第228話 2009/09/26

ウィキペディアの限界と可能性

 読者の皆さんはよくご存じのことと思いますが、インターネット上の読者参加で編集される「辞書」ウィキペディア(Wikipedia)は、わたしもちょっとした調査などに利用しています。ところが最近、インターネットの普及に伴い、古田史学の会会員の方が論文執筆においてこのウィキペディアを論証根拠の出典資料として利用掲載されるケースが出てきています。
 検索や調査ツールとしてウィキペディアを利用されるのはいいのですが、学術論文などに引用出典として使用されるのは、いかがなものかと思います。少なくとも、わたしの友人がそのような使用を論文でされている場合は、止めるように忠告しています。それは次のような理由からです。

1.執筆者(編集責任者)が不明。
2.書き換えが可能で、後日再確認が困難なケースが想定される。
3.文献史学で重視される1次史料ではなく、2次3次史料に相当する。
4.記載内容の学問的レベルが判断できない。

 などです。特に1〜3は「引用文献」としては致命的欠陥で、論証の根拠としては使用されないほうが賢明です。面倒でも原典(1次史料)に研究者自らがあたるべきです。しかし、そうした限界を知った上で節度を持って上手に利用できれば、大変便利なツールであることには違いありません。更に、大勢の「執筆者」により編集されることは、個人では調査しきれない資料が紹介されているケースもあり、長所も備えています。インターネットの時代ですから、上手に用心深く利用されることをお奨めします。そして、やはり自ら史料にあたるという文献史学の基本的研究姿勢を大切にしていただきたいものです。

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