金光上人関連の和田家文書 (1)
『東日流外三郡誌』を中心とする和田家文書の研究のため、史料性格別に次のように分類し、それに応じた史料批判が必要と発表してきました(注①)。
【和田家文書群の分類】
(α群)和田末吉書写を中心とする明治写本群。主に「東日流外三郡誌」が相当する。紙は明治の末頃に流行した機械梳き和紙が主流(注②)。
(β群)主に末吉の長男、長作による大正・昭和(戦前)写本群。明治・大正期に使用された大福帳の裏紙再利用が多い。
(γ群)戦後作成の模写本(戦後レプリカ)。筆跡調査の結果、書写者は複数。紙は戦後のもの。厚めの紙が多く使用されており、薄墨などで古色処理が施されたものや故意に破ったものがある。和田喜八郎氏によれば、コーヒー等で着色を試みたとのこと。展示会用として外部に流出したものによく見られる。真新しい和紙に書かれたものが若干ある。
これらのなかで、書写年代が比較的古いこともあって、史料批判が容易なα群に属する「東日流外三郡誌」はもっとも信頼性が高い史料と判断していますが、残念ながら明治写本約二百冊が行方不明となっているため、筆跡調査ができずに研究が滞っています。
他方、「東日流外三郡誌」よりも早い時期(昭和24年以降。注③)に世に出た和田家文書で、αβγでは分類できない重要な史料群がありました。金光上人関連資料です。(つづく)
(注)
①「「東日流外三郡誌」の証言 ―令和の和田家文書調査―」『東京古田会ニュース』213号、2023年。
②永田富智氏(『北海道史』編纂委員)の鑑定による。
「永田富智氏へのインタビュー 昭和四六年『外三郡誌』二百冊を見た ―戦後偽作説を否定する新証言―」『古田史学会報』16号、1996年。「古田史学の会」のHP「新・古代学の扉」に収録。
③開米智鎧編『金光上人』(昭和39年・1964年)の「序説」による。