古田史学の会一覧

第2534話 2021/08/11

『古田史学会報』165号の紹介

 『古田史学会報』165号が発行されましたので紹介します。
 一面に掲載された服部稿では、藤原京にあった本薬師寺は九州王朝が建立したとする説が発表されました。現在の薬師寺が本薬師寺を平城京に移転したものか、新たに建造したものかについての論争なども紹介され、薬師寺東塔擦銘(注①)は本薬師寺にあった銘文を11世紀になって一部変更・造文して刻入されたもので、銘文に見える「中宮」を九州王朝の「中宮天皇」のこととされました。藤原京造営主体が九州王朝だったのか、近畿天皇家だったのかというテーマにも関連する仮説ですので、今後の展開が注目されます。
 わたしは、『三国志』の短里は魏の明帝が景初元年(237年)に制定したとする西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、高松市)の説を解説しました。同説は『邪馬壹国の歴史学』(注②)に収録されていますが、ご存じない方もありましたので、同書に対する古田先生の論評も含めて紹介しました。
 本号で、わたしがもっとも注目したのが日野智貴さんの論稿です。仏教の戒律や受戒制度などが九州王朝説の観点から論じられており、とても刺激的な論文でした。また、多利思北孤は「菩薩天子」とあり、菩薩戒の受戒は在家のままで可能で、出家とは異なるとの指摘は示唆的でした。これは「九州王朝の天子が菩薩戒を受戒したのなら、後継者はどうするのか」という批判に対する回答であり、こうした視点での反論が成立することに感心しました。仏教思想や僧伽制度についての日野さんの博識には、いつも驚かされます。

 165号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。

【『古田史学会報』165号の内容】
○本薬師寺は九州王朝の寺 八尾市 服部静尚
○明帝、景初元年短里開始説の紹介
 ―永年の「待たれた」一冊『邪馬壹国の歴史学』― 京都市 古賀達也
○九州王朝の僧伽と戒律 たつの市 日野智貴
○「壹」から始める古田史学・三十一
 多利思北孤の時代Ⅷ ―「小野妹子の遣唐使」記事とは何か― 古田史学の会・事務局長 正木 裕
○古田史学の会 第二十七回会員総会の報告
○『古代に真実を求めて』原稿募集
○『古田史学会報』原稿募集
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○2021年度会費納入のお願い
○編集後記 西村秀己

(注)
①薬師寺東塔檫銘は次の通り。
維清原宮馭宇
天皇即位八年庚辰之歳建子之月以
中宮不悆創此伽藍而鋪金未遂龍駕
騰仙大上天皇奉遵前緒遂成斯業
照先皇之弘誓光後帝之玄功道済郡
生業傳劫式於高躅敢勒貞金
其銘曰
巍巍蕩蕩薬師如来大発誓願廣
運慈哀猗<嶼の偏が犭>聖王仰延冥助爰
餝靈宇荘厳御亭亭寶刹
寂寂法城福崇億劫慶溢萬

②西村秀己「短里と景初 ―誰がいつ短里制度を布いたのか―」『邪馬壹国の歴史学』(古田史学の会編)ミネルヴァ書房、平成二八年(2016)。


第2529話 2021/08/02

『東京古田会ニュース』No.199の紹介

 本日、『東京古田会ニュース』No.199が届きました。今号は拙稿「七世紀後半の近畿天皇家の実勢力 ―飛鳥藤原出土木簡の証言―」を掲載していただきました。飛鳥地域(飛鳥池遺跡・石神遺跡・苑池遺跡・他)と藤原宮(京)地域からは約四万五千点の木簡が出土しており、それにより七世紀後半から八世紀初頭の古代史研究が飛躍的に進みました。そのなかの三五〇点ほどの評制時代(七世紀後半)の荷札木簡を紹介し、飛鳥宮時代(天智・天武・持統)と藤原宮時代(持統・文武)の近畿天皇家の影響力が及んだ範囲(献上する諸国)を確認することができるとしました。
 同号の掲載論稿中、わたしが最も注目したのが新保高之さん(調布市)の「謎の皇孫・健王と大田皇女」でした。新保さんによれば、『日本書紀』には「皇孫」の表記が43例あり、その内の39例は神代紀(38例)と神武紀(1例)で、他の4例は、時代が遠く離れた斉明紀の健王(3例)と天智紀の大田皇女(1例)という不思議な使用状況とのこと。両者は持統の同母姉弟という共通項を持つが、なぜこの二人が「皇孫」と呼ばれているのかは不明とのことです。もしかすると、正木裕さん(古田史学の会・事務局長)が提起された〝九州王朝系近江朝〟(注①)や、古田先生の〝天智による日本国の創建〟(注②)と関係するのかもしれません。
 こうした『日本書紀』の史料状況に着目されたこと自体も鋭い問題提起ですが、その理由については不明とされた慎重な研究姿勢に、わたしは共感を覚えました。研究途上での、わからないことはわからないとする姿勢や、史料事実の核心部分を鋭く見抜くという新保さんの洞察力は流石と思いました。研究の進展が楽しみです。

(注)
①正木裕「『近江朝年号』の実在について」『古田史学会報』133号、2016年4月。
②古田武彦「日本国の創建」『よみがえる卑弥呼』駸々堂、1987年。ミネルヴァ書房より復刻。


第2525話 2021/07/21

『九州倭国通信』No.203の紹介

 「九州古代史の会」の会報『九州倭国通信』No.203が届きました。同号には拙稿「『鬼滅の刃』と九州王朝の大蔵氏」を掲載していただきました。同稿では、超人気アニメ「鬼滅の刃」の主人公の竈門炭治郎の出身地を福岡県の竈門神社(太宰府)とすることを切り口に、九州王朝の有力臣下としての大蔵氏や千手氏について論じたものです。同紙への投稿はなるべく九州の地元ネタにするよう心がけています。
 なお、「九州古代史の会」代表幹事(会長)が木村寧海さんから工藤常泰さんに交替されました。コロナ禍の中での活動ですから、どちらの会も大変なようですが、同会では月例会が9月から再開されます。


第2522話 2021/07/18

難波京西北部地区に「異尺」条坊の痕跡

 「古田史学の会」関西例会では、研究発表の他にも休憩時間や懇親会での参加者との会話や情報交換により、重要な知見を得ることが度々あり、リモート参加では味わえないリアルな研究会の醍醐味の一つです。昨日の関西例会でもそうした知見が得られましたので、紹介します。
 ズームによるリモートシステム管理を担当されている久冨直子さん(『古代に真実を求めて』編集部)から大阪歴博『研究紀要』最新号(注①)に佐藤隆さんの研究論文が収録されていることを教えていただき、同書をお借りすることができました。それは「難波京域の再検討 ―推定京域および歴史的評価を中心に―」という論稿で、最新の発掘成果に基づいて難波京条坊の範囲や年代を考察したものでした。大阪歴博や大阪府には優れた考古学者が少なくありませんが、その中でもわたしが注目してきたお一人が佐藤隆さんでした。特に難波編年の構築や難波と飛鳥の比較を出土土器に基づいて考察された「難波と飛鳥、ふたつの都は土器からどう見えるか」(注②)は研究史に残る好論と、わたしは「洛中洛外日記」などで紹介してきたところです(注③)。
 今回の論稿でも驚くべき重要な仮説が提起されていました。それは、従来は条坊が及んでいないと見られてきた難波京西北部地区(難波宮域の北西方にある大川南岸の一帯)にも、難波宮南方に広がる条坊とは異なる尺単位による条坊(方格地割)の痕跡が複数出土しているとのことなのです。これまで発見された難波京条坊は1尺29.49cmで造営されており、それは藤原京条坊の使用尺(1尺29.5cm。モノサシが出土)に近いものでした。ところが、難波京西北部地区は1尺29.2cmを用いて造営されているとのことなのです。
 わたしはこの1尺29.2cmという尺に驚きました。これは前期難波宮の造営尺と同じだからです。以前に論じましたが(注④)、前期難波宮と同条坊の造営尺が異なっていることは不思議な現象だったのですが、その前期難波宮と同じ尺が西北部地区の条坊造営に使用されていることは、前期難波宮九州王朝複都説と密接に関係する現象ではないでしょうか。
 というのも、同地区には古墳時代からの遺構があり、全国的に見ても、福岡市の比恵那珂遺跡とともに古墳時代最大の都市であり(注⑤)、おそらく古墳時代(倭の五王時代)の九州王朝の港運拠点である難波津かそれと関係した地域と思われます。その条坊造営尺が九州王朝の宮殿である前期難波宮と同じということは重要です。この問題についてこれから深く考察したいと思います。ご紹介いただいた久冨さんに改めて御礼申し上げます。

(注)
①『大阪歴史博物館 研究紀要』第19号、令和3年(2021)3月。
②佐藤隆「難波と飛鳥、ふたつの都は土器からどう見えるか」『大阪歴史博物館 研究紀要』第15号、平成29年(2017)3月。
③古賀達也「洛中洛外日記」1407話(2017/05/28)〝前期難波宮の考古学と『日本書紀』の不一致〟
 古賀達也「前期難波宮の考古学 飛鳥編年と難波編年の比較検証」『東京古田会ニュース』No.175、2017年8月。
 古賀達也「難波の須恵器編年と前期難波宮 ―異見の歓迎は学問の原点―」『東京古田会ニュース』185号、2019年4月。
 古賀達也「『日本書紀』への挑戦《大阪歴博編》」『古田史学会報』153号、2019年8月。
④古賀達也「都城造営尺の論理と編年 ―二つの難波京造営尺―」『古田史学会報』158号、2020年6月。
⑤古賀達也「難波の都市化と九州王朝」『古田史学会報』155号、2019年12月。


第2521話 2021/07/17

古田史学の「部民制」研究

 本日は久しぶりに大阪市に戻り、福島区民センターで「古田史学の会」関西例会が開催されました。8月と9月例会はi-siteなんば(参加費1,000円)で開催します。
 リモートテストには、西村秀己さん(司会担当・高松市)、正木裕さん(古田史学の会・事務局長、川西市)、冨川ケイ子さん(古田史学の会・全国世話人、相模原市)、谷本茂さん(神戸市)、樋口憲司さん(枚方市)らが参加されました。
 今回の例会では日野智貴さんが部民制について古田説を紹介し、古田史学の視点から考察されたのが印象的でした。通説では大和朝廷による民衆支配の制度と説明される部民制ですが、古田先生は天孫降臨以前に部民制の根源が成立していたとされ、例えば出雲風土記に見える「伴」「部」などを検証されています。以来、古田学派では部民制を本格的に取り上げた研究者はいなかったように思います。その意味では、日野さんが正面から部民制に対する通説を批判されたことは、初歩的ではあれ画期的なことではないでしょうか。
 もう一つ、わたしが注目したのが服部静尚さんの大宰府遺構の成立時期に関する考察でした。主に須恵器による飛鳥編年と九州編年をリンクされ、大宰府政庁や条坊、水城、大野城などの造営年代を整理・考察されたもので、今後の太宰府遺構編年の基本研究の一つとなりそうです。その結論として、飛鳥と北部九州の須恵器編年は概ね一致していること、考古学者(山村信栄氏)による大宰府遺構の土器編年に基づく造営年代が、『日本書紀』に基づいた通説と異なっていることを指摘され、大宰府遺構編年は土器編年に従うべきとされました。重要な指摘が含まれた発表でしたので、わたしも検証したいと思います。
 なお、発表者はレジュメを30部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔7月度関西例会の内容〕
①「自竹斯国以東」の証明 ―川村明説の批判―(姫路市・野田利郎)
②中臣鎌足と百済王豊璋の同一人物説(大山崎町・大原重雄)
③遺蹟・遺物が示す九州王朝の初期王都の中心領域の変遷(川西市・正木 裕)
④遣隋使と遣唐使の違いに関する一考察(茨木市・満田正賢)
⑤「部民制」はあったのか(たつの市・日野智貴)
⑥貼られた文節「白雉二年是歳条」(東大阪市・萩野秀公)
⑦主に土器から見た大宰府成立時期の考察(八尾市・服部静尚)

◎リモートによる会務報告(正木事務局長)
1.4月以降の新会員の紹介
2.会費納入状況
3.各地の講演会開催の報告
4.開催予定の講演会
5.関西例会の予定
6.会報・会誌の状況報告、他

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(「三密」回避に大部屋使用の場合は1,000円)
08/21(土) 10:00~17:00 会場:i-siteなんば
09/18(土) 10:00~17:00 会場:i-siteなんば
 ※コロナによる会場使用規制のため、緊急変更もあります。最新の情報をホームページでご確認下さい。

《関西各講演会・研究会のご案内》
 ※コロナ対応のため、緊急変更もあります。最新の情報をご確認下さい。

◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 07/22(木・祝) 13:30~16:30
「考古学から見た邪馬台国 ―畿内ではありえぬ邪馬台国―」 講師:関川尚巧さん(元橿原考古学研究所員)
「考古学から見た邪馬壹国 ―徹底検証九州説―」 講師:谷本 茂さん(古田史学の会・会員)

◆「市民古代史の会・東大阪」講演会 会場:東大阪市 布施駅前市民プラザ(5F多目的ホール) 資料代500円
 07/24(土) 14:00~16:30 「邪馬壹国と卑弥呼の世界」 講師:服部静尚さん

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 07/27(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館
 「古代瓦の変遷と飛鳥寺院」 講師:服部静尚さん(古田史学の会・会員)

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 《未定》

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中集会室)
 《未定》


第2509話 2021/07/03

『多元』No.164の紹介

 昨日、友好団体「多元的古代研究会」の会紙『多元』No.164が届きました。拙稿「太宰府、「倭の五王」王都説の検証 ―大宰府政庁編年と都督の多元性―」を掲載していただきました。本年11月に、「倭の五王」をテーマとして開催される〝八王子セミナー〟に先だって、王都の所在に関する検討課題(考古学的事実の評価)明確化の一助として拙稿を執筆しました。セミナーにおいて研究や理解を深めることができれば幸いです。
 他には、野田利郎さん(古田史学の会・会員、姫路市)の「『隋書』の俀と倭」、服部静尚さん(古田史学の会・会員、八尾市)の「国生み神話の再検証」が掲載されており、関西の研究者の活躍が目立ちました。
 一面は、仙台市の広幡文さんの「万葉集を楽しむ 下」で、〝淡海は海か湖か〟という懐かしいテーマが論じられており、興味深く拝読しました。通説では琵琶湖のこととされている『万葉集』に見える淡海について、琵琶湖ではなく海であるとする説は木村賢司さんが「夕波千鳥」(『古田史学会報』38号、2000年6月)で既に発表されていますが、広幡さんも『万葉集』の史料批判により、湖ではないとされました。複数の視点や論証方法により、同じ結論へと到達したわけですから、淡海≠湖(琵琶湖)説は更に有力となったようです。


第2498話 2021/06/21

『古代に真実を求めて』25集の原稿募集

 過日の「古田史学の会」会員総会でも紹介しましたように、『古代に真実を求めて』編集長が服部静尚さんから大原重雄さんに交替となりました。服部さんには7年間にわたり、「古田史学の会」発行書籍の編集責任者を担当していただき、後世に残る優れた書籍を発行していただきました。本稿末尾にその一覧を掲載しています。まだお持ちでない方は、ぜひ書店・アマゾンにてご注文ください。出版不況が続いており、本会発行書籍の販売部数も伸び悩んでいます。皆様のご支援をお願いいたします。
 新編集長の大原さんには、既にリモート編集会議を主宰していただき、来春発行予定の『古代に真実を求めて』25集の企画検討を進めています。25集への投稿を下記の通り募集します。会員の皆様のご投稿をお待ちしています。

□古田史学論集 第25集『古代に真実を求めて』原稿募集

1.特集テーマは「古代史の争点」として、邪馬壹国・倭の五王の時代・聖徳太子・大化改新を扱います。
 ○一般論文 1万5千字以内  ○コラム 2千字程度
2.原稿は、PDFではなく、WORDファイルを添付してメール送信してください。
3.採否は編集部にお任せください。
4.締め切り 2021年9月末
5.宛先 大原重雄さん hidetya@kyoto.zaq.ne.jp

□服部静尚さんが編集された「古田史学の会」書籍一覧

『古代に真実を求めて』明石書店
18集 盗まれた「聖徳太子」伝承 (2015年)
19集 追悼特集 古田武彦は死なず (2016年)
20集 失われた倭国年号《大和朝廷以前》 (2017年)
21集 発見された倭京 ―太宰府都城と官道― (2018年)
22集 倭国古伝 ―姫と英雄(ヒーロー)と神々の古代史― (2019年)
23集 「古事記」「日本書紀」千三百年の孤独 ―消えた古代王朝― (2020年)
24集 俾弥呼と邪馬壹国 ―古田武彦『「邪馬台国」はなかった』発刊50周年― (2021年)

『邪馬壹国の歴史学 ―「邪馬台国」論争を超えて―』ミネルヴァ書房(2016年)


第2496話 2021/06/19

関西例会、古代史講演会、会員総会を開催

 本日、先月に続いて奈良新聞社本社ビルで「古田史学の会」関西例会が開催されました。午後は元橿原考古学研究所員の関川尚巧(せきがわ・ひさよし)さんをお招きして、恒例の古代史講演会(共催)と「古田史学の会」会員総会を開催しました。7月例会は福島区民センター(参加費500円)で開催します。
 リモートテストには、西村秀己さん(司会担当・高松市)、冨川ケイ子さん(古田史学の会・全国世話人、相模原市)、野田利郎さん(古田史学の会・会員、姫路市)、別役政光(古田史学の会・会員、高知市)らが参加されました。
 今回、最も注目されたのが、服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集長)の発表でした。薬師寺東塔擦銘は後代(11世紀)に追刻されたとする町田甲一説などを紹介され、同擦銘の分析により、藤原京にあった本(もと)薬師寺は九州王朝の中宮天皇らによる寺であったとする仮説です。質疑応答の中で、同仮説が更に展開され、飛鳥における「天皇」「皇子」木簡なども九州王朝のものとする見解が示されました。わたしとしては賛成することに躊躇する内容でしたが、根拠や論理性が明確な鋭い仮説で、従来の服部説をより徹底した見解でもあることから、論文発表を要請しました。
 なお、発表者はレジュメを30部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

 コロナ禍と雨天にもかかわらず、古代史講演会には50名のご参加があり、盛況でした。その後、講師の関川先生を囲んで、古代史談義に花が咲きました。
 会員総会では、事業報告・予算・決算・会計監査報告・人事など全てが滞りなく承認されました。また、『古代に真実を求めて』編集長を7年間勤められた服部さんに替わり、大原重雄さんが就任されました。ご出席いただいた皆さん、ありがとうございました。詳細は『古田史学会報』次号にて報告されます。

〔6月度関西例会の内容〕
①共存はしていない倭王武と武寧王(大山崎町・大原重雄)
②本薬師寺は九州王朝の寺(八尾市・服部静尚)
③「驛」記事についてのまとめ(東大阪市・萩野秀公)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円(「三密」回避に大部屋使用の場合は1,000円)
07/17(土) 10:00~17:00 会場:福島区民センター
 ※コロナによる会場使用規制のため、緊急変更もあります。最新の情報をホームページでご確認下さい。

《関西各講演会・研究会のご案内》
 ※コロナ対応のため、緊急変更もあります。最新の情報をご確認下さい。

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 06/22(火) 10:00~12:00 会場:奈良新聞社本社西館3階
 「伊勢王④」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)

◆「市民古代史の会・東大阪」講演会 会場:東大阪市 布施駅前市民プラザ(5F多目的ホール) 資料代500円
 06/26(土) 14:00~16:30 「天孫降臨と神武東征 ―神話と歴史―」 講師:服部静尚さん
 07/24(土) 14:00~16:30 「邪馬壹国と卑弥呼の世界」 講師:服部静尚さん

◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 07/22(木・祝) 13:30~16:30
「考古学から見た邪馬台国 ―畿内ではありえぬ邪馬台国―」 講師:関川尚巧さん(元橿原考古学研究所員)
「考古学から見た邪馬壹国 ―博多湾岸説―」 講師:正木 裕さん(古田史学の会・事務局長)

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 《未定》

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中集会室)
 《未定》


第2490話 2021/06/14

『古田史学会報』164号の紹介

 先週、『古田史学会報』164号が発行されましたので紹介します。一面に掲載された服部稿は、わが国おける仏教や仏典受容に関する考察で、古田学派における同分野での先駆的な研究の一つです。古田史学での仏典受容史研究については、古田先生が『失われた九州王朝』(第三章 高句麗王碑と倭国の展開 「阿蘇山と如意宝珠」)で触れられたのが最初です。そこでの示唆を受けて、わたしも論稿(注)を発表したことがあります。
 今回の服部稿は、九州王朝の時代において、女性が法華経と無量寿経(阿弥陀信仰)をどのような経緯で受け入れたのか(支持したのか)という従来にない新たな視点で論じられたもので、注目されます。女性の仏教信仰や関連仏典に関しては、「女人成仏」をテーマとした多くの論考が宗教関連学界で発表されていますが、多元史観・九州王朝説に基づく研究はまだ少なく、過去には古田先生が講演会で、「トマスの福音書(ナグ・ハマディ文書)」研究に関わって触れられたことがあり、今井俊圀さん(古田史学の会・全国世話人、千歳市)により、「『トマスによる福音書』と『大乗仏典』 古田先生の批判に答えて」(『古田史学会報』74号、2006年6月)が発表されたことがある程度です。今後の後継研究の登場が待たれます。

 164号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。

【『古田史学会報』164号の内容】
○女帝と法華経と無量寿経 八尾市 服部静尚
○会員総会と古代史講演会のお知らせ
○九州王朝の天子の系列(中) 川西市 正木 裕
 利歌彌多弗利から、「伊勢王」へ
○何故「俀国」なのか 京都市 岡下英男
○斉明天皇と「狂心の渠」 今治市 白石恭子
○飛鳥から国が始まったのか 八尾市 服部静尚
○「壹」から始める古田史学・三十
 多利思北孤の時代Ⅶ ―多利思北孤の新羅征服戦はなかった― 古田史学の会・事務局長 正木 裕
○『古田史学会報』原稿募集
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○編集後記 西村秀己

(注)古賀達也「九州王朝仏教史の研究 ―経典受容記事の史料批判」『「九州年号」の研究』ミネルヴァ書房、2012年。


第2463話 2021/05/15

関西例会、奈良市で初開催!

 本日、奈良新聞社本社ビルで「古田史学の会」関西例会が開催されました。大阪府での緊急事態宣言が延長され、予定していたドーンセンターが使用できなくなったためで、奈良市での関西例会開催は初めてのことです。会場を提供していただいた奈良新聞社に感謝しています。
 6月は福島区民センター(参加費1,000円)で開催します。午後は恒例の古代史講演会(共催)を開催、その後、「古田史学の会」会員総会を予定しています。しかしながら、コロナ禍により変更・中止の可能性もありますので、ホームページの告知欄をご確認下さい。
 今回のリモートテストには、西村秀己さん(司会担当・高松市)、杉本三郎さん(古田史学の会・会計監査、伊丹市)、冨川ケイ子さん(古田史学の会・全国世話人、相模原市)、野田利郎さん(古田史学の会・会員、姫路市)、別役政光(古田史学の会・会員、高知市)、谷本茂さん(古田史学の会・会員、神戸市)ら10名が参加されました。
 今回の発表では、正木さんの天武紀の史料批判と『海東諸国紀』の九州年号記事との比較検証は圧巻でした。その主たる仮説は、九州王朝による常色年間(647~651)の改革記事が『日本書紀』天武10年から14年の五年間に見える大改革記事へと移動させられているというものです。この九州王朝による「常色の改革」は『日本書紀』に見える「大化の改新」に匹敵するとして、『日本書紀』の造作過程を推定されました。
 中でも、『海東諸国紀』中の九州年号記事がこの正木仮説に整合していることを明らかにされたことに驚きました。『日本書紀』が転用した九州王朝記事と『海東諸国紀』の九州年号記事が、同系列の九州王朝系史料に基づいていることをも推定させ得る仮説でした。正木さんが提唱されてきた『日本書紀』の〝34年遡り現象〟が前提にある仮説ですが、この方法論の有効性を改めて認識できた研究でした。論文発表が待たれます。
 なお、発表者はレジュメを30部作成されるようお願いします。発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。

〔5月度関西例会の内容〕
①天武紀の大改革記事の虚構(川西市・正木 裕)
②リンクする倭の五王と百済王の謎(大山崎町・大原重雄)
③近畿に残る金石文に関する考察(茨木市・満田正賢)
④国生み神話の再検証(八尾市・服部静尚)
⑤天孫降臨についての考察(奈良市・原幸子)

◎「古田史学の会」関西例会(第三土曜日)

参加費1,000円(「三密」回避に大部屋使用の場合)
06/19(土) 10:00~12:00 会場:福島区民センターより会場変更

会場変更 奈良新聞本社西館3階

〒630-8001 奈良県奈良市 法華寺町2番地4
   ※午後は古代史講演会と会員総会を開催します。
   ※コロナによる会場使用規制のため、緊急変更もあります。最新の情報をホームページでご確認下さい。

◎古代史講演会《共催》 参加費:無料
 共催:古代大和史研究会、誰も知らなかった古代史の会、市民古代史の会・東大阪、市民古代史の会・京都、和泉史談会、古田史学の会
06/19(土) 13:00~16:00 会場:福島区民センターより会場変更

会場変更 奈良新聞本社西館3階

〒630-8001 奈良県奈良市 法華寺町2番地

「考古学から見た邪馬台国 ―畿内ではありえぬ邪馬台国―」 講師:関川尚功さん
 「考古学から見た邪馬壹国 ―博多湾岸説―(仮題)」 講師:正木 裕さん
 ※講演会終了後に「古田史学の会」会員総会を開催します。会員の皆さんのご参加をお願いします。

《関西各講演会・研究会のご案内》
 ※コロナ対応のため、緊急変更もあります。最新の情報をご確認下さい。

◆「古代大和史研究会」講演会(原 幸子代表) 参加費500円
 05/17(月) 13:00~17:00 会場:壽光寺コンサートホール(大阪市西成区)
 「聖徳太子と仏教」 講師:服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集長)
 「能楽の淵源と筑紫の舞楽」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)
 05/25(火) 10:00~12:00 会場:奈良県立図書情報館 交流ホールBC室
 「伊勢王③」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)
 06/22(火) 10:00~12:00 会場:奈良新聞社本社西館3階
 「伊勢王④」 講師:正木 裕さん(大阪府立大学講師)

◆誰も知らなかった古代史の会 会場:福島区民センター 参加費500円
 05/21(金) 中止

◆「市民古代史の会・東大阪」講演会 会場:東大阪市 布施駅前市民プラザ(5F多目的ホール) 資料代500円
 06/26(土) 14:00~16:30 「天孫降臨と神武東征 ―神話と歴史―」 講師:服部静尚さん
 07/24(土) 14:00~16:30 「邪馬壹国と卑弥呼の世界」 講師:服部静尚さん

◆「市民古代史の会・京都」講演会 会場:キャンパスプラザ京都 参加費500円
 《未定》

◆「和泉史談会」講演会 会場:和泉市コミュニティーセンター(中集会室)
 《未定》


第2453話 2021/05/08

緊急告知 5月度「関西例会」会場を変更します

 大阪府の非常事態宣言が延長され、5月15日(土)に予定していた「古田史学の会」関西例会々場(ドーンセンター)の使用ができなくなりました。そこで、急遽、会場を奈良新聞本社ビルに変更することにしました。関西例会としては初めて使用する会場で、ご迷惑をおかけしますが、ご理解の程、お願い申し上げます。

 なお、6月19日(土)に福島区民センターで開催予定の「古田史学の会」会員総会、古代史講演会(共催)、午前中の関西例会については実施する方針ですが、緊急事態宣言の動向によっては変更・中止する可能性があります。ホームページなどでご確認いただきますよう、重ねてお願い申し上げます。

【五月度関西例会の会場】
日時 5月15(土) 10:00~17:00
会場 奈良新聞本社ビル3階セミナールーム (奈良市法華寺町2-4)
   最寄り駅:近鉄奈良線・新大宮駅 駅から北方向へ徒歩11分。
参加費 1,000円 「三密」回避による、大会場使用のため。

※主催は「古田史学の会」です。ご迷惑をおかけしますので、奈良新聞社様へのお問い合わせはご遠慮下さい。


第2447話 2021/05/03

『多元』No.163の紹介

 先日、友好団体「多元的古代研究会」の会紙『多元』No.163が届きました。一面は、服部静尚さん(『古代に真実を求めて』編集長)の論稿「禅位と傳位についての考察」です。『日本書紀』の孝徳紀と持統紀に見える「禅位」が同一王朝内での生前譲位であり、中国古典の禅位(禅譲による王朝交代での新皇帝への譲位)とは異なることに着眼した論稿です。新しい視点で、持統紀の「禅位」を九州王朝からの王朝交替に伴う表記ではないかとする仮説を提起されたものです。今後の検証と展開が楽しみなテーマではないでしょうか。
 藤田隆一さん(足立区)の論稿「秋田孝季の直筆文書」は、和田家文書「目録覚」の全文を釈文された労作です。秋田孝季の直筆であれば、貴重な史料となりますので、厳格な筆跡鑑定が待たれます。