関西例会一覧

第2736話 2022/05/03

『多元』No.169の紹介

 友好団体「多元的古代研究会」の会紙『多元』No.169が届きました。同号には拙稿「近江の九州王朝 ―湖東の「聖徳太子」伝承―」を掲載していただきました。同稿は、近江地方から出土した無文銀銭や法隆寺創建同范瓦などと当地に色濃く遺る聖徳太子建立伝承を持つ寺院群について、九州王朝・多利思北孤と関係するものとして考察する必要性を論じたものです。
 拙稿の他にも古田史学の会・会員の服部静尚さんの「『続日本紀』に見える王朝交代の陰」や野田利郎さんの「京師を去る一万四千里」が掲載されました。八木橋誠さん(黒石市)の「『隋書倭国伝』は長里で書かれていない」は同紙168号の服部稿「隋・唐は倭国の東進を知っていた」への批判論文であり、注目しました。
 八木橋稿末尾には、拙稿「洛中洛外日記」2642~2648話〝『旧唐書』倭国伝「去京師一萬四千里」(1)~(7)〟への批判もなされており、興味深く思いました。『旧唐書』倭国伝に記された京師から倭国への距離「一万四千里」を倭人伝の短里「一万二千余里」と長里二千里の〝合計値〟とする拙論に対し、一万里が短里部分であり四千里を長里とする仮説を提起されたものです。学問は批判を歓迎し、真摯な論争は研究を深化発展させます。ご指摘については改めて検討させていただきたいと思います。


第2730話 2022/04/26

会員総会を6月19日(日)に変更します

 「古田史学の会」会員総会・記念講演会を6月19日(日)にアネックスパル法円坂(大阪市中央区法円坂1-1-35)で開催することになりました。当初、18日(土)に開催予定でしたが、コロナ対策のための広い会場を確保するために日程を19日(日)に変更しました。
 それに伴い、「古田史学の会」関西例会も19日の午前中に変更します。午後は2時から講演会、4時30分から総会とします。コロナの問題もあり、総会は短時間に終えますので、ご意見等は予めメールでHP記載の「古田史学の会」のアドレスまで寄せていただきますようご協力下さい。
 なお、講演会の講師を正木裕さん(古田史学の会・事務局長)と服部静尚さん(古田史学の会・会員)に要請しています。演題などが決まりましたら、改めて報告します。


第2721話 2022/04/16

卑弥呼がもらった「尚方作」鏡

 本日はドーンセンターで「古田史学の会」関西例会が開催されました。来月、5月21日(土)もドーンセンターで開催します(参加費1,000円)。また、会場は未定ですが、6月18日(土)の関西例会は午前中だけとなり、午後は『古代史の争点』(『古代に真実を求めて』25集)出版記念講演会と会員総会を開催することになりました。

 今回の例会では、重要な研究発表が続きました。なかでも服部静尚さんの、福岡県平原遺跡から出土した「尚方作」の銘文をもつ21面の銅鏡が鉛同位体分析から中国産であり、中国の天子の工房である尚方で造られたことを意味する「尚方作」銘文は倭国(卑弥呼)への下賜品にふさわしい〝しるし〟とする考察は見事でした。ただし、それらの鏡が出土した平原1号墳は方形周溝墓であるため、倭人伝に「径百余歩」(円墳を意味する)と記された卑弥呼の墓とは形状が異なることから、壹與の墓かも知れないとされました。同2号墳からの出土土器(庄内式)編年など精緻な年代判定が待たれるところですが、「尚方作」銘文鏡の分布(福岡県が最多)や「尚方作」の銘文が持つ意味の考察は画期的と思われました。
 正木裕さんの万葉歌に見える「大王」研究は、わたしが「洛中洛外日記」〝万葉歌の大王〟で続けている考察と関連するもので、199~202番歌などの「大王」「王・皇子」を具体的に検討され、199番歌の「わが大王」を九州王朝の天子「伊勢王」のこととされました。わたしの考察よりもさらに具体的で進んだ内容であり、興味深いものでした。

 発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔4月度関西例会の内容〕
①倭国の滅亡(姫路市・野田利郎)
②伊吉連博徳書の捉え方について(茨木市・満田正賢)
③「オホゴホリ」は大宰府の旧名(東大阪市・萩野秀公)
④九州年号の分布(京都市・岡下英男)
⑤銅鏡の分布と卑弥呼の鏡(八尾市・服部静尚)
⑥天智紀の工人と水城山城造営記事(大山崎町・大原重雄)
⑦万葉歌の「大王」は誰か(川西市・正木 裕)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(三密回避に大部屋使用の場合は1,000円)
 05/21(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター
 06/18(土) 10:00~12:00 会場:未定 ※午後は出版記念講演会と会員総会

 


第2686話 2022/02/19

七世紀の須恵器「服部編年」

 本日はドーンセンターで「古田史学の会」関西例会が開催されました。来月、3月19日(土)はアネックスパル法円坂で開催します(参加費1,000円)。
 今回の例会で見事だったのが服部静尚さんによる、飛鳥・難波・河内の七世紀の須恵器編年「服部編年」の発表でした。当研究は昨年12月に開催された大阪歴史学会考古学部会で発表されたもので、概要については同月の関西例会でも報告されましたが、今回は諸遺跡の新編年を提示・詳述されました。
 まず、服部さんは飛鳥と難波・河内の須恵器編年において、次の三点の基準を示されました。

1. 飛鳥と難波・河内は文化的に一体とみなし、これらを包含する基準とする。飛鳥編年に難波宮・狭山池を加える。
2. 各編年は須恵器「杯」に集約されると見られる。これに焦点を合わせた基準とする。杯H・G・Bの数量比率を中心に。
3. 考古学の所見を編年基準にする。年輪年代・干支年木簡を編年基準に。

 この三基準により各遺跡を編年すると、『日本書紀』の記事に基づいた従来の飛鳥編年とは全く異なる年代観が現れました。この新たな「服部編年」は基準が合理的で、杯H・G・Bの出土数量比率を中心に編年するという方法が簡明であり、その論理構造は強固(robust)です。論文発表が待たれます。

 発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔2月度関西例会の内容〕
①胡床と朝床とあぐらをかく埴輪 (大山崎町・大原重雄)
②乙巳の変と九州王朝の関係についての一考察 (茨木市・満田正賢)
③孝徳・斉明・天智期の飛鳥における考古学的空白 (八尾市・服部静尚)

(参考)
孝徳・斉明・天智期の飛鳥における考古学的空白@服部静尚@20220219@ドーンセンター@古田史学の会@29:01@DSCN0458
孝徳・斉明・天智期の飛鳥における考古学的空白@服部静尚@20220219@ドーンセンター@古田史学の会@12:41@DSCN0461
孝徳・斉明・天智期の飛鳥における考古学的空白@服部静尚@20220219@ドーンセンター@古田史学の会@09:58@DSCN0463
孝徳・斉明・天智期の飛鳥における考古学的空白@服部静尚@20220219@ドーンセンター@古田史学の会@06:32@DSCN0464

④アサクラの語源について (東大阪市・萩野秀公)
⑤長田王の「伊勢娘子の歌」は隼人討伐時に糸島でよまれた歌 (川西市・正木 裕)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(三密回避に大部屋使用の場合は1,000円)
 03/19(土) 10:00~17:00 会場:アネックスパル法円坂
 04/16(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター

 


第2671話 2022/01/31

ミニ講演会「化学者が語る古代史」

 先週、上京区の喫茶店「うらのつき」さんで古代史のミニ講演会を行いました。妻が懇意にしているお店で、以前からご要請いただいていたこともあり、一念発起して「化学者が語る古代史」として話させていただきました。
 それほど広いお店ではないためやや密になりましたが、参加者には医療関係者もおられ、コロナ対策は万全でした。参加者からは古代史以外に化学や政治についても質問や意見がだされ、「元気が出た」と好評だったようです。毎月行ってほしいとのことでしたので、参加者と話題が続く限り行うことにしました。
 当日、使用したレジュメを転載します。

令和四年(2022年)1月26日
うらのつき古代塾
―化学者が語る日本古代史―
         講師 古賀達也
《講師紹介》
福岡県久留米市出身
京都の化学会社に45年間勤務(色素化学・染色化学)
古田武彦氏(1926-2015年 日本古代史・親鸞研究)に師事
古田史学の会・代表(全国組織、会員約400名)
著書(共著) 『「九州年号」の研究』、『邪馬壹国の歴史学』、『九州王朝の論理』、他

《前話》 理系のわたしの歴史研究
(1)歴史学は犯罪捜査と共通する性格を持つ
 ①どちらも過去に起こった事件の真実(真相)を解明する。
 ②証拠と動機(なぜ?)の解明が必要。
 ③ただし弁護士がつかない⇒冤罪発生のリスクが伴う。
(2)最新科学は正しいのか
〈アポロ計画〉実績がある旧技術を採用し、人類を月面に送った。
〈足利事件〉当時、最先端の科学技術DNA鑑定で有罪⇒悲劇的な冤罪が発生した。
〈和歌山カレー毒物事件〉最新科学装置によるヒ素の分析により有罪判決⇒因果関係が非論理的で冤罪の可能性がある。
(3)教科書に書かれている日本古代史は前提から間違っている。
〈日本古代史の前提〉大和朝廷が日本列島の唯一の卓越した王朝である。⇒この『古事記』『日本書紀』の記述は信用してもよいのか。

《第一話》 学校では教えない本当の古代史
(1)大和朝廷の最初の年号は大化か?
 ■『日本書紀』の三年号
 「大化」645~649年 「白雉」650~654年 「朱鳥」686年
 ■「改元」と「建元」 ※「建元」は王朝の最初の年号で、一回しかない。後は王朝が滅ぶまで「改元」が続く。
 大化改元(645年)、白雉改元(650年)、朱鳥改元(686年)『日本書紀』の三年号は全て「改元」とある。
 大宝建元(701年)『続日本紀』大宝以降は改元が連続して続き、令和に至る。
(2)「白鳳時代」「白鳳文化」の「白鳳」とは何か?
 「白鳳」(661~683年)は九州年号の一つ。九州年号は、「継体」元年(517年)から「大長」九年(712年)まで連続して続く。九州年号の中に「白雉」(652~660年)、「朱鳥」(686~694年)、「大化」(695~704年)がある。⇒『日本書紀』は他の王朝の年号(九州年号)を転用している。
(3)地名に遺された「九州」「太宰府」「内裏(大裏)」とは何か?
(4)金印(国宝)はなぜ志賀島(福岡市)から出土したのか?
 「漢委奴国王」を「かんのわのなのこくおう」とは読めない。⇒漢の委奴(ゐの)国王。
(5)博多湾岸に飛来する渡り鳥の名はなぜ「都鳥(ミヤコドリ)」なのか?
(6)古代中国の史書は倭国(日本国)をどのように記しているか?

〔『隋書』倭(俀)国伝の証言〕
 倭国王の名前は阿毎多利思北孤(アメ・タリシホコ)で男性(奥さんがいる)。太子の名前は利歌彌多弗利(リ・カミタフリ)。当時の大和朝廷の天皇は推古天皇で女性。隋の使者は倭国王に面会しており、倭国王が男か女かを見間違うとは考えられない。
 また、倭国には阿蘇山があり、隋使はその噴火を見ている。「阿蘇山あり。その石、故なくして火を起こし、天に接す。(有阿蘇山其石無故火起接天)」と記している。

〔『旧唐書』倭国伝・日本国伝の証言〕
 日本列島には倭国と日本国があり、両国は別の国とされている。「日本国は倭国の別種なり。(日本國者、倭國之別種也)」と記している。そして、「日本は旧(もと)小国、倭国の地を併(あ)わす。(日本舊小國、併倭國之地)」と記し、日本国(大和朝廷)が倭国(九州王朝)を併合したとある。古代の日本列島で王朝交替があった。
(7)中国史書と『日本書紀』はどちらが信用できるのか?
 勝者が自らのために創作した歴史書(『日本書紀』)は、〝容疑者の証言〟であり、そのまま証拠として採用してはならない。〝うらどり〟が必要。
 中国史書の倭国伝・日本国伝は、隣国の観察記録であり、言わば防犯カメラの録画のようなもの。精度の差はあるが、基本的に証拠として採用できる。


第2662話 2022/01/15

韓国の前方後円墳が意味するもの

 本日はi-siteなんばで「古田史学の会」関西例会が開催されました。午後は新春古代史講演会が開催されました。来月、2月19日(土)はドーンセンターで開催します(参加費1,000円)。

 今回の例会は午前中だけのため、野田さんと大原さんによる三件の発表でした。その中で特に考えさせられたのが、大原さんによる韓国の前方後円墳についての考察でした。栄山江流域で発見が続いた前方後円墳について、その石室や副葬品から大和ではなく九州の勢力との関係が確実視されていることから、倭の五王の時代での九州王朝(倭国)の影響力や支配領域が韓半島に及んでいた痕跡と考えてきました。
 そうした見方に対して大原さんは「そこに前方後円墳があるからといって倭国の支配地とはならない。」とされ、その理由として日本列島内の「渡来人の施設が多く見られるところを他国の占領地とは考えない。」「また、列島に前方後円墳がある地域は、ヤマト王権の支配地だとは言い切れないのと同じこと」と指摘されました。言われてみればその通りです。韓国の前方後円墳について、もっと深く考察する必要を痛感しました。

 発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔1月度関西例会の内容〕
①津軽海峡の認識 (姫路市・野田利郎)
②栄山江流域の前方後円墳をどうとらえるか (大山崎町・大原重雄)
③天若日子が休息する胡床に関して (大山崎町・大原重雄)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(三密回避に大部屋使用の場合は1,000円)
 02/19(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター


第2639話 2021/12/18

瓦と須恵器編年の「新ものさし」

 本日はi-siteなんばで「古田史学の会」関西例会が開催されました。新年1月15日(土)もi-siteなんばで開催します(参加費1,000円、午後は新春古代史講演会)。
 今回の発表で圧巻だったのが服部さんによる軒丸瓦と須恵器杯の編年研究でした。『日本書紀』の記事に基づいた飛鳥編年に代表される従来の編年に替えて、考古学的出土事実とその理化学的年代測定に準拠した須恵器杯の新編年「新しいものさし」を発表されました。今後も出土資料による修正がなされていくこととは思いますが、七世紀の遺構編年の基礎となる画期的な新編年案と思われました。
 この須恵器杯の〝服部編年〟は、わたしが進めている大宰府政庁の造営尺や古代山城の築城年代研究にも役立つものと注目しています。なお、同研究は12月10日に開催された大阪歴史学会考古学部会にて発表され、そこでも専門の考古学者から評価する意見が出されたとのことです。

 発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔12月度関西例会の内容〕
①盗まれた代表王朝の坐 (東大阪市・萩野秀公)
②斉明天皇の「狂心」 (茨木市・満田正賢)
③天孫降臨と天児屋命と伽耶 (大山崎町・大原重雄)
④瓦と須恵器、3つの提起 (八尾市・服部静尚)
⑤『隋書』に採録されている遣隋使の記事(京都市・岡下英男)
⑥「京師を去る万四千里」とは (姫路市・野田利郎)
⑦六世紀末の九州王朝の東国への進出と支配 (川西市・正木 裕)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(三密回避に大部屋使用の場合は1,000円)
 01/15(土) 10:00~12:00 会場:i-siteなんば
      ※午後は恒例の新春古代史講演会。

◎新春古代史講演会 参加費1,000円 共催:古田史学の会、他
◇日時 1月15日(土) 13時30分から17時まで
◇会場 i-site なんば(大阪府立大学難波サテライト)
◇演題と講師
 「発掘調査成果からみた前期難波宮の歴史的位置づけ」 講師 佐藤隆さん(大阪市教育委員会文化財保護課副主幹)
 「文献学から見た前期難波宮と藤原宮」 講師 正木裕さん(大阪府立大学講師、古田史学の会・事務局長)
◇参加費 1,000円
 ※午前中は古田史学の会・関西例会。


第2619話 2021/11/23

市民古代史の会・京都で講演会

―「古代官道」「多賀城碑・蝦夷国」―

 本日、「市民古代史の会・京都」主催講演会にて、「古代官道の不思議発見」というテーマで講演しました。正木裕さん(古田史学の会・事務局長)も「多賀城碑の解釈 蝦夷は間宮海峡を知っていた」をテーマに講演されました。コロナ禍のため久しぶりの開催となりましたが、懐かしい方や初めての参加者もあり、アンケート結果の内容からも好評だったようです。
 わたしは下記の古代官道の名称の不自然さを指摘し、官道の起点を筑前・太宰府とすることにより、説明できることを発表しました。そして、東海道と東山道の終着点を蝦夷国としました。

 《古代官道(七道)の不思議な名称》
 不思議その1 東海道。陸路なのに、なぜ「海道」
 不思議その2 西海道。島(九州)なのに、なぜ「海道」
 不思議その3 北海道がないのはなぜ
 不思議その4 北陸道だけが、なぜ「陸道」
 不思議その5 山陽道と山陰道。なぜ東西南北がないの

 正木さんは、多賀城碑の里程記事などを根拠に、蝦夷国がオホーツク文化圏の南端に位置し、その文化圏交流により間宮海峡を知っていたとする壮大なスケールの古代史像を提示されました。
 参加者から質問も活発に出され、「市民古代史の会・京都」の活動や多元史観・九州王朝説が京都でも着実に支持を拡げつつあるようです。


第2617話 2021/11/20

「蕨手文様、北部九州から信濃へ伝播」説

 本日はi-siteなんばで「古田史学の会」関西例会が開催されました。12月と新年1月もi-siteなんばで開催します(参加費1,000円)。
 本日の例会には長野県上田市の会員吉村八洲男さんが参加され、上田市出土の蕨手文瓦当の文様(複合蕨手文)が北部九州(桂川町・王塚古墳)から信濃へ伝播したとする仮説を発表されました。重い瓦を持参されての発表でしたので、注目を浴びました。わたしからの多くの質問にも丁寧に回答され、同仮説に説得力を感じました。遠くから大阪までお越し頂き、有り難いことと思います。
 なお、発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔11月度関西例会の内容〕
①「蕨手文様・瓦当」への一考察 (上田市・吉村八洲男)
②野田利郎氏の「俀国」の地理的認識について (神戸市・谷本 茂)
③『隋書』開皇二十年記事を読む ―兄弟統治と俀― (姫路市・野田利郎)
④服部論文「磐井の乱は南征だった」の再考証 (茨木市・満田正賢)
⑤騎馬民族説の多元論での解釈 (大山崎町・大原重雄)
⑥斉明紀の征西記事と朝倉宮 (東大阪市・荻野秀公)
⑦三世紀の東(ヤマト・イワレヒコの後裔)と西(邪馬壹国の俾弥呼・壹與) (川西市・正木 裕)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(三密回避に大部屋使用の場合は1,000円)
12/18(土) 10:00~17:00 会場:
 01/15(土) 10:00~12:00 会場:i-siteなんば
      ※午後は恒例の新春古代史講演会。

◎新春古代史講演会 参加費1,000円 共催:古田史学の会、他。
 2022年1月15日(土) 13:30~16:30 会場:i-siteなんば
 講師:佐藤隆さん(元大阪歴博学芸員) 演題:難波京発掘調査の最新研究(仮題)
 ※午前中は古田史学の会・関西例会。

 ※コロナによる会場使用規制のため、緊急変更もあります。最新情報をホームページでご確認下さい。

《関西各講演会・研究会のご案内》
◆「市民古代史の会・京都」講演会 参加費500円 〔お問い合わせ〕℡090-7364-9535
○11/23(水・祝) 13:30~17:00 会場:キャンパスプラザ京都(JR京都駅北西側)
【講演テーマ「古代官道の研究」】
 ①「古代官道の不思議発見」 講師 古賀達也(古田史学の会・代表)
 ②「『多賀城碑』の解釈 ~蝦夷は間宮海峡を知っていた~」 講師 正木 裕(大阪府立大学講師、古田史学の会・事務局長)
○12月は休会。

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 資料代500円 〔お問い合わせ〕℡080-2526-2584
○11/24(水) 13:30~16:30 会場:奈良県立図書情報館
 「白村江の戦い① 白村江前史~専守防衛に徹した伊勢王」 講師:正木裕さん(古田史学の会・事務局長)
 「飛鳥寺は飛鳥にあったのか」 講師:服部静尚さん(古田史学の会・会員)
○12/21(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館
 「徹底解明解説 邪馬台国九州説① ~邪馬台国の物証」 講師:正木裕さん(古田史学の会・事務局長)
○1/26(水) 13:30~16:30 会場:奈良県立図書情報館
 「白村江の戦い② 白村江前と九州王朝」 講師:正木裕さん(古田史学の会・事務局長)
 「王朝交替の真実①~天武は筑紫都督だった」 講師:服部静尚さん(古田史学の会・会員)

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中会議室)
○12/14(火) 14:00~16:00
 「発見された卑弥呼の宮城」 講師:正木裕さん(古田史学の会・事務局長)

◆「古代史講演会in東大阪」講演会 会場:布施駅前市民プラザ(5F多目的ホール) 資料代500円 〔お問い合わせ〕090-7364-9535
○11/27(土) 18:00~20:00 「天皇と蘇我氏と屯倉」 講師:服部静尚さん
○12/27(月) 14:00~16:00 「聖徳太子と十七条憲法」 講師:服部静尚さん

 ※コロナ対応のため、緊急変更もあります。最新情報をご確認下さい。


第2595話 2021/10/16

万葉歌〝大和三山〟「高山」調査の思い出

 本日はドーンセンターで「古田史学の会」関西例会が開催されました。11月はi-siteなんばで開催します(参加費1,000円)。
 今回の例会でわたしは来月14日に迫った〝八王子セミナー2021〟の予行練習を兼ねて、〝「倭の五王」時代(5世紀)の考古学 ―古田武彦「筑後川の一線」説の再評価―〟をパワポを使用して発表しました。関西例会参加者からの厳しい批判や指摘を事前にいただいておけば、当日の発表に役立つと考えたからです。おかげさまで、想定される批判や反論、不十分な点などが参加者から次々と指摘され、発表内容の修正に活かせそうです。ご指摘いただいた皆さんにお礼申し上げます。
 不二井さんが紹介された、万葉歌に見える〝大和三山〟の「高山」(原文)を通説の香具山ではなく、交野山(このさん、交野市)とする説は、古田先生との現地調査で発見されたものです。先生とドライブ中に偶然に発見した「高山町」(生駒市)という道路標識が新説誕生の端緒となったのですが、交野山々頂の巨岩に古田先生と登った思い出が、不二井さんの発表を聞きながら蘇ってきました。この〝大和三山〟「高山」説は古田武彦著『古代史の十字路 万葉批判』「第五章 あやまれる『高山』の歌」(東洋書林、2001年。後にミネルヴァ書房から復刻)に収録されています。

 なお、発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔10月度関西例会の内容〕
①大和三山 (明石市・不二井伸平)
②俀国と兄弟統治 (姫路市・野田利郎)
③服部論文「磐井の乱は南征だった」の根拠が失われる可能性について (茨木市・満田正賢)
④「倭の五王」時代(5世紀)の考古学 ―古田武彦「筑後川の一線」説の再評価―(京都市・古賀達也)
⑤会誌第二十二集『倭国古伝』(荒覇吐神社~)の絵図に関して (大山崎町・大原重雄)
⑥名字と本姓の扱い方 ―秋田次郎橘孝季の例― (たつの市・日野智貴)
⑦景初鏡・正始鏡 (京都市・岡下英男)
⑧藤原宮造営中断の実相 (川西市・正木 裕)
⑨斉明紀の征西記事と朝倉宮 (東大阪市・荻野秀公)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(「三密」回避に大部屋使用の場合は1,000円)
11/20(土) 10:00~17:00 会場:i-siteなんば
 ※コロナによる会場使用規制のため、緊急変更もあります。最新情報をホームページでご確認下さい。

《関西各講演会・研究会のご案内》
 ※コロナ対応のため、緊急変更もあります。最新情報をご確認下さい。

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 資料代500円 〔お問い合わせ〕℡080-2526-2584
○10/27(水) 13:30~16:30 会場:奈良県立図書情報館
 「伊勢王の時代⑤ 大化の改新と二つの大化年号」 講師:正木裕さん(古田史学の会・事務局長)
 「王朝交代の真実 天武は筑紫都督だった」 講師:服部静尚さん(古田史学の会・会員)
○11/24(水) 13:30~16:30 会場:奈良県立図書情報館
 「白村江の戦い① 白村江前史~専守防衛に徹した伊勢王」 講師:正木裕さん(古田史学の会・事務局長)
 「飛鳥寺は飛鳥にあったのか」 講師:服部静尚さん(古田史学の会・会員)


第2573話 2021/09/18

斉明紀「狂心の渠」=水城説の展開!

 本日はi-siteなんばで「古田史学の会」関西例会が開催されました。10月例会はドーンセンター、11月はi-siteなんばで開催します(参加費1,000円)。
 今日の発表はいずれも勉強になることばかりで、驚きの連続でした。満田さんは、大業四年(608年)倭国に派遣された裴世清使節団の副使、遍光高という人物を紹介されました。『日本書紀』にも中国史書にも記されていない人物で、元興寺伽藍縁起にのみ記されているとのこと。従来、平安末期成立の偽文書扱いされている同縁起の再評価が必要と思われました。
 谷本さんも同縁起に見える「大隨國」の「隨」の時に焦点を当て、本来の国名「隋」と字が異なる理由について解説されました。隋唐時代に「隋」と「隨」が併用されており、隋代では「隋」が圧倒的に多く、唐代になって「隨」字の使用が激増したとのこと。このことをわたしは知りませんでしたが、隋唐の研究者にとっては有名なことのようです。結論として、元興寺伽藍縁起に引用されている古文書には古態を遺している部分があり、全否定するには惜しい文献とされました。
 正木さんは、九州年号「常色」「朱雀」などが記されている『赤渕神社縁起』(兵庫県朝来市)の詳細な史料批判を行われ、九州王朝(倭国)に関する記事の洗い出しに成功されました。同縁起の史料価値を更に高めた研究でした。『古田史学会報』への発表が待たれます。
 不二井さんの発表は短里の基礎となった「短歩」に関するもので、短里説の証明や痕跡を研究する上で役立つものと思われました。
 大原さんは、『日本書紀』斉明紀に見える「狂心の渠」記事を丹念に読み解くことにより、同記事を水城や神籠石造営のこととする古田説を精緻に発展させたもので、説得力を感じました。優れた研究と思いましたので、『古田史学会報』への投稿を要請しました。
 最後に発表された日野さんは、『記紀』ではなぜ初代天皇が神武とされ、ニニギとされなかったのかという疑問を提起し、元明天皇らがニニギを始祖とした九州王朝の存在を隠蔽するためとされました。この他にも、「古人大兄皇子は九州王朝の皇子」説などを発表されました。
 わたしは、宮崎県の「阿万」「阿萬」「米良」姓の集中分布と西都原古墳群の異形前方後円墳(前「三角錐」後円墳)との関係について研究発表しました。いずれの発表に対しても活発な質疑応答がなされ、更にパワーアップした「古田史学の会・関西」らしい例会となりました。コロナ禍も徐々に落ち着いてきましたので、多くの皆さんの参加をお待ちしています。
 なお、発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔9月度関西例会の内容〕
①裴世清と高表仁の格の違いについて (茨木市・満田正賢)
②「丈六光銘」の「大随國」をめぐって (神戸市・谷本 茂)
③服部仮説「遣唐使=14年のズレ」は成り立つか? (神戸市・谷本 茂)
④『赤渕神社縁起』の重要性の再発見 (川西市・正木 裕)
⑤「あま」姓・「米良」姓の分布と論理 ―宮崎県の「阿万」「阿萬」姓と異形前方後円墳― (京都市・古賀達也)
⑥人足と狸歩 (明石市・不二井伸平)
⑦狂心の渠は水城のことだった (大山崎町・大原重雄)
⑧元明天皇はなぜ九州王朝を隠蔽したのか (たつの市・日野智貴)

◎会務報告(正木事務局長)
1.大阪府立大学と市立大学の合併(大阪公立大学)によるi-siteなんばの今後について。

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(「三密」回避に大部屋使用の場合は1,000円)
10/16(土) 10:00~17:00 会場:ドーンセンター
11/20(土) 10:00~17:00 会場:i-siteなんば
 ※コロナによる会場使用規制のため、緊急変更もあります。最新情報をホームページでご確認下さい。


第2565話 2021/09/12

「多元的古代研究会」月例会にリモート初参加

 昨日に続いて、本日は「多元的古代研究会」月例会にリモートで参加させていただきました。今回の月例会はコロナ禍のため、リモート参加のみにしたとのことでした。どの研究会も苦労されているようで、スカイプやズームのシステムなどについて、同会事務局長の和田昌美さんと情報交換もさせていただきました。
 今回は「天子の系列・後編~利歌彌多弗利から伊勢王へ」という演題で、七世紀中頃に活躍した九州王朝の天子「伊勢王」の事績について正木裕さん(古田史学の会・事務局長)が研究発表されました。『日本書紀』に見える「伊勢王」は九州王朝(倭国)の天子、即位は常色元年(647年)で白雉九年(660年)まで在位したとされ、評制の施行や律令制定など数々の痕跡が『日本書紀』に遺されていることを論証されました。これらは、七世紀前半から後半にかけての九州王朝史復原の先端研究です。

「佐賀なる吉野」へ行幸した九州王朝の天子とは誰か (上) (中) (下) に改題されています。

 質疑応答タイムでは、わたしから二つの質問をさせていただきました。

(1)『日本書紀』天武十年条(注①)や持統三年条(注②)に見える律令関連記事を通説では「浄御原令」のこととするが、それを34年遡って九州王朝律令とする正木説では、九州王朝複都の前期「難波宮」時代のことになり、「飛鳥(大和であれ筑紫であれ)」の「浄御原宮」での制定を前提とした「浄御原」令という名称は不自然ではないか(「難波律令」なら妥当)。

(2)大化二年(646年)の改新詔など大化期の一連の詔について、どのように位置づけるのか。

 正木さんからの回答(概略)は次のようなものでした。

(1)『日本書紀』では天武・持統による律令制定という建前にしているので、その制定場所も飛鳥浄御原宮ということになる。そのため、九州王朝が常色・白雉年間にかけて策定・公布した九州王朝律令を近畿天皇家が「浄御原令」(『続日本紀』大宝元年八月条。注③)と後に〝命名(改名)〟した可能性もあり、名称にこだわる必要はないと思われる。

(2)九州王朝(倭国)が常色年間(647~651年)に発した律令や詔勅と近畿天皇家(日本国)が王朝交代時(九州年号の大化年間、695~700年)に発した詔勅が、『日本書紀』の大化年間(645~649年)に配置されており、どちらの詔勅かは個別に検証しなければならない。

 以上のような回答でしたが、(1)の見解は初めて聞くもので、〝なるほど、そのような可能性(視点)もあるのか〟と勉強になりました。(2)については、「古田史学の会」関西例会で散々論議したテーマでもあり、わたしも同意見です。なお、リモート例会終了後に正木さんと電話で論議・意見交換を続けました。
 このように、有意義でとても楽しいリモート例会でした。これからも時間の都合がつく限り、参加したいと思います。

(注)
①「詔して曰く、『朕、今より更(また)律令を定め、法式を改めむと欲(おも)う。故、倶(とも)に是の事を修めよ。然も頓(にわか)に是のみを就(な)さば、公事闕くこと有らむ。人を分けて行うべし』とのたまう。」『日本書紀』天武十年(682)二月条
②「庚戌(29日)に、諸司に令一部二十二巻班(わか)ち賜う。」『日本書紀』持統三年(689)六月条
③「癸卯、三品刑部親王、正三位藤原朝臣不比等、従四位下下毛野朝臣古麻呂、従五位下伊吉連博徳、伊余部連馬養等をして律令を選びしむること、是を以て始めて成る。大略、浄御原朝庭を以て准正となす。」『続日本紀』大宝元年(701)八月条
 この記事の「大略、浄御原朝庭を以て准正となす」を史料根拠として「浄御原令」が持統により制定されたとするのが一般的な通説ですが、「古田史学の会」内でも諸説が発表されています。