第2693話 2022/03/03

古田先生の土器編年試案(セリエーション) (3)

 山村信榮さんが「大宰府成立再論 ―政庁Ⅰ期における大宰府の成立―」で説明されたように、確実な須恵器セリエーション分類のためには出土土器のサンプル数が重要です。この分類方法そのものはそれほど難解ではないのですが、文献史学の研究者には困難な課題が少なくありません。わたしの経験だけでも次のようなハードルがあり、未だに解決できていない問題もあります。

(a) 遺跡調査報告書の刊行が遅れることがあり、考古学関係者は知っている最新データが未発表のケースがある。
(b) 出土土器の破片が小さい場合、型式が判断できないケースが発生する。その数が多量だと、セリエーションの不確定要素が増し、編年誤差が拡大する。
(c) 遺跡調査報告書に掲載された出土土器の写真や断面図が、出土した土器の全てとは限らないケースがある。土器やその破片が大量に出土した場合は尚更で、報告書に全てが収録されることは期待できない。
(d) 出土土器型式に地域差や定義の違いがあり、飛鳥編年による型式(須恵器杯H・G・B)と対応が一見して困難なケースがある。その地域差を理解していないと型式の分類を間違ってしまうことがある。

 上記の(a)(b)については説明は不要と思いますので、(c)(d)の具体例を紹介します。(つづく)

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