第2118話 2020/03/23

映画「ちはやふる」での「難波津の歌」

 先日、映画「ちはやふる -結び-」(2018年公開、同シリーズ2作目)をテレビで視ました。広瀬すずさん主演のこの映画は競技カルタと高校カルタ部という斬新な舞台設定で、青春映画として人気を博した作品です。原作は末次由紀さんによる同名のコミックで、映画脚本もよく練られていました。何よりも広瀬すずさんの可愛さと若さ、そしてカルタに挑む真剣な表情が全面的に表現されており、おりからの新型ウィルス騒動をしばし忘れさせてくれました。
 競技カルタといえば、近江神宮で毎年大会が開催されていることぐらいしかわたしは知らなかったのですが、映画の中でルール解説などもあり、勉強になりました。何よりも、競技開始のとき、最初に詠まれるのが古代史でも有名な「難波津の歌」であることを知り、感銘を受けました。その他の著名な和歌も詠まれており、いくつかは諳(そら)んじることができました。
 特に映画のタイトルでもある「ちはやふる」、そして「難波津の歌」は九州王朝研究でも注目されてきた古歌で、わたしも三十代の頃に研究テーマとしてきたものです。古田先生との共著『「君が代」うずまく源流』(新泉社、1991年)に掲載された拙稿「『君が代』『海行かば』、そして九州王朝」は「難波津」博多湾岸説に立った論文で、論証は拙いのですが、わたしにとって初めての著作であり、とても懐かしく大切な一冊です。
 そんなこともあって、映画「ちはやふる」を視て、三十年前のことをいくつも思い出しました。

《難波津の歌》『古今和歌集』仮名序
 難波津に 咲くやこのはな 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花 〈王仁〉
 ※競技カルタでは「今を春べと」と詠まれるそうです。

《「ちはやふる」の歌》『万葉集』巻七(1230)
 ちはやぶる 鐘の岬を過ぎぬとも 我は忘れじ 志賀の皇神(すめかみ) 〈作者未詳〉
 ※映画のタイトルは「ちはやふる」ですが、この歌は「ちはやぶる」と詠まれてきました。

《「ちはやふる」の歌》『古今和歌集』「小倉百人一首」
 ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは  〈在原業平〉
 ※こちらは「ちはやふる」とされていますから、映画タイトルはこの歌に従ったものと思われます。

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