第2790話 2022/07/18

「九州年号棟札」記事の紹介

 来月発表する「九州年号金石文」の資料作成を進めていますが、金石文以外に「九州年号棟札」も同資料に収録することにしました。寺社仏閣創建時や再建寺に付される棟札に九州年号が記されているという記録や報告が散見され、その同時代性や信憑性についての研究のためにも、それらの収集整理を今のうちに済ませておくのがよいと思い、この作業に取り組むことにしました。古田学派の研究者や未来の九州年号研究者に役立つ重要な仕事と考えています。
 現時点では次の「九州年号棟札」記事の存在がわかっています(注①)。いずれも未確認ですが、現存するのは(3)(4)(5)ではないかと推定しています。そのうち同時代史料の可能性があるものは(5)だけですが、棟札の起源が古代まで遡れるのかも含めて、これからの研究課題です(注②)。

(1) 賢称(576~580年) 「賢称」『偽年号考』 神明社棟札 愛知県渥美郡大津村神明社

(2) 鏡當(581~584年) 「鏡常」 蓮城寺棟札 大分県大野郡三重町蓮城寺

(3) 勝照四年(588年) 「勝照四年戊申」『山形県金石文』羽黒山棟札 山形県東田川郡羽黒町羽黒山本社

(4) 定居七年(617年) 「古三韓新羅国修明正覚王定居七年」 段熙麟『大阪における朝鮮文化』 慈眼寺無量光院棟札

(5) 白雉二年(653年) 「此社白雉二年創造の由、棟札に明らかなり。又白雉の舊材、今も尚残れり」「又其初の社を解く時、臍の合口に白雉二年に造営する由、書付けてありしと云」『太宰管内志』豊後之四・直入郡「建男霜凝日子神社」

(注)
①(1)~(4)は『市民の古代』11集(新泉社、1989年)によった。(5)は古賀の調査による。
②ウィキペディアによれば、現存最古の棟札は岩手県中尊寺の保安三年(1122年)銘を持つものとする。

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