第3498話 2025/06/20

『古田史学会報』188号の紹介

 『古田史学会報』188号を紹介します。同号には拙稿〝倭国伝「東西五月行、南北三月行」考〟を掲載して頂きました。同稿は、『旧唐書』倭国伝に記された倭国の領域記事「東西五月行、南北三月行」が倭国(九州王朝)からの公的情報に基づいた概数記事であることを、『養老律令』厩牧令「須置駅条」・公式令「行程条」や『延喜式』「諸國駅傳馬」を史料根拠とした実証的な方法で論じたものです。『旧唐書』の倭国記事は、歴史経緯記事を除けば7世紀後半頃の倭国律令下の日本列島(駅路や駅数など)を対象としていることから、こうした方法を採用することができ、証明にも成功しているように思われます。

 当号掲載の論稿で注目したのが上田さんの〝『続日本紀』大宝二年 「采女・兵衛」記事についての考察〟でした。九州王朝の采女制度は以前から論じられてきましたが、上田稿では『続日本紀』大宝二年「采女・兵衛」記事に着目し、論じられたことが新しい視点であり、これからの進展が期待できるテーマでした。

 『隋書』俀国伝には「王妻號雞彌。後宮有女六七百人。」という記事があります。おそらくこの「後宮」は後の「中宮」のことではないかと推測されますが、王朝交代後の大和朝廷(日本国)も大宝律令により采女制度を継承し、薩摩・大隅を除く「筑紫七国」と蝦夷国(陸奥国・出羽国)に隣接する越後国からも采女貢進の命令を出すに至ったものと思われます。倭国律令復元研究においても上田稿は一つの方法論を示唆したものではないでしょうか。

 188号に掲載された論稿は次の通りです。

【『古田史学会報』188号の内容】
○逆転の万葉集Ⅰ 「あおによし」の真実 川西市 正木 裕
○定恵の伝記における「白鳳」年号の史料批判(前篇) 神戸市 谷本 茂
○『続日本紀』大宝二年 「采女・兵衛」記事についての考察 八尾市 上田 武
○倭国伝「東西五月行、南北三月行」考 京都市 古賀達也
○新羅第四代王・脱解尼師今の出生地は山口県長門市東深川正明市二区であった(上) 龍ケ崎市 都司嘉宣
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○6/22出版記念講演会・会員総会のお知らせ
○『古代に真実を求めて』29集 投稿募集要項
○『古田史学会報』原稿募集
○編集後記 高松市 西村秀己

『古田史学会報』への投稿は、
❶字数制限(400字詰め原稿用紙15枚)に配慮し、
❷テーマを絞り込み簡潔に。
❸論文冒頭に何を論じるのかを記し、
❹史料根拠の明示、
❺古田説や有力先行説と自説との比較、
❻論証においては論理に飛躍がないようご留意下さい。
❼歴史情報紹介や話題提供、書評なども歓迎します。
読んで面白く、読者が勉強になる紙面作りにご協力下さい。

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