「宇曽利(ウソリ)」地名の古さについて
和田家文書に見える「宇曽利」地名が沿海州のウスリー川(中国語表記は「烏蘇里江」)と語源が共通するのではないかと、「洛中洛外日記」(注①)で推測しました。WEB辞書などにはウソリをアイヌ語とする説(注②)が紹介されていますが、わたしはもっと古く、縄文語かそれ以前の言葉に由来するのではないかと考えています。
古田先生が提唱された言素論で「ウソリ」を分析すると、語幹の「ウ」+古い神名の「ソ」、そして一定領域を示す「リ」から成っているように思われます。語幹の「ウ」の意味については未詳ですが、「ソ」が古層の神名であることについて「洛中洛外日記」などで論じてきました(注③)。「リ」は現代でも「里」という字で使用されています。弥生の環濠集落で有名な「吉野ヶ里」はもとより、「石狩」「香取」「白鳥」「光」などの地名末尾の「リ」もたぶんそうでしょう。
これらのことから、神様を「ソ」と呼んだ古い時代にウソリという地名が成立したと考えられます。他方、宇曽利の類似地名「加曽利(カソリ)」が現存しています(千葉県千葉市)。縄文貝塚で有名な加曽利貝塚があるところです。現時点の考察では断定できませんが、初歩的な仮説としては成立しているように思いますが、いかがでしょうか。
(注)
①古賀達也「洛中洛外日記」2738話(2022/05/09)〝ウスリー川と和田家文書の宇曽利〟
同「洛中洛外日記」2748話(2022/05/28)〝菊地栄吾さん(古田史学の会・仙台)から「ウスリー湾」の紹介〟
②ウソリはアイヌ語ウショロ(窪地・入り江・湾)に由来するとする。
③古賀達也「洛中洛外日記」40~45話(2005/10/29~11/09)〝古層の神名〟
同「『言素論』研究のすすめ」『古田武彦は死なず』(『古代に真実を求めて』19集)古田史学の会編、明石書店、2016年。