第3336話 2024/08/30

同時代エビデンスとしての

        「天皇」木簡 (1)

 「九州王朝研究のエビデンス」というテーマで、多元的古代研究会のリモート研究会(金曜日10:00~)や「古田史学リモート勉強会」(毎月第二土曜日19:00~)で発表を続けています。

 古田学派の論者により諸説が発表されていますが、わたしの見るところ、ややもすれば自説に不都合なエビデンスを軽視したり(エビデンスの存在そのものをご存じないこともあるかもしれませんが)、『日本書紀』の記述を「わたしはこう解釈する」という解釈論争に終始するケースがありますが、史料根拠(エビデンス)に基づき、意見が異なる他者を説得する、あるいは自説を見直すということが必要です。わたし自身も再考すべき点が少なくありません。そのような問題意識もあって、再勉強を兼ねて「九州王朝研究のエビデンス」の史料整理と発表を続けています。現在まで次のテーマを発表しました。

(1) 造営尺の変遷と九州年号「白雉」
(2) 七世紀の須恵器編年
(3) 木簡
(4) 九州年号

 多くの質問や問題点の指摘を受けて、内容に修正や追記・改良を加えています。なかでも、飛鳥池遺跡から出土した「天皇」木簡の解釈や位置づけについて説明が不十分だったようで、改めて調査と勉強をやり直しています。この「天皇」木簡がどのようなエビデンスであり、どのような位置づけの木簡であるのかについて、再勉強の結果を詳述します。

 奈良国立文化財研究所HPの「木簡庫」によれば、飛鳥池出土「天皇」木簡は次のように説明されています。(つづく)

【本文】天皇聚□〔露ヵ〕弘寅□\○□
【寸法(mm)】縦(118) 横(19) 厚さ(3)
【遺跡名】飛鳥池遺跡北地区
【所在地】奈良県高市郡明日香村大字飛鳥
【発掘次数】飛鳥藤原第84次
【遺構番号】SD1130
【地区名】5BASNL36
【内容分類】文書
【人名】天皇
【木簡説明】上端・左辺削り、下端折れ、右辺割れ。上端は左角を削り落とし、裏側を面取りする。「天皇、露ヲ聚メ、寅ヲ弘メ…」と訓読できるが、文意は不詳。「露」は雨冠の他字の可能性もある。「天皇」が君主号とすれば、木簡の年代観から天武天皇を指すとみられる。ただし、君主号とは無関係な道教的文言の可能性もある。

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