第3191話 2024/01/02

令和六年、新年のご挨拶

 ―『立正安国論』日蓮自筆本の「国」―

 「古田史学の会」会員の皆様、古田史学支持者の皆様、「洛中洛外日記」読者の皆様へ、令和六年(2024)、新年のご挨拶を申し上げます。

 わたしたち「古田史学の会」は本年創立三十周年を迎えます。皆様の物心両面にわたるお力添えに感謝致します。新年は従来の諸事業(講演会・例会・会報・会誌出版・HP)に加え、インターネットによる配信事業、そして後継へのバトンタッチの準備も始めたいと考えています。本年も一層のご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。

 元日に発生した能登半島大地震のテレビ報道を見ながら本文を書いています。亡くなられた方々、被災された皆様に、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。〝一年の計は元旦にあり〟の言葉が今日は悲痛に響いています。元旦に起こった大地震が、わが国の現況を如実に顕しているようにも思え、以前に研究した(注①)日蓮の『立正安国論』(文応元年<1260>、北条時頼に提出)の一節が浮かびました。

〝旅客来りて嘆いて曰く、近年より近日に至るまで天変地夭(てんぺんちよう)、飢饉疫癘(えきれい。悪性の流行病)、遍(あまね)く天下に満ち、広く地上に迸(はびこ)る。牛馬、巷に斃れ、骸骨、路に充てり。死を招くの輩、既に大半に超え、悲まざるの族、敢て一人も無し。(中略)
世、皆正に背き、人、悉く悪に帰す、故に善神は国を捨てて相去り、聖人は所を辞して還りたまわず。是れを以て魔来り、鬼来り、災起り、難起ると言わずんばある可からず、恐れずんばある可からず。〟(古賀訳)

 今から三十年ほど前、『立正安国論』日蓮自筆本の研究をしたとき、「国」という字の「玉」に代えて「民」とする異体字を日蓮が併用していることを知りました(注②)。国の中心は「民」であるとする日蓮思想の現れと思い、そのことを古田先生に報告したことを記憶しています。〝国の中心に民がある日本国を取り戻す〟。このことを、近年うち続く「天変地夭・飢饉疫癘」は訴えているのかもしれません。

(注)
①古賀達也「洛中洛外日記」685話(2014/03/29)〝『立正安国論』と『三教指帰』〟
②『立正安国論』には真跡二編の存在が知られており、両本間の「国」の字体には異同がある。

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