関西例会一覧

月に一度例会を行っています。豊中倶楽部自治会館(阪急豊中駅北改札口から3分)でおこなうことが多いです。

第3251話 2024/03/16

スタンフォード大学にある

     明治時代の日本地図

 本日、 「古田史学の会」関西例会が東成区民センターで開催されました。次回、4月例会の会場は都島区民センター(図書館)です。

 今回の発表で特にわたしが注目したのが、播磨風土記の地名の現在位置に関する研究で谷本さんが使用した明治期作成の地図でした。一見、現在作成されている国土地理院の地図のようですが、今は失われた明治期の字地名が掲載されています。その地図がアメリカのスタンフォード大学図書館のホームページに掲載されており、誰でもアクセス可能とのことで驚きました。
江戸時代に遡る字地名の調査には、江戸期の地誌か明治二年作成『明治前期 全国村名小字調査書』(注①)を使用していたのですが、それですと地名はわかっても、その正確な場所がわからないことが多く、調査が大変でした。ところが、スタンフォード大学所蔵の地図であれば正確な場所もわかり、研究者にとってはとても有り難いことです。谷本さんのご教示により、そのような地図がネットで見られること知り、有益でした。

 ちなみに、『古代に真実を求めて』28集の特集テーマは「風土記・地誌の九州王朝」(注②)ですから、とてもタイムリーな研究発表でした。

 3月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔3月度関西例会の内容〕
①天孫降臨とニニギ命 (大阪市・西井健一郎)
②剣の神のタケミカヅチが素手でタケミナカタと戦う理由 (大山崎町・大原重雄)
③モーツァルトの「魔笛」と古事記の相似形の説話 (大山崎町・大原重雄)
④4月ハイキング「春の櫻宮から難波宮を歩く」の案内 (八尾市・上田 武)
⑤『隋書』重視で、『書紀』の元本に照らす (東大阪市・萩野秀公)
⑥「邪馬台国と火の国」論の再提起 (茨木市・満田正賢)
⑦播磨風土記・地名考(続) ―宍禾郡・柏野里・敷草村の条― (神戸市・谷本 茂)
⑧「韓国ソウル付近の百済遺跡で1600年前の日本人居住跡を発見」報道と倭国の半島進出 (川西市・正木 裕)

◎古賀から役員会の報告
・会員総会・記念講演会(27集出版記念)の日程と講師
6月16日(日)午後 会場:ドーンセンター 参加費:無料
講演会講師:谷本茂さん(古田史学の会・会員、神戸市)、正木裕さん(古田史学の会・事務局長)
演題:未定
※前日(6月15日)の関西例会もドーンセンターで開催します。

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
04/20(土) 会場:都島区民センター(図書館)2階第三会議室

(注)
①『明治前期 全国村名小字調査書』ゆまに書房、1986年。
②二十八集の特集テーマは「風土記・地誌の九州王朝」です。風土記や地誌を研究対象として、そこに遺された九州王朝の痕跡を論じ、論文やフォーラム・コラムとして投稿してください。地誌の場合、その成立が中近世であっても、内容が古代を対象としており、適切な史料批判を経ていれば、古代史のエビデンスとして採用していただいてかまいません。(『古代に真実を求めて』28集の投稿募集要項より)


第3230話 2024/02/18

正木さんが韓国の前方後円墳跡を発見

 昨日、 「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回、3月例会の会場は東成区民センターで、初めて例会に使用する会場です。「古田史学の会」HPなどで場所をご確認ください。

 例会で正木さんが発表された鹿児島県指宿市(尾長谷迫遺跡)出土の暗文土師器の報告は、『古田史学会報』180号の正木稿「『倭姫王』と発掘された『暗文土師器』」をパワーポイントで詳述したもので、興味深く拝聴拝見しました。同土師器は「畿内産土師器」と称されてきたもので、通説では畿内(大和朝廷)で成立した土師器であり、それが出土するのは大和朝廷と関係が深い官衙や遺跡とされていました。この度、大和から遠く離れた薩摩で、しかも大和朝廷が「隼人」を制圧する以前の七世紀中葉の層位から出土したことから、メディア(南日本新聞)で報道されました。このことを「洛中洛外日記」3228話(2024/02/15)〝『古田史学会報』180号の紹介〟で簡単に紹介しました。

 わたしはこの暗文土器は畿内産ではなく、太宰府(九州王朝にとっての「畿内」)からもたらされた可能性があることを指摘しました。「洛中洛外日記」でも、律令制官僚群の大量発生により、須恵器坏Bとともに、ロクロ回転台で量産された土師器について論じたことがありました(注①)。暗文土師器がこの量産土師器に含まれるのかどうかを調べるために、本日、京都府立大学文学部図書館で暗文土師器に関する資料を閲覧しました(注②)。この調査結果についは別に報告します。

 更に正木さんは、朝鮮半島での前方後円墳について重要な発表を行いました。従来、前方後円墳が発見されていなかった瓦難川上流地域(北高敞郡)に前方後円墳の痕跡があることを発見したのです。聞けば、韓国のYouTube動画中に、偶然映り込んでいたこの痕跡に気づいたとのことでした。現地確認が必要ですが、その動画から切り取られた写真には、方墳の隣りに平削された前方後円形の痕跡が見え、それが前方後円墳跡であれば大発見です。6月16日(日)に開催が決まった、「古田史学の会」会員総会記念講演会で、改めて発表されるかもしれません。

 2月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔2月度関西例会の内容〕
①拙論「『邪靡堆』とは何か」の疑問に答える (姫路市・野田利郎)
②古代船の復元と祭祀船の謎 (大山崎町・大原重雄)
③2月ハイキング「尼崎城下散策」とその若干の研究 (八尾市・上田 武)
④続「倭京」と多利思北孤 (東大阪市・萩野秀公)
⑤多元史観では7世紀中葉に薩摩指宿と近江・畿内に深い繋がりがあった (川西市・正木 裕)
⑥九州勢力の半島進出と撤退 (川西市・正木 裕)

◎古賀から役員会決定事項の報告
・会員総会・記念講演会(27集出版記念)の日程と講師
6月16日(日)午後 会場:未定 参加費:無料
講演会講師:谷本茂さん、正木裕さん
・関西例会・会計担当の交代 竹村順弘さん→上田武さん

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
03/16(土) 会場:東成区民センター 地下鉄千日前線今里駅西 徒歩3分

(注)
①古賀達也「洛中洛外日記」2542話(2021/08/18)〝太宰府出土、須恵器と土師器の話(6)〟
同「太宰府出土須恵器杯Bと律令官制 ―九州王朝史と須恵器の進化―」『多元』167号、2022年。
同「太宰府出土須恵器杯Bと律令官制 ―九州王朝史と須恵器の進化―」『九州王朝の興亡』(『古代に真実を求めて』26集)明石書店、2023年。
②『畿内産暗門土師器関連資料1 ―西日本編』奈良国立文化財研究所、2005年。

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古田史学の会 都島区民センター 2024.2.17

2024年 2月度関西例会発表一覧
(ファイル・動画)

YouTube公開動画①②③です。

1,拙論「『邪靡堆』とは何か」の疑問に答える (姫路市・野田利郎)

 ①https://www.youtube.com/watch?v=QGGzaTMLJck&t=1653s

2,古代船の復元と祭祀船の謎 (大山崎町・大原重雄)

 ①https://www.youtube.com/watch?v=altEG2JOmq8

 ②https://www.youtube.com/watch?v=9fV4npt4hPE&t=93s

3,2月ハイキング「尼崎城下散策」とその若干の研究
(八尾市・上田 武)

https://www.youtube.com/watch?v=60O1ZfXfX4c

https://www.youtube.com/watch?v=XCR6A2Gd_8w

https://www.youtube.com/watch?v=e0DXXGra8Yg&t=17s

4,続「倭京」と多利思北孤 (東大阪市・萩野秀公)

   萩野秀公@巨大防御施設の護るもの

https://www.youtube.com/watch?v=3A-gEcfok38

https://www.youtube.com/watch?v=K0uI5gX8SX8&t=1264s

5,多元史観では7世紀中葉に薩摩指宿と
近江・畿内に深い繋がりがあった (川西市・正木 裕)

正木裕@倭姫王と発掘された暗文土師器~実在しないはずの土器が出土

https://www.youtube.com/watch?v=frQIWT_lXIw&t=10s

https://www.youtube.com/watch?v=26HV5R3d7fs&t=2s

6,九州勢力の半島進出と撤退 (川西市・正木 裕)

https://www.youtube.com/watch?v=nYGmM9ty2l8&t=25s

https://www.youtube.com/watch?v=rTqjSSH-gBU


第3206話 2024/01/24

好評! 本出ますみさんの新春講演

 わが国を代表するウールクラッサー(羊毛鑑定士)の本出ますみさんを講師に招いて、キャンパスプラザ京都で開催した新春古代史講演会は五十余名の参加があり、盛況でした。講師の本出さんが持ち込まれた羊毛フェルトや花氈(かせん)も大好評でした。本出さんのファンで古代史講演会は初めての方も多く、そのため、わたしの講演では初心者向けの解説を加え、内容も一部変更しました。参加された「古田史学の会」会員の小島さん(宝塚市)からもメッセージが届きましたので、その応答をご紹介します。

 【以下転載】
小島様
新春講演会にお越しいただき、ありがとうございました。古代史の講演を聞くのは初めてという参加者が多かったようですので、初心者向けの話から始めました。会員の方には面白くなかったかもしれず、申し訳ございませんでした。(古賀達也)

 古賀様
メールをありがとうございました。羊、ウール、フエルトの話は大変面白かったです。ウールと羊毛は同じと思っていましたが、直毛?がありその下にウールがある(鳥に例えるなら羽とダウン)とか、カシミアはフエルトにはならないとか、世界各地に羊の固有種がいるのに、日本にはいないことなど初めてのことなので驚きもありました。見ることの難しい正倉院内部の写真とかも初見でした。

 また発掘の話ですが、神域を掘るのは難しそうで大変でしょうが、早く掘れる機会が訪れればと思います。基本的な話は自分の地固めになりますので、自分には結構よかったと思っています。初心をよく忘れますので。
【転載おわり】

 本出さんとは現役時代からのお付き合いで、わたしがウールやポリアミド用染料の開発・マーケティングを担当していたことが御縁となり、知り合いました。そのおり、本出さんが正倉院調査に参加されていたことを知り、その内容を「古田史学の会」で講演してほしいと、五年前ほどからお願いしてきました。調査内容の公表には正倉院を管理する宮内庁の了承が必要とのことで、この度ようやく講演していただくことができました。当初、講演の写真撮影・ネット配信はNGとのことでしたが、宮内庁の承認を得ていただき、写真撮影がOKとなりました。

 聞けば、本出さんの叔父様が正倉院の所長だったとのことで、正倉院を護るために正倉院近くの官舎で暮らし、緊急時に備え、正倉院展などで国宝や文化財を倉から出すときは、その一週間前から禊ぎをして臨まれたそうです。こうした人々に護られて、正倉院は今日まで遺ったことを知り、感動しました。本出さんには講演会後の懇親会にも参加していただき、歓談が続きました。あらためて感謝いたします。

 本出さんとわたしの講演テーマは次の通りでした。
〔第一講演〕本出ますみさん 正倉院花氈の素材の定説がくつがえる ―それはカシミヤではなくウールだった―

https://www.youtube.com/watch?v=GoR9DbWtGHY&t=4s

〔第二講演〕古賀達也 吉野ヶ里出土石棺と卑弥呼の墓 ―国内史料に見える卑弥呼伝承―

https://www.youtube.com/watch?v=FfvudMFs6bs

2024.02.05 YouTube講演を作成しました。
竹村氏が、本出ますみ氏に講演を公開することに了解を得ました。
古田史学会インターネット事務局が,講演記録を一本化し、サムネイルとチャプターを設置しました。


第3205話 2024/01/20

「春日なる三笠山」

 福岡県東部の立花山説

 本日、 「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回、2月例会の会場は都島区民センターです。西村秀己さんが『古代に真実を求めて』27集全原稿のゲラ校正で多忙のため、代わってわたしが司会を担当しました。

 関西例会でインターネット配信を担当されている久冨直子さん(『古代に真実を求めて』編集部)が初めて例会で発表されました。テーマは、『古今和歌集』の阿倍仲麻呂の歌に詠まれている「春日なる三笠山」を福岡県東部(福岡市東区・糟屋郡)の立花山(367m)とする新説で、大原さんとの共同研究とのこと。

「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に(を) 出でし月かも」
※『古今和歌集』古写本(注①)には「三笠の山を」とあり、月が三笠山から出ると歌っている。流布本では「三笠の山に」と改定されている(注②)。

 通説では奈良県の御蓋(みかさ)山(283m)としますが、この山では低すぎて、月は後方の春日山連峰(600~700m)から出ることから、古田先生は太宰府の東にある宝満山(869m、旧名三笠山)とする説を発表し(注③)、以来、古田学派内では最有力説とされてきました。

 今回の久冨さんの発表では、奈良県の御蓋山説は当然ダメだが、立花山であれば、博多湾岸の海の中道の付け根付近から見ると、三つの峰(東から松尾山・白岳・立花山)が並んで見え、〝三笠〟山と呼ぶにふさわしい。その点、宝満山は〝三笠〟山と呼べるような姿ではないとしました。なるほど一理ある指摘なので、この立花山説は検討に値する新説と思いました。これからの論争や検証により、歴史の真実へと研究が収斂することを期待しています。

 ちなみに、久冨さんの説明によれば、「古田史学の会」案内リーフレットの写真は、立花山上空から見た博多湾とのことです。

1月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔1月度関西例会の内容〕
①懐風藻が記すもう一つの史実 (茨木市・満田正賢)
②大きな勘違いだった古代船「なみはや」の復元 (大山崎町・大原重雄)
③春日なる三笠山は福岡県東部の立花山か (京都市・久冨直子)
④令和六年、年頭の挨拶 (代表・古賀達也)
⑤『日本書紀』中の「オホキミ」と「オホゴオリ」 (東大阪市・萩野秀公)
⑥秦王国は九州の都である 『隋書』帝紀の「倭」を発見 (姫路市・野田利郎)
⑦梁・職貢図の本の紹介 (神戸市・谷本 茂)
⑧野田氏の「邪靡堆」論考への幾つかの疑問 (神戸市・谷本 茂)
⑨多利思北孤の仏教振興と「仏教治国策」 (川西市・正木 裕)

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
02/17(土) 会場:都島区民センター

(注)
①延喜五年(905)に成立した紀貫之編纂『古今和歌集』は、貫之による自筆本が三本あったとされるが現存しない。しかし、自筆本あるいは貫之の妹による自筆本の書写本(新院御本)にて校合した二つの古写本の存在が知られている。前田家尊経閣文庫所蔵『古今和歌集』清輔本(保元二年、1157年の奥書を持つ)と京都大学所蔵の藤原教長著『古今和歌集註』(治承元年、1177年成立)である。清輔本は通宗本(貫之自筆本を若狭守通宗が書写したもの)を底本とし、新院御本で校合したもので、「みかさの山に」と書いた横に「ヲ」と新院御本による校合を付記している。教長本は「みかさの山を」と書かれており、これもまた新院御本により校合されている。これら両古写本は、「みかさの山に」と記されている流布本(貞応二年、1223年)よりも成立が古く、貫之自筆本の原形を最も良く伝えている。
②古賀達也「『三笠山』新考 ―和歌に見える九州王朝の残映―」『古田史学会報』43号、2001年。同98号(2010年)に再掲。
同「三笠の山をいでし月 ―和歌に見える九州王朝の残映―」『九州倭国通信』193号、2018年。
同「洛中洛外日記」1842話(2019/02/20)〝九州王朝説で読む『大宰府の研究』(6)〟
同「洛中洛外日記」2825・2828話(2022/09/03~06)〝阿部仲麻呂「天の原」歌異説 (1)~(2)〟
③古田武彦『古代史の十字路』東洋書林、平成十三年(2001年)。ミネルヴァ書房より復刻。

 


古田史学の会 豊中倶楽部自治会館 2024.1.20

2024年 1月度関西例会発表一覧
(ファイル・動画)

YouTube公開動画①②です。

1,懐風藻が記すもう一つの史実
(茨木市・満田正賢)

https://www.youtube.com/watch?v=3bzOp2wWtak

https://www.youtube.com/watch?v=-Kt6gGuKap0

2,大きな勘違いだった古代船「なみはや」の復元
(大山崎町・大原重雄)

https://www.youtube.com/watch?v=-mmSKQyz-_0

https://www.youtube.com/watch?v=Z7ELSWwYwJA

3,春日なる三笠山は福岡県東部の立花山か
(京都市・久冨直子)

https://www.youtube.com/watch?v=jU52kT38ilA

https://www.youtube.com/watch?v=CdUjV5MIPE8

4,令和六年、年頭の挨拶 (代表・古賀達也)

https://www.youtube.com/watch?v=sQRW09NpUoM

5,『日本書紀』中の「オホキミ」と「オホゴオリ」 (東大阪市・萩野秀公)

https://www.youtube.com/watch?v=BmNhyZ44PnM

6,秦王国は九州の都である
『隋書』帝紀の「倭」を発見(姫路市・野田利郎)

https://www.youtube.com/watch?v=0D9Qo5gUm68

7,梁・職貢図の本の紹介 (神戸市・谷本 茂)

なし

8、野田氏の「邪靡堆」論考への幾つかの疑問
(神戸市・谷本 茂)

なし

9,多利思北孤の仏教振興と「仏教治国策」
(川西市・正木 裕)

https://www.youtube.com/watch?v=iGOYpP7Ki2U

https://www.youtube.com/watch?v=SgFla8kI55Q


第3203話 2024/01/18

新春古代史講演会で花氈・フェルトを展示

 新春古代史講演会(1月21日(日)、キャンパスプラザ京都)のレジュメ印刷を本日行いました。今朝も参加問い合わせの電話が4名の方からあり、前評判は良いようです。

 講師の本出ますみさんも、当日は花氈(かせん)やウールフェルトの現物を会場に持ち込み、参加者に見ていただくとのことで、意欲満々です。これらは滅多に見る機会がないと思います。講演内容も初めて一般に公表されるもので、正倉院を管理している宮内庁の了解がようやく得られたものです。

 わたしの講演では、邪馬壹国の女王卑弥呼のお墓について、考古学や現地伝承に基づき、最有力候補地を紹介します。多くの皆さんのご参加をお待ちしています。

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新春古代史講演会 2024年1月21日(日)
第一講演13:40〜15:00
正倉院花氈の素材の定説がくつがえる — それはカシミヤではなくウールだった 本出ますみ
https://www.youtube.com/watch?v=GoR9DbWtGHY&t=4s

第二講演15:10〜16:30
吉野ヶ里出土石棺と卑弥呼の墓 ―国内史料に見える卑弥呼伝承 古賀達也
https://www.youtube.com/watch?v=FfvudMFs6bs

2024年1月21日(日)
会場:キャンバスプラザ京都 5階演習室
主催古田史学の会
協力:市民古代史の会・京都/古代大和史研究会/和泉史談会/古代史水曜セミナー/市民古代史の会・八尾

2024.02.05 YouTube講演を作成しました。
竹村氏が、本出ますみ氏に講演を公開することに了解を得ました。
古田史学会インターネット事務局が,講演記録を一本化し、サムネイルとチャプターを設置しました。


第3181話 2023/12/17

万葉28番歌の新解釈

 昨日、東淀川区民会館で「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回、1月例会の会場は豊中倶楽部自治会館です。関西例会としては初めて使用する会場ですので、ご注意下さい。
今回も興味深い発表が続きました。中でも大原さんの〝持統の「白妙の衣」は対馬の鰐浦の白い花のこと〟は持統天皇の『万葉集』28番歌の新解釈です(久冨直子さんとの共同研究)。

春過ぎて夏来たるらし 白たえの衣ほしたり 天の香具山

 この歌の「白たえの衣」とは、対馬北部の鰐浦に群集するヒトツバタゴ(別名:ウミテラシ・ナタオラシ・ミズイシ)の花を例えたもので、春になると辺り一面が真っ白になるような花を咲かせるとのこと。なぜそのように言えるのかを傍証を示して論じた研究で、「洗濯物を山に干したりしない」という久冨さんの説明には一理あると思いました。

 この万葉歌は国文学でも「春過ぎて夏来たるらし」という表現が冗長とする意見もあり、評価が分かれていました。古田先生もこの歌の「天の香具山」を大分県の鶴見岳とする新説を発表されています(注①)。わたしも25年前にこの歌の解釈について論文「染色化学から見た万葉集 紫外線漂白と天の香具山」を発表したことがありましたので(注②)、懐かしく思いました。正木さんも同歌について〝「春過ぎて夏来たるらし」〟(注③)を発表されており、古田学派内でも以前から注目された万葉歌でした。

 12月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔12月度関西例会の内容〕
①国譲りの真相 (大阪市・西井健一郎)
②「中天皇」に関する考察 (茨木市・満田正賢)
③古墳時代のDNA分析結果に当惑する研究者たち NHKフロンティア「日本人とは何者なのか」 (大山崎町・大原重雄)
④持統の「白妙の衣」は対馬の鰐浦の白い花のこと (大山崎町・大原重雄)
⑤続「倭京」と多利思北孤 顕現する「オホキミ」のシルエット (東大阪市・萩野秀公)
⑥NHK[歴史探偵]「白村江の戦い」の虚構 (川西市・正木 裕)

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
01/20(土) 会場:豊中倶楽部自治会館
☆01/21(日)は新春古代史講演会(キャンパスプラザ京都)を開催します。

(注)
①古田武彦『古代史の十字路』東洋書林、2001年。
②古賀達也「染色化学から見た万葉集 紫外線漂白と天の香具山」『古田史学会報』26号、1998年。
同「古代のジャパンクオリティー2 万葉集の中の紫外線漂白」『月刊加工技術』6月号、2015年。
③正木 裕「『春過ぎて夏来たるらし』考」『古田史学会報』119号、2013年。

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古田史学の会東淀川区民会館2023.12.16

12月度関西例会発表一覧
(ファイル・参照動画)

YouTube公開動画です。

1,国譲りの真相
(大阪市・西井健一郎)

https://www.youtube.com/watch?v=s0TRJE932Xc
https://www.youtube.com/watch?v=5GTIUSyVS8k
https://www.youtube.com/watch?v=AECnF7YCakA

2,中天皇に関する考察
(八尾市・満田正賢)

https://www.youtube.com/watch?v=F8d2usA_xzM

 

3,古墳時代のDNA分析結果に当惑する研究者たち

      (大山崎町・大原重雄)

このYouTube動画のみ、アドレスの限定公開です。

https://www.youtube.com/watch?v=1MsqLYIr8vU

https://www.youtube.com/watch?v=inlUjT3UBe0

4,持統の白妙の衣は対馬の鰐浦の白い花のこと
(大山崎町・大原重雄)

https://www.youtube.com/watch?v=kS9CXSgqMus

https://www.youtube.com/watch?v=qOP0ey4w01E

5,顕現するオホキミのシルエット
(東大阪市・萩野秀公)

https://www.youtube.com/watch?v=EqqkCkC3MAs

https://www.youtube.com/watch?v=i5MTbdKpVCc

 

6,NHK歴史探偵「白村江の戦い」の虚構
(川西市・正木裕)

https://www.youtube.com/watch?v=r3BDW54K-lA

https://www.youtube.com/watch?v=7b20VarMXL4

準備中https://www.youtube.com/watch?v=0rUjBYkgAQw


第3160話 2023/11/18

初めての関西例会の司会

 本日、浪速区民センターで「古田史学の会」関西例会が開催されました。司会担当(リモート参加)の西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、高松市)がお仕事で出張中なので、わたしが代役を務めました。「古田史学の会」関西例会は30年の歴史を持ちますが、わたしが司会を担当したのは初めてのように思います。次回、12月例会の会場は東淀川区民会館です。

 今回は慣れない司会に集中するため、研究発表は遠慮しました。それに代えて、先週参加した八王子セミナーについて少々紹介しました。一つは、橘高修さん(東京古田会・副会長)が、パネルディスカッションの論点整理ために事前に提示された「タイムテーブル」記載の論点に対する、わたしの見解の紹介(注①)。もう一つは千葉県からセミナーに初参加されたKさんの挨拶を紹介しました。

 Kさんは「古田史学の会」の新会員で、ホームページを見て入会されたようです。初参加者の〝自己紹介・挨拶コーナー〟で、Kさんは「会場参加者が老人ばかりで若い人がいない。わたしは中学生の家庭教師もしているが、その子が古代史(古田説)に興味をもってくれており、〝試験の回答には書いてはいけない〟と断って教えています。その子が高校生になったら二人で八王子セミナーに参加します。」と述べられ、参加者から拍手がおくられました。

 今回の発表で注目されたのが、大原さんによる九州年号を持つ当麻寺縁起の紹介でした。大原さんの研究によれば、当麻寺(奈良県葛城市)の前身寺院の創建を、推古の時代の定光二年とする史料があり、この「定光二年」は九州年号の「定居二年」((612年))とのこと。そうであれば、『二中歴』に見える倭京二年(619年)の難波天王寺の創建よりも早く、「当麻寺」が九州王朝により創建された可能性をも示すことから、注目すべきものと思われました。なお、定居二年と言えば、泉佐野市日根野慈眼院所蔵の棟札冒頭に記された九州年号「定居二年(612年)」における当地への新羅国太子「修明正覚王」渡来伝承が思い起こされます(注②)。

 11月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔11月度関西例会の内容〕
①裴世清は十余国を陸行した (京都市・岡下英男)
②大国主譜(二)と大年神譜 (大阪市・西井健一郎)
③西井氏の「筑紫後期王朝説への疑問」に答える(1) (八尾市・満田正賢)
④続「倭京」と多利思北孤 倭(ワ)王朝の列島制覇戦略 (東大阪市・萩野秀公)
⑤「邪靡堆(ヤビタイ)」とは何か 唐の李賢の証言 (姫路市・野田利郎)
⑥當麻寺の年代 (大山崎町・大原重雄)
⑦鍵穴を通る神の説話の謎 (大山崎町・大原重雄)

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
12/16(土) 会場:東淀川区民会館。

(注)
①古賀達也「洛中洛外日記」3157話(2023/11/11)〝八王子セミナー・セッションⅡの論点整理〟
②同「洛中洛外日記」2796話(2022/07/24)〝慈眼院「定居二年」棟札の紹介〟
同「洛中洛外日記」2797話(2022/07/26)〝慈眼院「定居二年」棟札の古代史〟
同「洛中洛外日記」2798話(2022/07/29)〝後代成立「九州年号棟札」の論理〟
同「蝦夷国への仏教東流伝承 ―羽黒山「勝照四年」棟札の証言―」『古田史学会報』173号、2022年。

___________________________________________________________________

古田史学の会浪速区民センター第5会議室 2023.11.18

11月度関西例会発表一覧(ファイル・参照動画)

ファイル公開は古賀達也のみです。 他はYouTube公開動画のみです。


1,裴世清は十余国を陸行した (京都市・岡下英男)
岡下英男@裴世清は十余国を陸行した231118@古田史学会関西例会

https://www.youtube.com/watch?v=Rozs26ZEdTw

2,大国主譜(二)と大年神譜 (大阪市・西井健一郎)

西井健一郎@大国主譜(二)と大年神譜231118@古田史学会関西例会

https://www.youtube.com/watch?v=zU_6W7LokhQ

3,西井氏の「筑紫後期王朝説への疑問」に答える() (八尾市・満田正賢)

満田正賢@西井氏の「筑紫後期王朝説への疑問」に答える(1) 231118@古田史学会関西例会

https://www.youtube.com/watch?v=YMLr1rxfy-A

4,続「倭京」と多利思北孤 倭()王朝の列島制覇戦略 (東大阪市・萩野秀公)

萩野秀公@続「倭京」と多利思北孤 — 倭()王朝の列島制覇戦略231118@古田史学会関西例会

https://www.youtube.com/watch?v=R8Bwu8ygfEw

5,「邪靡堆(ヤビタイ)」とは何か — 唐の李賢の証言 (姫路市・野田利郎)

野田利郎@「邪靡堆(ヤビタイ)」とは何か 唐の李賢の証言231118@古田史学会関西例会

https://www.youtube.com/watch?v=wLBOfnaGr0I

6,當麻寺の年代 (大山崎町・大原重雄)

7,當麻寺など見学・鍵穴を通る神の説話の謎 (大山崎町・大原重雄)

大原重雄@當麻寺の年代・鍵穴を通る神の説話の謎231118@古田史学会関西例会

https://www.youtube.com/watch?v=d6ENs4SriHY

8,古代史セミナー2023セッション Ⅱ
遺構に見る「倭国から日本国へ」 次第 古賀達也
 
解説

https://www.youtube.com/watch?v=-CtvQ0eC8MA

このYouTube動画のみ、アドレスの「限定公開」です。


第3141話 2023/10/23

百済禰軍(でいぐん)墓誌銘の「日本」誤読説

 今月21日、浪速区民センターで「古田史学の会」関西例会が開催されました。11月例会も浪速区民センターで開催します。

 わたしは「よみがえる卑弥呼伝承 ―国内史料に見える「卑弥呼・壹與」―」を発表しました。卑弥呼の墓の有力候補に須玖岡本遺跡にある熊野神社社殿の地(須玖岡本山)とする古田先生の説があります(注①)。その古田説の傍証となる、江戸期史料に記された現地伝承を紹介しました(注②)。

 今回の例会で印象深かったのが、谷本茂さんの「百済禰軍(でいぐん)墓誌銘」(678年)に見える「日本」を国名とするのは誤読との発表でした。同墓誌に記された「日本(夲)」は国名の「日本」ではなく、前後の文脈から「于時日、本余噍、据扶桑以逋誅」と読み、「本余噍」を百済の残党とされました。従来説では「于時、日本、余噍、据扶桑以逋誅」と読まれ、この「日本」を国名の日本としており、わたしもその理解に基づく論稿(注③)を発表していましたので、谷本さんから厳しい批判をいただきました。わたしは〝学問は批判を歓迎し、真摯な論争は研究を深化させる〟と考えていますので、これを良い機会として再検討したいと思います。

 今回の例会には会員の中村さん(神戸市)が初参加されました。池上さんは久しぶりの発表でした。

 10月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔10月度関西例会の内容〕
①よみがえる卑弥呼伝承 ―国内史料に見える「卑弥呼・壹與」― (京都市・古賀達也)
②満田氏筑紫後期王朝説への疑問 (大阪市・西井健一郎)
③天の叢雲剣と草薙剣は同一か (京都市・池上正道)
④ハイキング報告「白鬚神社と継体大王ゆかりの地の散策」 (八尾市・満田正賢)
次回ハイキング(11/4)の説明「奈良公園歴史散策」 (大阪市・中山省吾)
正倉院展のお知らせ (京都市・久冨直子)
⑤「百済禰軍(でいぐん)墓誌銘」に“日本”国号はなかった! (神戸市・谷本 茂)
⑥「倭京」と多利思北孤 (東大阪市・萩野秀公)
⑦隋書の俀は倭であり多利思北孤の北は比が妥当 (大山崎町・大原重雄)
⑧難波宮は天武時代の・唐の都督薩夜麻の宮だった (川西市・正木 裕)

○会務報告(正木事務局長) 令和六年新春古代史講演会(2024/1/21、京都市)の件、関西例会の会員向けライブ配信の取り組み、他。

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
11/18(土) 会場:浪速区民センター ※JR大和路線 難波駅より徒歩15分。

(注)
①古田武彦「邪馬壹国の原点」『よみがえる卑弥呼』駸々堂、1987年。ミネルヴァ書房より復刻。
②古賀達也「洛中洛外日記」3114話(2023/09/15)〝『筑前国続風土記拾遺』で探る卑弥呼の墓〟
③古賀達也「百済人祢軍墓誌の考察」『古田史学会報』108号、2012年。

 

古田史学の会浪速区民センター第5会議室 2023.10.21

10月度関西例会発表一覧(参照動画付)

YouTube公開動画は①②です。
「5,」の谷本氏の動画のみ「古田史学会file」内に置いております。

1,よみがえる卑弥呼伝承 国内史料に見える「卑弥呼・壹與」
(京都市・古賀達也)
https://youtu.be/lwEw839dsx8 https://youtu.be/yQv946_HE6w

2,満田氏筑紫後期王朝説への疑問 (大阪市・西井健一郎)
https://youtu.be/689A1n4DlH4 https://youtu.be/r2x_zdsyGGI

3,天の叢雲剣と草薙剣は同一か (京都市・池上正道)
公開は辞退されました。

4,ハイキング報告「白鬚神社と継体大王ゆかりの地の散策」 (八尾市・満田正賢) 付:次回ハイキング(11/4)の説明・正倉院展のお知らせ
https://youtu.be/eu3rx3u_fdA

5,「百済禰軍(でいぐん)墓誌銘」に日本国号はなかった! (神戸市・谷本 茂)
YouTube講演はありません。「古田史学会file」内に解説動画設置しました。Zoomneeting参加者のみ視聴できます)アクセス場所非公開

付:「東海の古代№248 20214月」号「祢軍墓誌」を読む 名古屋市 石田 泉城(http://furutashigakutokai.g2.xrea.com/kaihou/t248.pdf)

6,「倭京」と多利思北孤 (東大阪市・萩野秀公)
https://youtu.be/mYpKIO8SXqs

7,隋書の俀は倭であり多利思北孤の北は比が妥当 (大山崎町・大原重雄)
https://youtu.be/CTA902B55SM

8,難波宮は天武時代の・唐の都督薩夜麻の宮だった(川西市・正木 裕)
https://youtu.be/KtPUJVPVWc4


第3118話 2023/09/20

中国史書「百済伝」に見える百済王の姓 (1)

 「洛中洛外日記」3069話(2023/07/15)〝賛成するにはちょっと怖い仮説〟で日野智貴さん(古田史学の会・会員、たつの市)の研究を紹介しました。「古田史学の会」関西例会での「倭国の君主の姓について」という発表です。その要旨は、九州王朝王家の姓の変遷(倭姓→阿毎姓)を歴代中国史書から導き出し、九州王朝内で〝王統〟の変化があったとする仮説です。『宋書』に見える倭の五王は「倭」姓の氏族であり、『隋書』俀国伝に見える「阿毎」姓の王家とは異なる氏族とするもので、これは従来の古田説にはなかったテーマです。

 この日野説は注目すべきものですが、疑義も出されています。例えば、『隋書』俀国伝に見える「阿毎」は「姓」と記されているが、『宋書』に見える「倭讃(倭王)」の「倭」は姓とは記されておらず、「倭」を倭王の姓とするエビデンスはないとの谷本茂さん(古田史学の会・会員、神戸市)の指摘があります(注)。そこで、「倭讃」の「倭」が倭王の姓なのか、国名「倭」の援用なのかについて検討するために、中国史書東夷伝の隣国「百済伝」では、百済王の姓がどのような表記になっているのかを参考として調べてみることにしました。

 管見では次の史書(正史)に「百済伝」があります。『宋書』『南斉書』『梁書』『南史』『魏書(北魏)』『周書(北周)』『隋書』『北史』『旧唐書』『新唐書』。訓み下し文は坂元義種『百済史の研究』(塙書房、1978年)を採用しました。(つづく)

(注)「古田史学リモート勉強会」(2023年8月12日)での質疑応答にて。


第3115話 2023/09/16

『万葉集』「日本挽歌」

     は九州王朝のレクイエム

 本日、東淀川区民会館で「古田史学の会」関西例会が開催されました。10月例会は浪速区民センターで開催します。

 わたしは「喜田貞吉の批判精神と学問の方法」を発表しました。喜田貞吉が問題提起した三大論争(法隆寺再建論争、『教行信証』代作説、藤原宮長谷田土壇説)の経緯と結果、そして遺された課題について説明し、喜田の批判精神と古田先生の学問の方法をしっかりと継承したいと決意表明しました。

 今回の例会で特に注目したのが上田さんと正木さんの発表でした。上田さんの発表は、『万葉集』巻五「日本挽歌」は九州王朝のレクイエムとする新解釈で、確かに八世紀前半頃の太宰府で歌われた挽歌であれば、新王朝の日本国の挽歌では不自然であり、滅んだ九州王朝(倭国)の挽歌であればよく理解できます。それではなぜ「倭国挽歌」ではなく、「日本挽歌」とされたのかという問題があり、その説明は簡単ではありませんが、興味深い仮説と思われました。

 正木さんは、九州年号の朱鳥改元は倭王・都督である筑紫君薩夜麻崩御によるものとする仮説を発表されました。これには意表を突かれました。『日本書紀』朱鳥元年是歳条の「蛇と犬と相交めり。俄ありて倶に死ぬ。」の記事は、薩夜麻と天武が倶に崩御したことを風刺する歌ではないかともされました。実は、筑紫の有力者「虎丸長者」(藤原虎丸と伝える)が朱鳥元年に没したとする伝承があり、この虎丸が薩夜麻ではないかと考えたこともあったからです。ただし、伝承では朱鳥改元の七月二十日よりも後の十月に虎丸は亡くなったとされており、改元とのタイミングがあわないので九州王朝の天子とはできないと考えてきました。今回の正木説を知り、「虎丸長者」伝説を見直す必要を感じました。

 9月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔9月度関西例会の内容〕
①消された天皇 (大山崎町・大原重雄)
②「梅花の歌」と長屋王の変 (八尾市・上田 武)
③西井氏の問いかけに答える (八尾市・満田正賢)
④白鳳、朱雀、朱鳥、大化期の天子は誰か (八尾市・満田正賢)
⑤喜田貞吉の批判精神と学問の方法 (京都市・古賀達也)
⑥藤原宮(藤原京)の名称と、その遺跡出土の評木簡について (東大阪市・萩野秀公)
⑦部曲は「私有民」なのか? 中村友一氏の研究を受けて (たつの市・日野智貴)
⑧九州王朝から新王朝への交代 ―その時期に関する考察― (姫路市・野田利郎)
天武崩御と倭国(九州王朝)の薩夜麻の崩御 (川西市・正木 裕)
仝レジュメ(pdf書類)ダウンロードできます。

○会務報告(正木事務局長) 令和六年新春古代史講演会(2024/1/21、京都市)の件、関西例会の会員向けライブ配信の取り組み、他。

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
10/21(土) 会場:浪速区民センター ※JR大和路線 難波駅より徒歩15分。
11/18(土) 会場:浪速区民センター ※JR大和路線 難波駅より徒歩15分。

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古田史学の会東淀川区民会館 2023.9.16

9月度関西例会発表一覧(参照動画)

 YouTube公開動画①②です。他にはありません。

1,消された天皇 (大山崎町・大原重雄)

2,「梅花の歌」と長屋王の変 (八尾市・上田 武)

3,西井氏の問いかけに答える (八尾市・満田正賢)

4,白鳳、朱雀、朱鳥、大化期の天子は誰か (八尾市・満田正賢)

5,喜田貞吉の批判精神と学問の方法 (京都市・古賀達也)

6,藤原宮(藤原京)の名称と、その遺跡出土の評木簡について
(東大阪市・萩野秀公)

7部曲は「私有民」なのか? 中村友一氏の研究を受けて
(たつの市・日野智貴)

https://youtu.be/BYRNeh-VHY8

8,九州王朝から新王朝への交代 ―その時期に関する考察―
(姫路市・野田利郎)

https://youtu.be/ZDZfIhhV16c https://youtu.be/TooP9uL7qqQ

9,天武崩御と倭国(九州王朝)の薩夜麻の崩御 (川西市・正木 裕)

https://youtu.be/W122qfOPRS8


第3103話 2023/09/02

好太王碑文の「從抜城」の訓み (1)

 昨日、リモート参加した多元的古代研究会主催の研究会で、高句麗好太王碑(注①)碑文中の「從抜城」の訓みについて議論が交わされました。同碑文には多くの城名が記されていますが、『好太王碑論争の解明』(注②)によれば、碑文中の頻出文字は次のようです。

  文字 出現数 全文字中の率
1  城  108 6.61%
2  烟   71 4.35%
3  看   47 2.88%
4  王   32 1.96%
5  國   27 1.65%

 出現数の根拠や計算方法について、著者(藤田友治さん・故人)が次のように説明しています。

 「王健軍氏の釈文を基にすれば、全文字は一七七五文字である。そのうち欠け落ちてしまって判読できない文字一四一を引いた文字中に占める頻出文字」

 著者の藤田さんは、1985年に吉林省集安の好太王碑を古田先生らとともに現地調査しており、この数値の信頼性は高いと思います。その碑文の第二面末に次の文があります。便宜的に句読点を付し、改行しました。

十年庚子。教遣步騎五萬往救新羅。
從男居城至新羅城。
倭滿其中。官軍方至、倭賊退。
□□□□□□□□□背急追。
至任那加羅從拔城、城即歸服。

 この部分は、通常、次のように読まれています。

 「十年庚子(340年)。のりて、步騎五萬を遣わし、往って新羅を救わせる。男居城より新羅城に至る。倭はその中に満ちていた。官軍(步騎五萬)がまさに至ると、倭賊は退いた。[□□□□□□□□□背急追]任那加羅の從拔城に至れば、城はすぐに歸服した。」

 同碑文の用例としては、「從」は「~より」の意味で使用されており、「抜城」は『三国史記』では「城を抜く」(城を攻略する)の意味で使用されています。例えば次の用例があります。

○跪王、自誓、從今以後、永為奴客 (王にひざまずき、みずから「今より以後、永く奴客となる」と誓う)《碑文第一面》
○從男居城至新羅城 (男居城より新羅城に至る)《碑文第二面》

○南伐百済抜十城 (南、百済を伐ち、十城を抜く)『三国史記』高句麗本紀第六 広開土王

 しかし、通説ではこの記事中の「從拔城」を城の固有名としているようです。(つづく)

(注)
①好太王碑(こうたいおうひ)は、高句麗の第19代の王である好太王(広開土王)の業績を称えた石碑。広開土王碑とも言われる。中国吉林省集安市に存在し、高さ約6.3m・幅約1.5mの石碑で、四面に計1802文字が刻まれている。
②藤田友治『好太王碑論争の解明』新泉社、1986年。291頁


第3096話 2023/08/20

九州から関東への鵜飼の伝播

 昨日、都島区民センターで「古田史学の会」関西例会が開催されました。9月例会は東淀川区民会館で開催します。

 わたしは「木簡の中の王朝交代」を発表しました。701年の九州王朝(倭国)から大和朝廷(日本国)への王朝交代により、木簡に記された行政単位「評」が「郡」に全国一斉に変わることは郡評論争により著名です。同時に荷札木簡などの年次表記(干支→年号)やその記載位置(冒頭→末尾)も変わることを紹介し、それら書式変化の理由は、九州王朝と大和朝廷の〝行政命令〟によるもので、偶然の全国一斉変化ではなく、国家意思の表れと見なさざるを得ないとしました。

 今回の例会では、大原さんから興味深い鉄刀銘の紹介がありました。それは伝群馬県藤岡市西平井出土の銀象嵌太刀に描かれた魚と鳥(鵜)、花形文という図像で、熊本県の江田船山古墳出土銀象嵌太刀の魚・鵜・花形文と共通しています(江田船山の太刀には馬も描かれている)。この一致は両者の関係をうかがわせるもので、大原さんは九州勢力の関東進出を思わせるとされ、わたしもこの見解に賛成です。群馬県からは魚をくわえた鳥(鵜か)の埴輪も出土しており、海から離れた関東平野の奥地に鵜飼が伝わっていたことに驚きました。なぜなら、北部九州の鵜飼用の鵜は海鵜だからです。海鵜を捕獲して調教するため、古代では鵜飼の風習は海からそれほど離れていない地域に限られると、なんとなく考えてきましたが、大原さんの紹介により、認識を改めることができました。なお、『記紀』に見える〝鵜飼〟については別述したいと思います。

 わたしは九州王朝の鵜飼の伝統について論文発表(注)したことがありますが、その執筆時には群馬県での鵜飼について知りませんでした。倭の五王による関東侵攻の痕跡として、「鵜飼」の風習は注目されます。

 8月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔8月度関西例会の内容〕
①稲荷山鉄剣銘文の杖刀人は呪禁者との解釈 (大山崎町・大原重雄)
②近畿朝にいなかった安閑・宣化帝 (大阪市・西井健一郎)
木簡の中の王朝交代 (京都市・古賀達也)
仝PDF書類もダウンロードして下さい。
Youtubu動画ではありません。広告も出ません。

④末盧国の所在と魏使の行程 (川西市・正木 裕)

○会務報告(正木事務局長)

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
9/16(土) 会場:東淀川区民会館 ※JR・阪急 淡路駅から徒歩10分。
10/21(土) 会場:浪速区民センター ※JR大和路線 難波駅より徒歩15分。
11/18(土) 会場:浪速区民センター ※JR大和路線 難波駅より徒歩15分。

(注)
「九州王朝の筑後遷宮 玉垂命と九州王朝の都」『新・古代学』第4集、2000年。
「九州王朝と鵜飼」『古田史学会報』36号、2000年。
「『日出ずる処の天子』の時代 試論・九州王朝史の復元」『新・古代学』第5集、2001年。
○「洛中洛外日記」704話(2014/05/05)〝『隋書』と和水町〟