言
○高校生への回答−−中島原野君へ
○先輩への御回答−−浅野雄二さんへ
○末言

  また下記の本会会員の論文なども掲載されています。
○渡嶋と粛慎について−−渡嶋は北海道ではない
  合田洋一(本会全国世話人)
神武が来た道 第1回
  伊東義彰(本会会計監査)
○太陽の娘ヒミカ(漫画)
  古田武彦監修・深津栄美(会員)作・おおばせつお画


第102話 2006/10/10

古田武彦と「百問百答」
 本会の友好団体、古田武彦と古代史を研究する会(東京古田会)より素晴らしい一冊が上梓されました。『古田武彦と「百問百答」』という本です。同会会員
より出された131の質問に対して、古田先生が答えられたもので、最新の古田先生の考え方や新説が満載となっています。

   同会の藤沢徹会長による「はじめに」の文章をお借りすれば、次のような新知見が紹介されています。
  (1)「磐井の乱はなかった」理由
  (2)唐は九州王朝の天子薩夜麻を何故釈放したのか。その政治的意義
  (3)中大兄・中臣鎌足の白村江戦線離脱の戦略的評価
   いずれも古代史上の重要で興味深いテーマです。ちなみに、私の「九州王朝の近江遷都」説に対しても4頁にわたりご批判をいただいています。恩師から直接にご批判をいただけることに感謝したいと思います。
   おおいに触発される多彩なテーマが扱われており、お奨めの一冊です。
 
  お求めは、
  東京古田会(http://www.ne.jp/asahi/tokfuruta/o.n.line/)


第100話 2006/09/30

九州王朝の「官」制

 第97話「九州王朝の部民制」で紹介しました、大野城市出土の須恵器銘文「大神部見乃官」について、もう少し考察してみたいと思います。
 古田先生が『古代は輝いていたIII−法隆寺の中の九州王朝−』(朝日新聞社)で指摘されていたことですが、法隆寺釈迦三尊像光背銘中の「止利仏師」の「止利」を、「しり」(尻)あるいは「とまり」(泊)と読むべきであり(通説では「とり」)、地域名あるいは官職名であるとされました。後に、同釈迦三尊像台座より「尻官」という墨書が発見され、この古田先生の指摘が正鵠を射ていたことが明らかになるのですが(『古代史をゆるがす真実への7つの鍵』原書房参照)、尻官が九州王朝の官職名であり、「尻」が井尻などの地名に関連するとすれば、大野城市出土の須恵器銘文「大神部見乃官」の「見乃官」も地名に基づく官職名と考えられます。そうすると、九州王朝は6〜7世紀にかけて「○○官」という官制を有していた可能性が大です。
 このように「尻」や「見乃」部分が地名だとすると、第97話で述べましたように、久留米市の水縄連山や地名の耳納(みのう)との関係が注目されるでしょう。この「地名+官」という制度は九州王朝の「官」制、という視点で『日本書紀』や木簡・金石文を再検討してみれば、何か面白いことが判発見できるのではないでしょうか。これからの研究テーマです。
  ところで、昨年5月より始めたこの「洛中洛外日記」も、今回で100話を迎えました。これからも、マンネリ化しないよう、緊張感や臨場感、そして学的好奇心を刺激するような文章を綴っていきたいと思います。読者の皆様のご協力と叱咤激励をお願い申し上げます。


第96話 2006/09/01

祝・傘寿、古田武彦先生
 
この8月8日、古田先生は傘寿、80歳を迎えられました。心よりお祝い申し上げたいと思います。誕生日当日、古田先生は屋島調査旅行の最中。木村賢司さん
の心配りでバースデイケーキが用意されたとのこと。ローソクを吹き消す古田先生の写真を拝見しましたが、めっきりと白髪が増えられていることに、あらため
て気づきました。
 思い起こせば、わたしが古田先生に初めてお会いしたのは、茨木市で行われた市民の古代研究会主催の講演会でした。その時、ちょうど先生は還暦を迎えら
れ、皆でお祝いしました。あれから20年が過ぎていたのでしたが、そのおり先生の傍におられた関西の方々の多くは鬼籍に入られ、あるいは離反され、気がつ
いてみると、残っているのはわたしだけとなりました。しかし、木村さんのような新たな人々が、また先生の周りを幾重にも取り囲んでおられます。

    今、わたしは次の漢詩の一節を思い起こしました。
 
   年々歳々、花相似たり。
   歳々年々、人同じからず。
 
   なお、『古代に真実を求めて』10集は「古田先生傘寿記念特集号」にしたいと考えています。具体的な企画立案はこれからですが、皆様のご協力をお願いいたします。
    古田先生のご長寿を祈念いたします。


第81話 2006/06/04

祝・創刊『なかった−真実の歴史学−』

 古田先生渾身の一冊が創刊されました。『なかった−真実の歴史学−』(ミネルヴァ書房、2200円+税)です。この新雑誌は年二回発行される予定ですが、新東方史学会設立以来、最初の事業となります。「直接編集古田武彦」と銘打たれたとおり、この新雑誌創刊と編集にかける古田先生の情熱と労力は尋常ではありませんでした。それだけに、今回の創刊を心よりお祝いしたいと思います。そして何よりも、古田ファンや古田学派の全ての人々に読んでいただきたいと願っています。
 内容は下記のとおり、豪華絢爛。子供向けのマンガや連載小説、学界批判、古代通史、オロチ語辞典、中国語訳メッセージと、古田史学のエッセンスが満載です。定期購読のお申し込み(代金は宅配便による着払い方式)は次の通り。

ミネルヴァ書房 編集部(田引・たびき)
 電話075−581−5191
 FAX075−581−8379

【創刊号目次】
序言 古田武彦
連載 古田による古代通史 第一回 古田武彦
学界批判 九州王朝論−−白方勝氏に答える 古田武彦
研究発表 『大化改新詔の信憑性』(井上光貞)の史料批判 古田武彦
連載 敵祭−−松本清張さんへの書簡 第一回 古田武彦
中言 古田武彦
論文・エッセイ
「随筆」について 安藤哲朗
 明日を拓く「古田史学」−−新東方史学会発足に期待 北村明也
『國体の本義』批判の今日的意義 藤沢徹
 条里制の開始時期 水野孝夫
遺稿 「和田家文書」復刻版発行について 藤本光幸
読者から 三つの問い 宮崎宇史
読者へ 若き研究者への回答−−宮崎宇史さんへ 古田武彦
連載 「心」という迷宮−−漱石『心』論 前編 田遠清和
連載 ちくしの女王「ヒミカ」 第一回 酒井紀年
予告編 太陽の娘ヒミカ 古田武彦監修・深津栄美作・おおばせつお画
連載 オロチ語−−簡訳ロシア語=オロチ語辞典 松本郁子訳
末言 古田武彦
中国語訳(序・中・末言)


第61話2006/02/04

「万世一系」の史料批判

 「学問はナショナリズムに屈服してはならない。」「日本国家のナショナリズムの欲望によって『歴史の真実』を曲げること、これは学問の賊である。」「学問は政治やイデオロギーの従僕であってはならない。『歴史の真実』を明らかにすることと、現代国家間の政治的利害を混同させてはならない。そのような『混同の扇動者』あれば、これに対してわたしたちは、ハッキリと『否(ノウ)』の言葉を告げねばならぬ。それがソクラテスたちの切り開いた、人間の学問の道なのであるから。」

 以上は古田先生の言葉です(『「君が代」、うずまく源流』新泉社・1991年)。昨今問題となっている皇室典範の改正について、「諮問会議」やら御用文化人、御用学者の跋扈ぶりは目に余るものがあると言ったら、はたして言い過ぎでしょうか。不遜を承知で言わしていただければ、こうした問題は世界の人々の面前で、広く学問的に歴史的に論議を尽くして合意形成をはかるべきテーマであるように思います。一内閣の意向や功名心でリードするべき問題とは思われません。
 そのような中で、皇位継承の根元的な問題の一つである「万世一系」について、古田先生が講演されることは、まことに時宜にかなったものです。古田史学の会では、来る2月18日(土)、大阪市の中央電気倶楽部において古田先生の講演会を開催します。演題は『「万世一系」の史料批判─九州年号の確定と古賀新理論(出雲)の展望─」。天皇家は本当に「男系」なのか等、歴史学的な考察と現代史的意義が語られると思います。多くの皆様のご来場をお願いいたします。ナショナリズムや政治・イデオロギーに屈服しない学問、古田史学の真骨頂が聞けます。