第2252話 2020/10/06

ベティー・J・メガーズ博士の想い出(4)

 大原重雄さん(『古代に真実を求めて』編集部)から教えていただいたもう一つの古い土器、サン・ペドロ複合遺物(San Pedro complex)の土器については当該論文(注)を入手し、その写真を見ることができました。サン・ペドロ土器はバルディビアの南側約40kmほどのところにあるリアル・アルト(Real Alto)遺跡で発見され、そこはバルディビアと同じ太平洋岸に位置しています。ですから、広い意味では同一領域(エクアドル太平洋岸)と考えてもよいように思います。
 論文によればサン・ペドロ土器の中で最も古いものは、バルディビア土器1層とその下の無土器時代層の間から出土しており、バルディビア土器よりも古いとされています。掲載された写真によれば、その文様は単純な〝線刻〟であり、比較的進化した文様を持つバルディビア土器よりも素朴で古いと見てよいと思われました。
 以上の理解が正しければ、バルディビア土器の誕生が縄文土器の伝播によるとする場合、最初にリアル・アルトへ伝播し、その後に北部のバルディビアへも広がり、あの多彩なバルディビア土器群へ発展したと考えることもできます。あるいは、アマゾン川下流域の土器が南米大陸を横断してリアル・アルトへ伝播したのかもしれません。
 いずれにしても、このような新知見を取り入れて、「縄文人が太平洋を渡り、縄文土器がバルディビアに伝播した」とするメガーズ説の修正発展、あるいは大胆な見直しを含む再検証が必要な時代を迎えたようです。(おわり)

(注)〝New data on early pottery traditions in South America: the San Pedro complex, Ecuador〟Article in Antiquity June 2019 Yoshitaka Kanomata , Jorge Marcos , Alexander Popov , Boris Lazin & Andrey Yabarev

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