古田史学の会一覧

第2083話 2020/02/13

『古田史学会報』156号のご紹介

 『古田史学会報』156号が発行されましたので、ご紹介します。正木さんの論稿三編が掲載されるなど、このところ常連組の活躍が際立つ中、奈良大学で国史(日本古代史)を専攻されている日野さんによる岡下稿(「『隋書』国伝を考える」、前号掲載)への批判論文が掲載されました。本格的で真摯な学問論争となることを期待しています。

 156号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。

『古田史学会報』156号の内容
○神功紀(記)の「麛坂王・忍熊王の謀反」とは何か 川西市 正木 裕
○九州王朝の「都督」と「評督」 京都市 古賀達也
○文献上の根拠なき「国=倭国」説 たつの市 日野智貴
○卑弥呼のための舶載鏡 京都府大山崎町 大原重雄
○梅花歌卅二首の序の新解釈 川西市 正木 裕
○書評 小澤毅著『古代宮都と関連遺跡の研究』
天皇陵は同時代最大の古墳だったか 京都市 古賀達也
○「壹」から始める古田史学・二十二
磐井没後の九州王朝2 古田史学の会・事務局長 正木 裕
○令和二年、新年のご挨拶
「古田史学の会」の事業にご協力を 古田史学の会・代表 古賀達也
○古田史学の会・関西 史跡めぐりハイキング
○古田史学の会・関西例会のご案内
○各種講演会のお知らせ
○『古田史学会報』原稿募集
○割付担当の穴埋めヨタ話 『太平記』の中の壬申の乱 西村秀己
○編集後記 西村秀己


第2074話 2020/01/31

『東京古田会ニュース』190号の紹介

『東京古田会ニュース』190号が届きました。本号には拙稿「古代の九州と信州の接点」を掲載していただきました。以前から注目されてきた、信州にある九州や九州王朝の痕跡を紹介した論稿です。たとえば、「高良社」「十五社神社」「筑紫神社」の存在や、同じ遺伝性疾患が信州と熊本県に濃密分布することなどを紹介しました。次の「洛中洛外日記」でも触れていますので、ご覧下さい。

【「洛中洛外日記」九州と信州関連記事】
 422話(2012/06/10) 「十五社神社」と「十六天神社」
 483話(2012/10/16) 岡谷市の「十五社神社」
 484話(2012/10/17) 「十五社神社」の分布
1065話(2015/09/30) 長野県内の「高良社」の考察
1240話(2016/07/31) 長野県内の「高良社」の考察(2)
1246話(2016/08/05) 長野県南部の「筑紫神社」
1248話(2016/08/08) 信州と九州を繋ぐ「異本阿蘇氏系図」
1260話(2016/08/21) 神稲(くましろ)と高良神社
1720話(2018/08/12) 肥後と信州の共通遺伝性疾患分布

 本号には安彦克己さん(東京古田会・副会長、港区)の論稿「安日彦の本拠地を探る」や同じく「日高見国の製鉄遺跡を巡る旅」が掲載されており、関東では『和田家文書』研究が活発に行われていることがわかります。関西でも同分野の研究者の登場が期待されます。


第2066話 2020/01/21

難波京朱雀大路の造営年代(1)

 1月19日に開催された「新春古代史講演会2020」(古田史学の会・共催)では、高橋 工さん(一般財団法人大阪市文化財協会調査課長)と正木 裕さん(大阪府立大学講師、古田史学の会・事務局長)による講演がなされました。テーマは次のとおりで、いずれも最新の研究テーマを含み、新年を飾るにふさわしい優れたものでした。

○「難波宮・難波京の最新発掘成果」高橋 工さん
○「令和改元と万葉歌に隠された歴史」正木 裕さん

 中でも高橋さんの難波京条坊と朱雀大路の発掘調査による最新の報告は新知見と示唆に富んだもので、とても勉強になりました。特に難波京の条坊の有無についての論争にふれられ、〝前期難波宮を造営し、その地を宮都とするのだから、宮都にふさわしい条坊都市が当初から存在したと考えるのが当たり前〟という指摘は素晴らしく論理的です。考古学者からこれほどロジカルな発言を聞くのは初めてのことで、わたしは深く感動しました。
 というのも、わたしも前期難波宮九州王朝複都説に至る前から同様の考えを持っていたからです。そのことを『古田史学会報』123号(2014年8月)の拙論「条坊都市『難波京』の論理」において、次のように記したことがあります。

 【以下、転載】
 わたしは前期難波宮九州王朝副都説を提唱する前から、前期難波宮には条坊が伴っていたと考えていました。それは次のような論理性からでした。

1.七世紀初頭(九州年号の倭京元年、六一八年)には九州王朝の首都・太宰府(倭京)が条坊都市として存在し、「条坊制」という王都にふさわしい都市形態の存在が倭国(九州王朝)内では知られていたことを疑えない。各地の豪族が首都である条坊都市太宰府を知らなかったとは考えにくいし、少なくとも伝聞情報としては入手していたと思われる。
2.従って七世紀中頃、難波に前期難波宮を造営した権力者も当然のこととして、太宰府や条坊制のことは知っていた。
3.上町台地法円坂に列島内最大規模で初めての左右対称の見事な朝堂院様式(十四朝堂)の前期難波宮を造営した権力者が、宮殿の外部の都市計画(道路の位置や方向など)に無関心であったとは考えられない。
4,以上の論理的帰結として、前期難波宮には太宰府と同様に条坊が存在したと考えるのが、もっとも穏当な理解である。

 以上の理解は、その後の前期難波宮九州王朝副都説の発見により、一層の論理的必然性をわたしの中で高めたのですが、その当時は難波に条坊があったとする確実な考古学的発見はなされていませんでした。ところが、近年、立て続けに条坊の痕跡が発見され、わたしの論理的帰結(論証)が考古学的事実(実証)に一致するという局面を迎えることができたのです。この経験からも、「学問は実証よりも論証を重んじる」という村岡典嗣先生の言葉を実感することができたのでした。
 【転載おわり】(つづく)


第2065話 2020/01/20

「麛坂王・忍熊王の謀反」は

  倭国(九州王朝)と銅鐸圏の争い

 一昨日、「古田史学の会」関西例会がアネックスパル法円坂で開催されました。2月と3月はI-siteなんば、4月はドーンセンターで開催します。
 今回の「古田史学の会」関西例会で、最も衝撃を受けた発表が正木裕さん(古田史学の会・事務局長)による〝神功紀(記)の「麛坂王・忍熊王の謀反」〟でした。神功紀などに見える麛坂(かごさか)王・忍熊(おしくま)王と武内宿禰との戦闘譚は、邪馬壹国の女王壹與(いちよ)時代の倭国と銅鐸圏との正規軍同士による戦争説話の神功紀への転用とする仮説です。
 史料根拠も明白であり、論理展開に矛盾や飛躍も無く、仮説としては成立すると思うのですが、『日本書紀』編者がなぜそのような形で転用しなければならないのか、その積極的な理由があるのか、わたしには理解できませんでした。そこで、この仮説に至った理由を正木さんにたずねてみました。
 正木説のポイントは、敗勢になった忍熊王が本拠地の大和ではなく近江方面に逃げようとしたということで、近江の地は後期銅鐸圏の中心領域であり、麛坂王・忍熊王がその地を本拠地としていたと考えれば、この逃避ルートを選んだことがうまく説明できます。この説明を聞いて、わたしもこの正木説の有力性に気づきました。『古田史学会報』での発表が待たれます。
 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者も増えていますので、早めに西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔1月度関西例会の内容〕
①装飾古墳の蕨手文と双脚輪状文などの原像(大山崎町・大原重雄)
②「国県制」考(八尾市・服部静尚)
③籠神社の鏡(その2)(京都市・岡下英男)
④武内宿禰は倭王(奈良市・原 幸子)
⑤神功紀(記)の「麛坂王・忍熊王の謀反」(川西市・正木 裕)
⑥神功・応神伝説に関する一考察(茨木市・満田正賢)
⑦『日本書紀』と「③帝紀」の決定的な違い(東大阪市・荻野秀公)

○事務局長報告(川西市・正木 裕)
《会務報告》
◆会費納入状況、新入会員の報告・他
 未納者には『古田史学会報』2月号の発送を停止。

◆「新春古代史講演会2020」(古田史学の会・共催)
 01/19 13:00〜17:00 会場:アネックスパル法円坂(大阪市教育会館)
【演題・講師】
○「難波宮・難波京の最新発掘成果」 13時30分〜15時
 高橋 工氏(一般財団法人大阪市文化財協会調査課長)
○「令和改元と万葉歌に隠された歴史」 15時10分〜16時40分
 正木 裕氏(大阪府立大学講師、古田史学の会・事務局長)
【参加費】1,000円 定員70名(事前予約不要)
【懇親会】当日、会場で受け付けます。(参加費は別途)
【共催団体】和泉史談会、古代大和史研究会、市民古代史の会・京都、誰も知らなかった古代史の会、古田史学の会、ほか

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日開催) 参加費500円
 02/15 10:00〜17:00 会場:I-siteなんば 実施済み
 開催中止03/21 10:00〜17:00 会場:I-siteなんば開催中止
2/23新型コロナウイルス対策として、 I-siteなんばでの 古田史学の会・関西3月21日例会は開催中止となりました。
 開催中止04/18 10:00〜17:00 会場:ドーンセンター開催中止
 開催中止05/16 10:00〜17:00 会場:福島区民センター開催中止

《各講演会・研究会のご案内》
◆「誰も知らなかった古代史」(正木 裕さん主宰。会場:森ノ宮キューズモール) 参加費500円
 01/31(金) 18:30〜20:00 「『日本書紀』一三〇〇年の欺瞞」講師:正木 裕さん。
 開催中止02/28(金) 18:30〜20:00 未定

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 02/04(火) 10:00〜12:00 (会場:奈良新聞本社)
    「誰も知らなかった万葉歌(6)壬申の乱と天武・持統の真実」講師:正木 裕さん。
 開催中止03/03(火) 10:00〜12:00 (会場:奈良県立図書情報館)
    「聖徳太子の実像を求めて」講師:正木 裕さん。開催中止
 開催中止04/07(火) 13:00〜17:00 (会場:奈良県立図書情報館)
    日本書紀完成1300年記念講演会開催中止
    講師:正木裕さん、服部静尚さん、満田正賢さん、大原重雄さん、古賀。

◆「和泉史談会」講演会(辻野安彦会長。会場:和泉市コミュニティーセンター) 参加費500円
 02/11(火) 14:00〜16:00 「誰も知らなかった万葉集」講師:正木 裕さん。
 開催中止03/10(火) 14:00〜16:00「(仮)池上曽根遺跡と泉州の古代」
   講師:高瀬裕太さん(大阪府立弥生文化博物館学芸員)。開催中止

◆「市民古代史の会・京都」講演会(事務局:服部静尚さん・久冨直子さん)。毎月第三火曜日(会場:キャンパスプラザ京都) 参加費500円
02/18(火) 18:30〜20:00 「能楽の中の古代史(2)本当は不思議な高砂」講師:正木 裕さん。
03/17(火) 18:30〜20:00 「理系の古代史(その1)二倍年歴の世界」講師:服部静尚さん。
開催中止04/21(火) 18:30〜20:00 「理系の古代史(その2)解明された万葉の染と色」講師:古賀達也。開催中止

◆久留米大学講演会(久留米大学御井キャンパス)
 03/15(日) 講師:服部静尚さん。


第2064話 2020/01/15

『九州倭国通信』No.197のご紹介

 先日参加した「九州古代史の会」新春例会で、会報『九州倭国通信』No.197を頂きましたので紹介します。

 同号には拙稿「『古田武彦記念古代史セミナー』の情景」を掲載していただきました。昨年11月に開催された「八王子セミナー」の雰囲気を紹介し、九州の古代史ファンに参加を呼びかけました。

 同号の表紙には筑前国分寺(太宰府市国分)の塔礎石跡の写真が掲載され、最終ページに「筑前国分寺の不思議」という説明文が付されていました。その説明によれば、同遺跡からは古式の老司系瓦が出土しており、創建年は天平三年(七四一)の聖武天皇による国分寺創建の詔勅よりも早い可能性が示唆されていました。わたしも九州王朝による多元的国分寺(国府寺)創建という仮説を提起してきましたので、とても興味深い記事と思いました。


第2063話 2020/01/12

「九州古代史の会」新春例会・新年会に参加

 帰省を兼ねて、本日の「九州古代史の会(木村寧海代表)」新春例会と新年会に参加しました。会場はももち文化センター(福岡市早良区)、講演テーマは下記の通りでした。中でも古賀市の考古学者、甲斐孝司さんによる船原古墳出土品(馬具など)の最新技術による調査解析方法の説明は圧巻でした。恐らく世界初の技術と思われますが、それは次のようなものでした。

 ①遺構から遺物が発見されたら、まず遺構のほぼ真上からプロのカメラマンによる大型立体撮影機材で詳細な撮影を実施。
 ②次いで、遺物を土ごと遺構から取り上げ、そのままCTスキャナーで立体断面撮影を行う。この①と②で得られたデジタルデータにより遺構・遺物の立体画像を作製する。
 ③そうして得られた遺物の立体構造を3Dプリンターで復元する。そうすることにより、遺物に土がついたままでも精巧なレプリカが作製でき、マスコミなどにリアルタイムで発表することが可能。
 ④遺物の3Dプリンターによる復元と同時並行で、遺物に付着した土を除去し、その土に混じっている有機物(馬具に使用された革や繊維)の成分分析を行う。

 このような作業により船原古墳群出土の馬具や装飾品が見事に復元でき、遺構全体の状況が精緻なデジタルデータとして保存され、研究者に活用されるという、最先端で最高水準の発掘調査方法が、甲斐さんら現地の発掘担当者と九州大学の協力チームにより、それこそ手探りで作り上げられたことが報告されました。
 福岡市天神の平和楼で開催された新年会でも甲斐さんを交えて、考古学の最先端テーマや作業仮説について質疑応答が続けられ、とても有意義な集いとなりました。講師の皆さんをはじめ、「九州古代史の会」の方々に厚く御礼申し上げます。
 二次会でも前田さん(九州古代史の会・事務局長)、金山さん(九州古代史の会・役員)、講師の山下さん、古くからの友人である松中さん(九州古代史の会、古田史学の会の会員)と夜遅くまで天神の居酒屋で歓談し、親睦を深めることができました。

(1)考古学資料に見る天孫降臨
  講師 山下孝義さん(九州古代史の会・幹事)
(2)広開土王碑の中の「倭」
  講師 木村寧海さん(九州古代史の会・代表)
(3)鹿部田淵遺跡・船原古墳について
  講師 甲斐孝司さん(古賀市教育委員会 文化課業務主査)


第2061話 2020/01/02

『古代に真実を求めて』23集の初校が届きました

 本日、明石書店から『古代に真実を求めて』23集の初校が届きました。担当されている編集部の森さんがお忙しいようで、例年よりも二週間ほどペースが遅れています。それでも、出版時期は例年通りの3月末頃にしたいとのことで、執筆者による校正作業をお急ぎいただくことになりました。そのため、わたしは残りのお正月休みに校正作業を行う予定です。会社が始まると、年始挨拶の出張が続き、自宅に戻れない日々がしばらく続きますので。
 まだ、本のタイトルが最終決定されていませんので、わたしが執筆した巻頭言は、タイトル決定を待ってから著者校正に入らなければなりません。
 今回の特集コンセプトは、『日本書紀』成立千三百年の今年にあわせて、『日本書紀』や『古事記』の中の九州王朝の痕跡を明らかにするというものです。今年は『日本書紀』をテーマにした書籍が多数出版されることが予想されますので、「古田史学の会」でなければ掲げることができないテーマを設定し、近畿天皇家一元史観との明確な差別化をはかりました。ご期待下さい。


第2060話 2020/01/01

元旦の奈良新聞に「名刺広告」掲載

 令和二年元旦の奈良新聞に「古田史学の会」の名刺広告を掲載していただきましたので、皆様にご報告します。
 昨年末にも「古田史学の会」が共催する「新春古代史講演会2020」(2020/01/19、会場:アネックスパル法円坂)の無料招待券プレゼントの案内記事を奈良新聞に掲載していただきました。心より感謝しています。


第2059話 2020/01/01

令和二年、年始のご挨拶

 「古田史学の会」会員の皆様、友誼団体の皆様、「洛中洛外日記」読者の皆様、古田武彦ファンの皆様に、新年のご挨拶を申し上げます。
 旧年中は多くのご支援ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。「古田史学の会」は会則第二条に明記されている下記の目的達成のため、新年も努力と挑戦を続けてまいります。変わらぬご支援をお願い申し上げます。

【古田史学の会・会則】
第二条 目的
 本会は、旧来の一元通念を否定した古田武彦氏の多元史観に基づいて歴史研究を行い、もって古田史学の継承と発展、顕彰、ならびに会員相互の親睦をはかることを目的とする。

 この目的達成のための新年最初の事業として、1月19日(日)の「新春古代史講演会2020」を友誼団体(和泉史談会、古代大和史研究会、市民古代史の会・京都、誰も知らなかった古代史の会)と協力して開催します。更に、春には古田史学論集『古代に真実を求めて』23集を明石書店より発刊します。皆様のご参加ご購読をお願い申し上げます。
 また、会員や運営スタッフを募集しております。数多くの事業に「古田史学の会」は取り組んでおりますが、さらに広く古田史学を訴えていくためにも、運営体制の強化が不可欠です。可能な範囲でかまいませんので、「古田史学の会」の事業へのご協力をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。


第2058話 2019/12/29

『多元』No.155のご紹介

 友好団体の「多元的古代研究会」の会紙『多元』No.155が届きました。拙稿「七世紀の『天皇』号 -新・旧古田説の比較検証-」を掲載していただきました。
 九州王朝と近畿天皇家との関係について、当初、古田先生は七〇一年の王朝交替より前は、倭国の臣下筆頭の近畿天皇家は七世紀初頭頃からナンバーツーとしての「天皇」号を許されていたとされていましたが、晩年には、七世紀の金石文などに残る「天皇」を九州王朝の天子の別称であり、近畿天皇家が天皇を名乗るのは文武からとする新説を発表されていました。
 わたしは旧説を支持していましたので、拙稿ではその理由と史料根拠を明示しました。古田先生が著作などで触れられなかった近畿の金石文(長谷寺千仏多宝塔銅板、釆女氏榮域碑)や飛鳥池出土木簡(「天皇」「舎人皇子」「穂積皇子」「大伯皇子」「大津皇」)などを紹介しました。古田学派内でも七世紀の「天皇」号などを論じる際は、こうした史料にも目を向けていただければと願っています。
 同号掲載の西坂久和さん(昭島市)の論稿「呉老師ら来日 -その後」には九州王朝系図と見られている「松野連系図」が紹介されており、興味深く拝読しました。同系図には倭の五王らの名前が見え、以前から注目されてきたのですが、どの程度歴史の真実を反映しているのかという史料批判が難しく、学術論文の史料(エビデンス)として使いにくいという問題があります。珍しい史料だけに、九州王朝説にとって今後の検討課題です。


第2056話 2019/12/23

「関西例会」行く人、来る人

 12月21日、「古田史学の会」関西例会がI-siteなんばで開催されました。1月はアネックスパル法円坂、2月と3月はI-siteなんばで開催します。
 1月は例会翌日の19日(日)午後に恒例の「新春古代史講演会」(会場:アネックスパル法円坂)も開催します。こちらにも、ぜひご参加下さい。
 「古田史学の会」関西例会は今月も初参加の方がありました。優れた研究発表や活発な学問論議に触れて、初参加の方が入会されることもあります。他方、転居やご高齢により参加できなくなる方もあります。今月の関西例会でもそのような出会いと別れがありました。
 岐阜県海津市から参加されていた高木善征さんが地元のお土産をたくさん持ってこられたので、その理由をたずねると、高齢のため関西例会への参加は今回を最後にするとのこと。聞けば、高木さんは82歳になられ、毎月のように一人で大阪まで行くことをご子息が心配されたためとのことでした。「古田史学の会」へは引き続き会員として残り、会の発展を祈っていますと、お別れの挨拶をされました。そして、例会参加者の拍手の中、会場を後にされました。感慨深い出会いと別れでした。
 今月も一段と面白いテーマや研究がいくつも発表されたのですが、その概要については別に紹介することにします。
 今回の例会発表は次の通りでした。なお、発表者はレジュメを40部作成されるようお願いします。発表希望者も増えていますので、早めに西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔12月度関西例会の内容〕
①『太平記』の中の壬申の乱(高松市・西村秀己)
②蘇我氏と近畿天皇家との関係(八尾市・服部静尚)
③四天王寺と前期難波宮(茨木市・満田正賢)
④籠神社の鏡(京都市・岡下英男)
⑤「科野」の「高良社」と多元史観(上田市・吉村八洲男)
⑥大国主を助ける鼠のオノマトペの言葉(大山崎町・大原重雄)
⑦旧石器捏造事件を見抜いていた竹岡俊樹氏の『考古学基礎論』(雄山閣)の紹介(大山崎町・大原重雄)
⑧「帝紀(帝王本紀)」について(東大阪市・荻野秀公)
⑨万葉百九十九番歌の解釈上の残された課題について(川西市・正木 裕)

○01/12「新春ハイキング:初クルーズ(渡船)と初登山(昭和山・天保山)」への参加者募集(古田史学の会・全国世話人 西井健一郎)

○事務局長報告(川西市・正木 裕)
《会務報告》
◆会費納入状況、新入会員の報告・他
 『倭国古伝』の売れ行き好調で、読者の入会が続いている。高齢化により退会者も多く、会員拡大が急務。

◆「新春古代史講演会2020」(古田史学の会・共催)
 01/19 13:00〜17:00 会場:アネックスパル法円坂(大阪市教育会館)

【演題・講師】
○「難波宮・難波京の最新発掘成果」 13時30分〜15時
 高橋 工氏(一般財団法人大阪市文化財協会調査課長)
○「令和改元と万葉歌に隠された歴史」 15時10分〜16時40分
 正木 裕氏(大阪府立大学講師、古田史学の会・事務局長)

【参加費】1,000円 定員70名(事前予約不要)
【懇親会】当日、会場で受け付けます。(参加費は別途)
【共催団体】和泉史談会、古代大和史研究会、市民古代史の会・京都、誰も知らなかった古代史の会、古田史学の会、ほか

◆「古田史学の会」関西例会(第三土曜日開催) 参加費500円
 01/18 10:00〜17:00 会場:アネックスパル法円坂(大阪市教育会館)
 02/15 10:00〜17:00 会場:I-siteなんば 実施済み
 開催中止03/21 10:00〜17:00 会場:I-siteなんば開催中止
2/23新型コロナウイルス対策として、 I-siteなんばでの 古田史学の会・関西3月21日例会は開催中止となりました。
 開催中止04/18 10:00〜17:00 会場:ドーンセンター開催中止
 05/16 10:00〜17:00 会場:福島区民センター

《各講演会・研究会のご案内》
◆「誰も知らなかった古代史」(正木 裕さん主宰。会場:森ノ宮キューズモール) 参加費500円
 ※12月はお休み。
 01/31(金) 18:30〜20:00 「『日本書紀』一三〇〇年の欺瞞」講師:正木 裕さん。

◆「古代講演会in八尾」(会場:八尾市文化会館プリズムホール 近鉄八尾駅から徒歩5分) 参加費500円
 01/11(土) 13:30〜16:30  ①「卑弥呼の世界」②「飛鳥の謎-飛鳥浄御原宮はどこだ」講師:服部静尚さん。

開催順延4月11日(土)から開催順延し、6月13日になりました。
14001450 卑弥呼から倭の五王の世界
14551515 日本古代史報道の問題とマスコミの体質
15201620 蘇我・物部戦争と河内
16201630 質疑応答:スピーカー茂山憲史・服部静尚

八尾市文化会館プリズムホール〒581-0803 大阪府八尾市光町2−40
参加費500円

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 01/07(火) 10:00〜12:00 (会場:奈良新聞本社)
    「誰も知らなかった万葉歌(5)白村江敗戦と天智・近江朝挽歌」講師:正木 裕さん。
 02/04(火) 10:00〜12:00 (会場:奈良新聞本社)
    「持統の吉野・伊勢行幸と『日本書紀』の秘密」講師:正木 裕さん。

◆「和泉史談会」講演会(辻野安彦会長。会場:和泉市コミュニティーセンター) 参加費500円
 01/14(火) 14:00〜16:00 「九州王朝説と祝詞」講師:服部静尚さん。
 02/10(火) 14:00〜16:00 「誰も知らなかった万葉集」講師:正木 裕さん。

◆「市民古代史の会・京都」講演会(事務局:服部静尚さん・久冨直子さん)。毎月第三火曜日(会場:キャンパスプラザ京都) 参加費500円
 ※1月はお休み。
02/18(火) 18:30〜20:00 「能楽の中の古代史(2)本当は不思議な高砂」講師:正木 裕さん。

◆水曜研究会
 12/25(水) 13:00〜17:00 会場:豊中倶楽部自治会館


第2055話 2019/12/12

『古田史学会報』155号のご紹介

 『古田史学会報』155号が発行されましたので、ご紹介します。今号はバラエティーに富んだ、読んで面白い会報になりました。中でも、一面に掲載された岡下稿は関西例会で発表されたもので、『隋書』国伝の「国」は倭国のこととする骨太な論証による好論です。札幌市の阿部さんの論稿も、前期難波宮(京)は鞠智城の持つ「山城」と「都城」という性格を受け継いだとするもので、とても面白い視点だと思いました。

 155号に掲載された論稿は次の通りです。この他にも優れた投稿がありましたが、次号以降での掲載となりますので、ご了解下さい。また、投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。

『古田史学会報』155号の内容
○『隋書』国伝を考える 京都市 岡下英男
○1月19日(日)「新春古代史講演会2020」のお知らせ
○「鞠智城」と「難波京」 札幌市 阿部周一
○三種の神器をヤマト王権は何時手に入れたのか 八尾市 服部静尚
○難波の都市化と九州王朝 京都市 古賀達也
○「壹」から始める古田史学・二十一
磐井没後の九州王朝1 古田史学の会事務局長 正木 裕
○なぜ蛇は神なのか? どうしてヤマタノオロチは切られるのか? 京都府大山崎町 大原重雄
○会費納入のお願い
○古田史学の会・関西 史跡めぐりハイキング
○古田史学の会・関西例会のご案内
○各種講演会のお知らせ
○『古田史学会報』原稿募集
○編集後記 西村秀己