2016年01月22日一覧

第1126話 2016/01/22

韓国と南九州の前「三角錐」後円墳

 昨日から仕事で東京に来ています。東京駅に着いてちょっと時間があったので八重洲ブックセンターに寄り、吉村靖徳著『九州の古墳』(海鳥社。2015年12月発行)を購入しました。同書の解説は典型的な大和朝廷一元史観によっており、あまり学問的に有益ではありませんが、九州の代表的な古墳約120カ所がカラー写真で紹介されていることが気に入りました。
 その中で興味深い古墳がありました。近年、韓国で発見が続いている「前方後円」墳によく似たものがあったのです。韓国の「前方後円」墳は正確に表現すると、前方部の形状が三角錐に近く、それを「前」から見ると、前方部の形が「台形」ではなく、上部が尖った「三角形」なのです。ですから立体的には「三角錐」が後円部に繋がっているような形状をしています。いわば前「三角錐」後円墳とでも言うべき形状です。これは日本列島の前方後円墳には見られない珍しい形状ですので、韓国内で独自に発展した形状かと思っていました。ところがその韓国の前「三角錐」後円墳によく似た古墳の写真が『九州の古墳』に掲載されていたのです。
 最終的には正式な調査報告書を見てからでなければ断定はできませんが、次の三つの古墳の形状が写真では前「三角錐」後円墳に似ているように見えました。一つは宮崎県西都市の松本塚古墳で墳長104mで5世紀末から6世紀初頭の頃の前方後円墳と説明されています。
 二つ目は熊本県山鹿市岩原古墳群の双子塚古墳で、墳長102mの前方後円墳で5世紀中頃の築造と説明されています。
 三つ目は写真からはやや不確かですが、宮崎県児湯郡新富町祇園原古墳群の弥吾郎塚古墳で、墳長94mの6世紀代の前方後円墳とされています。
 『祇園原古墳群1』(1998年、新富町教育委員会)掲載の測量図によれば、弥吾郎塚古墳以外にも次の古墳が前「三角錐」後円墳に似ています。

 ○百足塚古墳 墳長76.4m
 ○機織塚古墳 墳長49.6m
 ○新田原52号墳 墳長54.8m
 ○水神塚古墳 墳長49.4m
 ○新田原68号墳 墳長60.4m
 ○大久保塚古墳 墳長84.0m

 韓国独特の前「三角錐」後円墳に似た古墳が宮崎に多数あることは九州王朝(南九州)と古代韓国の関係を考えるうえで興味深い現象です。もちろん、九州以外にもこの前「三角錐」後円墳があるかもしれませんので、引き続き慎重に調査したいと思います。この他の前「三角錐」後円墳についてご存じの方がおられればご教示ください。