『古田史学会報』151号のご案内
『古田史学会報』151号が発行されました。冒頭の西村論文を筆頭に、古田学派内で論争や異見が出されてきたテーマの論稿が掲載されており、読者は最先端研究の現況に触れることができるでしょう。
たとえば西村稿は古代中国における二倍年暦の存在を示す暦法上の史料痕跡を発見したというもので、二倍年暦の是非に関わるものです。古田先生やわたしは周代において二倍年暦が採用されていたとする立場ですが、古田学派の中にはそれに反対される方もおられます。その論争に終止符を打つ可能性を感じさせるのが今回の西村稿です。
服部稿は、関西例会で激論が続いている大化改新の年代がテーマです。大化改新を『日本書紀』の通り七世紀中頃とする説と七世紀末の九州年号の大化年間のこととする説とで論争が続いているのですが、服部稿では過去に発表された西村稿(七世紀末説)へのハイレベルの批判が展開されています。当然、西村さんからの反論が次号でなされることでしょう。この両者のバトルをわたしも注目しています。
正木稿は、古田説の中でも最も揺れている「磐井の乱」の是非についての経緯を解説されたものです。古田先生御自身が当初の「継体の反乱」説から「継体の反乱も磐井の乱もなかった」とする新説に変わっておられるほど重要で興味深いテーマです。正木さんの見解もいずれ示されることでしょう。
わたしの論稿は、前期難波宮九州王朝副都説への批判の根拠となっている「天武朝造営説」を批判したもので、「天武朝造営説」が須恵器坏Bの出土事実の誤認に基づく誤論であることを明らかにしました。
このように今号は、学問論争におけるダイナミズムを感じ取れる内容となっています。掲載された論稿は次の通りです。
『古田史学会報』151号の内容
○五歳再閏 高松市 西村秀己
○盗まれた氏姓改革と律令制定(下) 川西市 正木裕
○前期難波宮「天武朝造営」説の虚構
-整地層出土「坏B」の真相- 京都市 古賀達也
○乙巳の変は六四五年
-天平宝字元年の功田記事- 八尾市 服部静尚
○複数の名を持つ天智天皇 日野市 橘高 修
○「壹」から始める古田史学・十七
「磐井の乱」とは何か(1) 古田史学の会事務局長 正木 裕
○古田史学の会 会員総会と記念講演会
○各種講演会のお知らせ
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○『古田史学会報』原稿募集
○二〇一九年度 会費納入のお願い
○『古代に真実を求めて』バックナンバー 廉価販売のお知らせ
○編集後記 西村秀己