第2949話 2023/02/20

甲斐国造の日下部氏と九州王朝

甲斐国造と但馬国造を日下部氏とする諸説(注①)を知り、わたしは赤渕神社史料のことを思い出しました。朝来市にある同神社調査については「洛中洛外日記」などでも報告したように(注②)、九州年号「常色」「朱雀」などを持つ『赤渕神社縁起』の成立は天長五年(828年)で、現存する九州年号史料としては最古級です。
『赤渕神社縁起』によれば、表米宿禰(ひょうまいのすくね)という人物の伝承が記されており、それは常色元年(647年)に丹後に攻めてきた新羅の軍船を表米宿禰が迎え討ち、勝利したというものです。表米宿禰は孝徳天皇の第二皇子という伝承もありますが、『日本書紀』にはこのような名前の皇子は見えません。そこで、これは九州王朝の王族に関する伝承ではないかと考えています。
この表米宿禰は現地氏族の日下部氏の祖先とされています。他方、九州王朝の天子の一族と思われる高良大社の祭神、高良玉垂命の子孫も日下部氏(草壁氏)を名乗っています。もしかすると、古代における日下部氏は九州王朝の有力な軍事氏族ではないでしょうか。(つづく)

(注)
①関晃「付編1、甲斐国造と日下部」『関晃著作集二 大化改新の研究 下』吉川弘文館、1996年。
古川明日香「甲斐国造日下部氏の再評価 ―『古事記』・『国造本紀』の系譜史料を手がかりに―」『研究紀要 26』山梨県立考古博物館 山梨県埋蔵文化財センター、2010年。
②古賀達也「洛中洛外日記」604話(2013/10/03)〝赤渕神社縁起の「常色元年」〟
同606話(2013/10/06)〝「日下部氏系図」の表米宿禰と九州年号〟
同607話(2013/10/12)〝実見、『赤渕神社縁起』(活字本)〟
同608話(2013/10/13)〝『多遅摩国造日下部宿禰家譜』の表米宿禰〟
610話(2013/10/17)〝表米宿禰「常色元年戦闘」伝承の謎〟
同611話(2013/10/18)〝表米宿禰「常色元年戦闘」伝承の真相〟
同613話(2013/10/20)〝表米宿禰「常色元年戦闘」伝承の「鬼」〟
同614話(2013/10/22)〝『赤渕神社縁起』の「常色の宗教改革」〟
同618話(2013/11/04)〝『赤渕神社縁起』の九州年号〟
古賀達也「『赤渕神社縁起』の史料批判」『古代に真実を求めて』17集、明石書店、2014年。
同「赤渕神社縁起の表米宿禰伝承」『倭国古伝』(『古代に真実を求めて』22集)明石書店、2019年。

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