張莉さん正木さん講演会のご報告
本日、大阪府立大学なんばキャンパスにて「古田史学の会」定期会員総会と記念講演会を開催しました。総会に先だって、張莉さん(漢字学者、大阪教育大学特任准教授)と正木裕さん(古田史学の会・事務局長、大阪府立大学講師)が講演されました。演題は次の通り。
張莉さん:「食」と「酒」の漢字
正木裕さん:漢字と木簡から魏志倭人伝の短里を解明する
張莉さんは中国天津のご出身で、天津といえば天津飯と天津甘栗が有名ですが、張莉さんは天津飯は日本に来て初めて食べたとのことです。また、天津甘栗の栗は天津産ではなく河北省産で、天津港から出荷されたため「天津甘栗」と呼ばれたようです。
講演では「食」や「飲」の字の意味と成立過程を金文や甲骨文字にまで遡って説明していただき、初めて知ることばかりでした。他方、日本語の「うまい」の語原が「熟(う)む」、「おいしい」は「美(い)し」、「まずい」は「貧しい」が語原であることなども初めて知りました。中国ご出身の張莉さんから日本語の語原を教えていただくのも不思議な感覚でしたが、張莉さんが白川静先生のお弟子さんであることを思えば、納得がいきます。最後まで興味深く聴講しました。
正木さんからは『三国志』の里単位が1里=75〜77mの短里であり、里程記事が実際の地図でも短里で一致することが確認できるとされ、実例をあげて説明されました。さらに古代中国の数学書『周髀算経』や竹簡(張家山漢簡、1983年出土)に記された「二年律令」などからも証明でき、そして短里の成立が殷代以前に遡ることにも言及されました。これら正木さんの研究は古代中国における短里に関する最先端研究です。
講演会後に行われた会員総会も全ての議案が承認され、新たに冨川ケイ子さんが全国世話人に選ばれました。場所を代えて行われた懇親会も盛り上がり、夜遅くまで親睦を深めました。参加された皆さん、お疲れさまでした。そして、ありがとうございます。これからも「古田史学の会」へのご協力をよろしくお願い申しあげます。