2017年07月22日一覧

第1461話 2017/07/22

前期難波宮「天武朝」造営説への問い(10)

 前期難波宮九州王朝副都説への批判・対案として出された「天武朝」造営説が、文献史学でも考古学でも成立困難であることを説明してきました。一元史観の古代史学界でも考古学界でも前期難波宮「孝徳期」造営説が事実上の定説となっていることも、それだけ合理的な根拠があるからです。それにもかかわらず、なぜ古田学派内から、どう考えても「無理筋」の「天武朝」造営説が出されてきたのでしょうか。
 わたしはその理由について、ほぼ見当がついています。このテーマについては古田先生との10年にわたる意見交換や間接的な「論争」がありました。古田先生は前期難波宮を『日本書紀』に記されていない近畿天皇家の宮殿ではないかと考えておられましたが、ついにそのことを論文に書かれることはありませんでした。そして、2013年の八王子セミナーにて「検討しなければならない」との発言に至ったのですが、それもかなわないままお亡くなりになられました。
 古田先生との本件に関する応答や背景について、いずれ稿を改めて論じたいと思います。それは7世紀における九州王朝の実体に関する認識(諸仮説)の是非にかかわる問題でした。(完)