第2308話 2020/12/03

古田武彦先生の遺訓(17)

周代史料の史料批判(優劣)について〈後篇〉

 『竹書紀年』などの伝世史料や金文にも検討すべき問題があり、厳密な意味での同時代史料として取り扱うには克服すべき課題がありました。その結果、現時点で一次史料としての信頼性を有すのは竹簡であることがわかりました。しかし、学術調査で出土した竹簡であればよいのですが、古物商ルートで入手した盗掘品の場合、偽造の可能性もあるので、信頼してもよいものか懸念がありました。
 ところが、古物商ルートで入手したと思われる精華簡『繋年』(注)の場合、放射性炭素同位体年代測定法により紀元前305±30年という数値が発表されています。ですから、戦国期後半の同時代史料といえるのです。
 このように、竹簡の場合は放射性炭素同位体年代測定法により成立年代の確認が可能なため、伝世史料や金文よりも成立年代の信頼性が担保できるというメリットがあります。ただし、竹簡は伝世史料に比べると情報量が少ないため、やはり研究には伝世史料を用心深く使用せざるを得ないのが現実です。このような周代史料の実情を、わたしは定年退職後の勉強の結果知ることができ、ようやく周代暦年研究のスタートラインに立つことができました。(つづく)

(注)精華簡とは北京の「精華大学蔵戦国竹簡」の略で、2388点の竹簡からなる膨大な史料である。このうち、138件からなる編年体の史書が『繋年』と名付けられ、2011年に発表された。西周から春秋時代を経て戦国期までおおむね時代順に配列されており、全23章のうち第1章から第4章までに西周の歴史が記されている。

フォローする