古田史学の会一覧

第3300話 2024/06/11

『古田史学会報』182号の紹介

 本日届いた『古田史学会報』182号を紹介します。同号には拙稿〝「天皇」銘金石文の史料批判 ―船王後墓誌の証言―〟を掲載して頂きました。

 九州王朝(倭国)と近畿天皇家(後の大和朝廷)との関係について、古田先生は、701年の王朝交替より前は、倭国の臣下筆頭の近畿天皇家が七世紀初頭頃からナンバーツーとしての「天皇」号を称していたとされていましたが、晩年には、七世紀の金石文などに見える「天皇」はすべて九州王朝の天子の別称であり、近畿天皇家が天皇を称するのは王朝交代後の文武(701年)からとする新説を発表されました。

 本稿において、わたしは古田旧説を支持しており、その根拠として船王後墓誌(国宝)に見える三名の天皇は、通説通り敏達天皇・推古天皇・舒明天皇でよいとし、古田新説は論証が成立していないとしました。

 一面に掲載された日野稿は、近畿天皇家皇族の呼称「皇弟・皇子・皇女」の実体や淵源について、『記紀』表記例を比較して論じたものです。更には天皇号の成立を天武からとする通説を批判し、船王後墓誌などを根拠に、敏達や用明は天皇を称していたとし、天智の不改常典に至り天皇号が世襲されるようになったとする仮説を発表しました。今後の論争や検証が待たれますが、とても興味深い論稿でした。

 なお、次号回しになった採用決定稿が複数ありますが、順次掲載していきます。

 『古田史学会報』に論文を投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚)に配慮され、テーマを絞り込み簡潔でわかりやすい原稿にしてください。地域の情報紹介や面白い話題提供なども歓迎します。
長文の論文は『古代に真実を求めて』に投稿してください。次号28集の特集テーマは「風土記・地誌の九州王朝」です。
182号に掲載された論稿は次の通りです。

【『古田史学会報』182号の内容】
○皇弟・皇子・皇女の起源 たつの市 日野智貴
○さまよえる狗奴国と伊勢遺跡の謎 吹田市 茂山憲史
○緊急投稿「不都合な真実に目をそむけたNHKスペシャル」(下) 川西市 正木 裕
○小論・藤原宮の大溝SD1901A仮設運河説を考える 杉並区 新庄宗昭
○土佐国香長条里七世紀成立の可能性 高知市 別役政光
○「天皇」銘金石文の史料批判 ―船王後墓誌の証言―
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○会員総会・記念講演会のお知らせ
○「会員募集」ご協力のお願い
○『古田史学会報』原稿募集
○編集後記 西村秀己


第3294話 2024/05/31

「古田史学の会」メール配信事業

          のお知らせ

「古田史学の会」の会員の皆さん、なかでもお会いする機会が少ない遠方の会員さんとの交流の場を作れないものかと考えてきました。そこで、インターネットのメール機能を利用して、「古田史学の会」や古田史学に関する情報発信と広報事業を新たに立ち上げます。幸いにも会費送金時の振込用紙にメルアドを書いていただいている会員さんが少なからずおられますので、エリアを限定してメール広報事業立ち上げの案内をテスト配信させていただきました。徐々に配信エリアを拡大します。
今回、関東エリアと九州エリアの会員と会友の皆さんにテスト配信したところ、好意的なご返信が届いています。他方、アドレスが間違っているためか、配信不可のメッセージが帰ってくるケースもあります。そこで、「洛中洛外日記」や『古田史学会報』で同事業をご案内することにしました。メール配信を希望される会員の方は、古賀か本会インターネット事務局まで、メールにてご一報いただきますようお願いいたします。
メール機能を使って、双方向の情報交換も進めたいと願っています。連日、各地からメールが届いていますので、返信が遅れたり、内容によっては回答できないことがあるかもしれません。その場合は、ご容赦ください。「古田史学の会」のメール配信事業にご理解とご協力をお願い申し上げます。


第3287話 2024/05/19

真実に目をそむけた

  NHKスペシャル古代史ミステリー

 昨日、 「古田史学の会」関西例会が豊中自治会館で開催されました。次回、6月例会々場はその翌日(6/16)に開催される会員総会と同じドーンセンターです。

 正木さんは、NHKスペシャル古代史ミステリーで放送された「倭の五王」を大和朝廷とする番組の内容に対して、根拠をあげて批判しました。「邪馬台国」の卑弥呼をテーマにした同シリーズの前作も酷い内容でしたが、それを上回る非学問的な内容であることがよく理解できました。たとえば、大和朝廷により規格統一されたと紹介した鉄製甲冑の全てが九州出土のものであり、番組ではこの事実を説明していません。
この他に、朝鮮半島南西部の栄山江流域の前方後円墳についても詳述され、出土遺物についても北部九州出土品とよく似ていることがよくわかりました。ちなみに、栄山江流域に任那があったとする研究が赤尾恭司さん(多元的古代研究会・会員)より発表されており(注)、正木さんの研究との関係が注目されます。

 5月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔5月度関西例会の内容〕
①推古紀の編者は隋書を参考にしたか? (茨木市・満田正賢)
②なぜ、『隋書』は「裴世」と書いたのか ―推古紀の遣唐使の疑問― (姫路市・野田利郎)
③百済王の孫が持参した七支刀 (大山崎町・大原重雄)
④神武東征の嘘 (大阪市・西井健一郎)
⑤古代の「領地替え」の痕跡 (東大阪市・萩野秀公)
⑥百済西南部の古墳から考える「倭の五王」 不都合な真実に目をそむけたNHKスペシャル古代史ミステリー (川西市・正木 裕)

◎古賀から役員会の報告
(1) 7/28(日)「倭国から日本国へ」出版記念東京講演会〔文京区民センター〕
(2) 八王子セミナー要旨案の紹介
(3)『古代に真実を求めて』リモート読書会の設立について

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
6/15(土) 会場:ドーンセンター
□会員総会・記念講演会(27集出版記念)の日程と講師
日時 6月16日(日) 午後1時30分開会 会場:ドーンセンター 参加費:無料
《講師・演題》
谷本 茂氏(古田史学の会・会員、『古代に真実を求めて』編集部)
〔演題〕誤解され続けた『新唐書』日本伝 ―倭国と日本国の併合関係の「逆転」をめぐって―
正木 裕氏(古田史学の会・事務局長、『古代に真実を求めて』編集部)
〔演題〕百済領域の遺跡から見える倭国(九州王朝)の半島進出
※前日(6月15日)の関西例会もドーンセンターで開催します。

□「倭国から日本国へ」出版記念東京講演会
日時 7月28(日) 13:30 開会 16:30 終了
会場 文京区民センター
参加費 1000円
《講師・演題》
古賀達也(古田史学の会・代表)   多元的「天皇」号の成立 ―九州王朝の天子と諸国の天皇たち―
正木 裕(古田史学の会・事務局長) 「王朝交代」と二人の女王 ―武則天と持統―
主催 古田史学の会 協力 東京古田会 多元的古代研究会

(注)5月11日の「古田史学リモート勉強会」(古賀主宰)で赤尾氏は「栄山江流域=任那説」を発表した。3月9日には正木氏により「九州勢力の半島進出し撤退」が同勉強会で発表されており、当該テーマは関心が示されてきた。

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古田史学の会 豊中自治会館 2024.5.18

2024年5月度関西例会発表一覧
(YouTube動画)

1,推古紀の編者は隋書を参考にしたか? (茨木市・満田正賢)
https://youtu.be/e_hAs0QoUJc

2,なぜ、『隋書』は「裴世」と書いたのか ―推古紀の遣唐使の疑問―
(姫路市・野田利郎)
   ①https://youtu.be/u_-hPQ5KAyg

3,百済王の孫が持参した七支刀 (大山崎町・大原重雄)
   ①https://youtu.be/Nc2K7h7rXRs

4,神武東征の嘘 (大阪市・西井健一郎)
   ①https://youtu.be/kBwBw552Paw

5,古代の「領地替え」の痕跡 (東大阪市・萩野秀公)

   ①https://youtu.be/Wu7bD9n-PsU

6,百済西南部の古墳から考える
— 「倭の五王」 不都合な真実に目をそむけたNHKスペシャル古代史ミステリー
(川西市・正木 裕)
   ①https://youtu.be/EmHKt8pnUes

関連YouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=IxWsjqn1wS4
九州勢力の半島進出と撤退 — 百済西南部の古墳から考える 正木裕
市民古代史の会・京都2024年3月30日 INキャンパスプラザ京都


第3281話 2024/05/06

『多元』181号の紹介

 友好団体の多元的古代研究会機関紙『多元』181号が届きました。同号には拙稿〝九州王朝の両京制を論ず(三) ―「西都」太宰府倭京と「東都」難波京―〟を掲載していただきました。同稿では、前期難波宮九州王朝複都説の研究経緯と、七世紀の九州王朝(倭国)が採用した両京制について論じました。
一面に掲載された新庄宗昭さんの〝「遺跡・飛鳥浄御原宮跡」異聞〟は、飛鳥浄御原遺跡の外形(平面図)が直角ではなく、台形であることに注目した論稿です。この飛鳥宮第Ⅲ期の遺構を「遺構事実として内裏の施設だけが点在したことは、規模からして王宮ではあり、王族の私的居住空間であることは間違いはない。」とされ、律令宮殿である飛鳥浄御原宮ではないと結論されました。考古学報告書に基づいた論稿であり、やや難解な解説が続きますが、天武期の近畿天皇家の実体について、考古学の視点から論じたもので、是非は別としても貴重な研究と思われました。

 同テーマについては拙稿「飛鳥「京」と出土木簡の齟齬 ―戦後実証史学と九州王朝説―」(注)で論じましたが、飛鳥宮や藤原京についての考古学研究が古田学派でも盛んになることを願っています。

 同号には、「倭国から日本国」(『古代に真実を求めて』27集)の紹介記事も掲載していただきました。

(注)古賀達也「飛鳥「京」と出土木簡の齟齬 ―戦後実証史学と九州王朝説―」『倭国から日本国へ』(『古代に真実を求めて』27集)明石書店、2024年。


第3275話 2024/04/22

『九州倭国通信』214号の紹介

 友好団体「九州古代史の会」の会報『九州倭国通信』No.214号が届きましたので、紹介します。同号には拙稿「筑前地誌で探る卑弥呼の墓」を掲載していただきました。古田先生は卑弥呼の墓の有力候補地として、弥生遺跡として著名な須玖岡本遺跡(福岡県春日市須玖岡本)の山上にある熊野神社社殿下とされました(注①)。拙論では、この古田説を補強すべく、『筑前国続風土記拾遺』(注②)に見える次の記事を紹介しました。

 「熊野権現社
岡本に在。枝郷岡本 野添 新村等の産神也。
○村の東岡本の近所にバンシヤクテンといふ所より、天明の比百姓幸作と云者畑を穿て銅矛壱本掘出せり。長二尺余、其形は早良郷小戸、また當郡住吉社の蔵にある物と同物なり。又其側皇后峰といふ山にて寛政のころ百姓和作といふもの矛を鋳る型の石を掘出せり。先年當郡井尻村の大塚といふ所より出たる物と同しきなり。矛ハ熊野村に蔵置しか近年盗人取りて失たり。此皇后峯ハ神后の御古跡のよし村老いひ傅ふれとも詳なることを知るものなし。いかなるをりにかかゝる物のこゝに埋りありしか。」『筑前国続風土記拾遺』上巻、三二〇~三二一頁。

 ここに記された皇后峯の山頂が現・熊野神社に当たり、卑弥呼のことが神功皇后伝承として伝えられているとしました。
同号冒頭には大宰府蔵司遺跡の写真が掲載されており、本年二月十七日に開催された発掘調査報告会(九州歴史資料館主催)について、工藤常泰さん(九州古代史の会・会長)より詳細な報告がなされており、勉強になりました。なかでも、蔵司地区から出土した大型建物(479.7㎡)が政庁正殿よりも巨大で、大宰府官衙群中最大です。その用途として、「大宰府財政を束ねた中枢施設」や「外国の使節をもてなした饗応施設」とする諸説が出されているとのことです。九州王朝説に立った場合、どのような仮説が成立するのか楽しみなテーマです。

(注)
①古田武彦「邪馬壹国の原点」『よみがえる卑弥呼』駸々堂、一九八七年。
②広渡正利校訂・青柳種信著『筑前国続風土記拾遺 上巻』文献出版、平成五年(一九九三年)。


第3273話 2024/04/20

関西例会で九州王朝バス旅行の報告

 本日、 「古田史学の会」関西例会が豊中自治会館で開催されました。次回、5月例会の会場も豊中自治会館です。関東からは冨川ケイ子さん(古田史学の会・全国世話人)が先月に続いて参加されました。

 今回の発表でわたしが注目したのが、大原さんの『古事記』仲哀記押熊王の叛乱記事に見える海戦「赴喪船将攻空船」の新解釈でした。従来説では「喪船に向かってその空船を攻めた」と訓み、喪船と空船が同一のものか別物かで意見が分かれていました。大原説では、空船とは喪船を曳航する動力船であり、喪船はバージ船(通常の船では運搬しにくいものを運ぶための特殊な形状を持つ船)とされました。即ち二艘でワンセットとする理解です。こうした二艘の船がエジプトのピラミッドの側からも出土しているとのことで、面白い仮説でした。

 正木さんの九州王朝バス旅行(4/16~18)の報告も楽しいものでした。福岡市博物館・香椎宮・志賀海神社・宇美八幡宮・宗像大社・王塚古墳(桂川町)・鞍橋神社・宇佐神宮・苅田町歴史資料館など、北部九州を代表する九州王朝の神社を見学するというもので、装飾壁画古墳の復元展示なども見事なものでした。

 わたしからは、リクエストにより過日の高橋工さんの前期難波宮最新調査報告の紹介をさせていただきました。このテーマについては「洛中洛外日記」で詳述する予定です。

 4月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔4月度関西例会の内容〕
①天孫降臨とウガヤ命・後編 (大阪市・西井健一郎)
②裴世清の昇進問題 (茨木市・満田正賢)
③神功皇后の喪船と空船による策略の謎 (大山崎町・大原重雄)
④喪船の形状ときぬがさ型埴輪の関係 (大山崎町・大原重雄)
⑤『旧唐書』が語る日本(二本)の歴史 (東大阪市・萩野秀公)
⑥「九州王朝バスの旅3」報告 (川西市・正木 裕)
⑦最近のヤマト説と九州説の攻防 (川西市・正木 裕)

◎古賀から役員会の報告
・4月遺跡巡りでの高橋工氏の講演報告

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
05/18(土) 会場:豊中自治会館

□会員総会・記念講演会(27集出版記念)の日程と講師
6月16日(日)午後 会場:ドーンセンター 参加費:無料
《講演会講師・演題》
谷本 茂氏(古田史学の会・会員、『古代に真実を求めて』編集部)
〔演題〕誤解され続けた『新唐書』日本伝 ―倭国と日本国の併合関係の「逆転」をめぐって―
正木 裕氏(古田史学の会・事務局長、『古代に真実を求めて』編集部)
〔演題〕百済領域の遺跡から見える倭国(九州王朝)の半島進出
※前日(6月15日)の関西例会もドーンセンターで開催します。


第3271話 2024/04/16

『古田史学会報』181号の紹介

本日届いた『古田史学会報』181号を紹介します。同号には拙稿〝『朝倉村誌』(愛媛県)の「天皇」地名〟と〝「倭国から日本国へ」発刊のお知らせ〟を掲載して頂きました。前者では、愛媛県東部に濃密分布する「天皇」地名や伝承の歴史的背景に、当地の有力氏族越智氏が九州王朝より天皇号を許されたことがあったのではないかとするものです。後者は「倭国から日本国へ」の紹介と、『古代に真実を求めて』の投稿規定などを転載しました。

同号一面の正木稿は、過日報道されたNHKスペシャル古代史ミステリーの報道姿勢と番組内容を鋭く批判したものです。わたしも同番組を見ましたが、それは酷い偏向番組で、放送法に定められた公平の原則を完全に無視した内容でした。正木稿でも指摘されていますが、〝「ヤマト説の解説」ですらなく「邪馬台国はヤマト、倭の五王はヤマトの大王」を自明〟とした番組でした。

同番組は明らかに意図的な「情報操作」がなされていました。それは箸墓古墳の炭素同位体年代測定値による造営年代を三世紀前半とする解説場面の右下に、その根拠とした論文名が小さな字で記されていました。それを見て、現在では不正確とされている測定値を採用していたことがわかりました。念のために録画で確認しましたが間違いありませんでした。それは次の説明文です。

国立歴史民俗博物館研究報告2011
「古墳出現期の炭素14年代測定」

この2011年の報告書は、炭素14年代測定値の補正(較正)に国際補正値intCAL09を採用しています。専門的になりますので結論のみ言いますと、この国際補正値は数年毎に見直されており、近年では2009年、2013年、そして直近では2020年に見直されています。日本で開発されたJ-CALの補正データを採用した2020年のintCAL20は特に優れており、現在の世界標準になりました。その結果、弥生時代ではintCAL09による補正値が百年ほど古く誤っていたことが明らかとなりました(注①)。

したがって、歴史民俗博物館研究報告2011「古墳出現期の炭素14年代測定」は、intCAL09による補正で箸墓古墳の築造年代を240年頃としたのですが、現在(intCAL20補正)では不正確な数値として批判され、従来の考古学編年通り300350年頃とする炭素年代測定値が最有力とされています。このことは日本の考古学者であれば知らないはずがありません。元橿原考古学研究所の考古学者、関川尚功さんも同様のことを言っておられました(注②)。

NHKの当番組では考古学者の福永伸哉氏(大阪大学大学院教授・考古学)も出ていましたから、NHKの番組作成者がこのintCAL09とintCAL20の精度差を知っていて、後で視聴者から批判されても言い逃れができるように、申しわけ程度に小さな字で画面右下に出典論文名を数秒間提示したと考えざるを得ません。本当に悪質な報道姿勢と番組でした。

ちなみに、放送法第4条には次の条文があります。

(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

NHKは放送法違反の報道や番組をこれまでも放送してきました。和田家文書偽作キャンペーンのときもそうでした。古田先生と安本美典氏の討論番組で、安本氏にVTRの使用や多くの時間配分を行うなど、明らかにアンフェアな番組を放送したのです。このときはさすがにNHK関係者からも非難の声があがりました。こうした姿勢が、現在も全く代わっていないことがよくわかる「NHKスペシャル古代史ミステリー」でした。

181号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。

【『古田史学会報』181号の内容】
○緊急投稿 不都合な真実に目をそむけたNHKスペシャル(上) 川西市 正木 裕
○倭国天皇の地位について ―西村秀己・古賀達也両氏への回答― たつの市 日野智貴
○「邪靡堆」論への谷本茂氏への疑問に答える 姫路市 野田利郎
○『朝倉村誌』(愛媛県)の「天皇」地名 京都市 古賀達也
○皇暦実年代の換算法について正木稿への疑問 たつの市 日野智貴
○大きな勘違いだった古代船「なみはや」の復元 京都府大山崎町 大原重雄
○「倭国から日本国へ」発刊のお知らせ 古田史学の会・代表 古賀達也
○会員総会・記念講演会のお知らせ
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○2024年度会費納入のお願い
○編集後記 西村秀己

(注)
①古賀達也「洛中洛外日記」2827話(2022/09/05)〝「夏商周断代工程」と水月湖の年縞〟
萩野秀公「若狭ちょい巡り紀行 年縞博物館と丹後王国」『古田史学会報』171号、2022年。
②令和三年六月十九日に開催された奈良市での講演会(古田史学の会・主催)で、関川尚功氏は、炭素14年代測定での国際補正値(IntCAL)と日本補正値(JCAL)とでは弥生時代や古墳時代では百年程の差が生じるケースがあると指摘された。
古賀達也「洛中洛外日記」2497話(2021/06/20)〝関川尚功さんとの古代史談義(1) ―炭素14年代測定の国際補正値と日本補正値―〟


第3269話 2024/04/13

『古代に真実を求めて』28集の特集は
「風土記・地誌の九州王朝」

27集「倭国から日本国へ」
特価販売のお知らせ

 今月、明石書店から出版した「倭国から日本国へ」(『古代に真実を求めて』27集)本会在庫の特価販売(消費税・送料を値引き)のご注文が届き始めました。
次号28集の特集テーマは「風土記・地誌の九州王朝」です。

 27集巻末に掲載した編集後記を転載します。

【以下、転載】『古代に真実を求めて』二七集 編集後記
本書の編集長を担当することになりました。三十代の頃から『市民の古代』(市民の古代研究会編、新泉社)の編集部で本作りにたずさわり、編集作業の経験を積んではきたのですが、自らが中心となって本を作るのは『「九州年号」の研究』(古田史学の会編、ミネルヴァ書房、二〇一二年)以来です。

 古田武彦先生亡き後、『古代に真実を求めて』は多元史観・古田史学に基づく唯一の定期刊行書籍であり、古田学派の研究者にとって貴重な発表の場となっています。そこで、将来にわたって、わたしたちの後継者が本書を編集出版できるよう、編集作業手順や原稿採用基準、投稿規定、書籍在庫販売管理台帳などの作成も併行して進めてきました。いわば、「古田史学の会」出版事業のマニュアル化とルール化です。古田史学の未来を担う後継者のために、これからも改良を加え、より使いやすくしていきます。

 本書末尾の投稿募集要項にあるよう、次の二八集の特集テーマは「風土記・地誌の九州王朝」です。風土記や地誌を研究対象として、そこに遺された九州王朝の痕跡を論じ、論文やフォーラム・コラムとして投稿してください。地誌の場合、その成立が中近世であっても、内容が古代を対象としており、適切な史料批判を経ていれば、古代史のエビデンスとして採用していただいてかまいません。字数制限など、投稿規定にはご留意ください。投稿締め切り日は本年九月末です。

 令和六年(二〇二四)、「古田史学の会」は創立三十周年を迎えることができました。本会創立の目的に賛同し、支えていただいた会員の皆様、古田史学支持者の皆様のおかげです。会則に銘記された目的、「旧来の一元通念を否定した古田武彦氏の多元史観に基づいて歴史研究を行い、もって古田史学の継承と発展、顕彰、ならびに会員相互の親睦をはかる」のなかの〝古田史学の継承と発展、顕彰〟こそが『古代に真実を求めて』の役割であり、それに耐えうる本を作ることが編集部の使命です。

 九州王朝から大和朝廷への王朝交代を特集テーマとした二七集「倭国から日本国へ」が、五十年後、百年後の読者と、図書館や古書店で出会い、今を生きるわたしたちの研究成果を伝えることができれば、望外の幸せです。〝本の寿命は人生より長い〟のですから。

【27集「倭国から日本国へ」 特価販売のお知らせ】
「古田史学の会」では「倭国から日本国へ」(『古代に真実を求めて』27集)の特価販売を実施します。下記の郵便口座に特価代金(2,800円/1冊)を振り込んでいただきますと、入金を確認次第、発送します。消費税と送料を割り引かせていただきます。なお、当会の在庫がなくなり次第、あるいは年内で特価販売は終了となりますので、その後はアマゾン・書店などでお買い求めください。

 郵便口座番号は次の通りです。「『倭国から日本国へ』○冊希望」と記入し、お名前・郵便番号・ご住所・電話番号を明記し、代金を振り込んで下さい。特別価格は2800円です。

 口座記号:01010-6
口座番号:30873
加入者名:古田史学の会

※お振り込み後、2週間以上経過しても本が届かない場合は、「古田史学の会」ホームページ事務局、または本会事務局(正木裕)までお問い合わせ下さい。

 「倭国から日本国へ」以外の在庫特価販売も行ってます。対象書籍・特価など、ホームページでお知らせします。お買い上げいただければ幸いです。


第3265話 2024/04/07

「倭国から日本国へ」の掲載論文

 「古田史学の会」の会員論集「倭国から日本国へ」(『古代に真実を求めて』27集、明石書店)が発刊されました。掲載論文を紹介します。「古田史学の会」賛助会員(2023年度、年会費5,000円)には、これから発送作業に入りますので、もうしばらくお待ちください。経費削減のため、西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、会計担当、高松市)がお一人で発送作業を行っていますので、ご了承の程お願い申し上げます。

【巻頭言】
三十年の逡巡を越えて 古田史学の会 代表 古賀達也

【特集論文】
「王朝交代」と消された和銅五年(七一二)の「九州王朝討伐戦」 正木 裕
王朝交代期の九州年号 ―「大化」「大長」の原型論― 古賀達也
難波宮は天武時代「唐の都督薩夜麻」の宮だった 正木 裕
飛鳥「京」と出土木簡の齟齬 ―戦後実証史学と九州王朝説― 古賀達也
『続日本紀』に見える王朝交代の影 服部静尚
「不改常典」の真意をめぐって ―王朝交代を指示する天智天皇の遺言だったか― 茂山憲史
「王朝交代」と二人の女王 ―武則天と持統― 正木 裕
「王朝交代」と「隼人」 ―隼人は千年王朝の主だった― 正木 裕
倭国から日本国への「国号変更」解説記事の再検討 ―新・旧『唐書』における倭と日本の併合関係の逆転をめぐって― 谷本 茂
《コラム》「百済人祢軍墓碑銘」に〝日本〟国号はなかった! 谷本 茂

【一般論文】
『隋書』の俀国と倭国は、別の存在なのか 野田利朗
『隋書』の「倭国」と「俀国」の正体 日野智貴
倭と俀の史料批判 ―『隋書』の倭國と俀國の区別と解釈をめぐって― 谷本 茂
多元的「天皇」号の成立 ―『大安寺伽藍縁起』の仲天皇と袁智天皇― 古賀達也
法隆寺薬師仏光背銘の史料批判 ―頼衍宏氏の純漢文説を承けて― 日野智貴
伊吉連博徳書の捉え方について 満田正賢
『斉明紀』の「遣唐使」についてのいくつかの疑問について 阿部周一
俾彌呼の鏡 ―北九州を中心に分布する「尚方作鏡」が下賜された― 服部静尚

【フォーラム】
海幸山幸説話 ―倭国にあった二つの王家― 服部静尚
豊臣家の滅亡から九州王朝の滅亡を考える 岡下英男

「古田史学の会」では本書の特価販売を実施します。下記の郵便口座に特価代金(2,800円/1冊)を振り込んでいただきますと、入金を確認次第、発送します。消費税と送料を割り引かせていただきます。なお、当会の在庫がなくなり次第、あるいは年内で特価販売は終了となりますので、その後はアマゾン・書店などでお買い求めください。

郵便口座番号は次の通りです。「『倭国から日本国へ』○冊希望」と記入し、お名前・郵便番号・ご住所・電話番号を明記し、代金を振り込んで下さい。特別価格は2800円です。

口座記号:01010-6
口座番号:30873
加入者名:古田史学の会

※お振り込み後、2週間以上経過しても本が届かない場合は、「古田史学の会」ホームページ事務局、または本会事務局(正木裕)までお問い合わせ下さい。


第3264話 2024/04/06

「倭国から日本国へ」発刊!

      特価販売もスタート!

 「倭国から日本国へ」(『古代に真実を求めて』27集、明石書店)が発刊されました。「古田史学の会」賛助会員(2023年度、年会費5,000円)には順次送付しますので、もうしばらくお待ちください。経費削減のため、西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、会計担当、高松市)がお一人で発送作業を行っていますので。

 同書は「古田史学の会」創立30周年を記念して、増ページしました。そのため定価が2800円+税となりましたが、これまで本会の出版事業を支えていただいた賛助会員への感謝も込めて増ページとしたものです。
表紙デザインには、特集タイトル「倭国から日本国へ」、すなわち九州王朝から大和朝廷への王朝交代の史料根拠となった『旧唐書』「日本国伝」の版本を背景に採用し、その中の一文「日本國者倭國之別種也」(日本国は倭国の別種なり)を朱色にして強調しました。裏表紙には、明石書店名編集者の森さんによる、簡潔で見事な次の紹介文が掲載されています。

 倭国から日本国への国号の変更
そこに隠されているのは
九州王朝から大和朝廷への
権力の移行にほかならない
古田史学王朝交代論の最前線

 なお、「古田史学の会」では本書の特価販売を実施します。下記の郵便口座に特価代金(2,800円/1冊)を振り込んでいただきますと、入金を確認次第、発送します。消費税と送料を割り引かせていただきます。なお、当会の在庫がなくなり次第、あるいは年内で特価販売は打ち切りますので、その後はアマゾン・書店などでお買い求めください。

 郵便口座番号は次の通りです。「『倭国から日本国へ』○冊希望」と記入し、お名前・郵便番号・ご住所・電話番号を明記し、代金を振り込んで下さい。特別価格は2800円です。

 口座記号:01010-6
口座番号:30873
加入者名:古田史学の会

※お振り込み後、2週間以上経過しても本が届かない場合は、「古田史学の会」ホームページ事務局、または本会事務局(正木裕)までお問い合わせ下さい。
「倭国から日本国へ」以外の在庫特価販売も行ってます。対象書籍・特価など、ホームページでお知らせします。お買い上げいただければ幸いです。


第3262話 2024/04/04

『東京古田会ニュース』215号の紹介

 『東京古田会ニュース』215号が届きました。拙稿「興国の津軽大津波伝承の考察 ―地震学者・羽鳥徳太郎の慧眼―」を掲載していただきました。同稿では、東日流外三郡誌に散見する興国の大津波伝承が、江戸期成立の津軽藩の文書にも記されていることを紹介しました。そして、〝興国の大津波は東日流外三郡誌にしか掲載されていない〟〝歴史事実ではない〟として、そのことを偽作の根拠とした偽作説に反論しました。ちなみに、同稿で紹介した津軽藩系史料とは次の文書です。「洛中洛外日記」(注)でも紹介しましたし、国文学研究資料館のデジタルアーカイブ収録「陸奥国弘前津軽家文書」で閲覧できます。

 下澤保躬「津軽系図略」明治十年(一八七七)。
陸奥国弘前津軽家文書「津軽古系譜類聚」文化九年(一八一二)。
「前代御系譜」『津軽古記鈔 津軽系図類 信政公代書類 前代御系譜』成立年次不明。

 『東京古田会ニュース』215号掲載論文で注目したのが、橘高修さん(東京古田会・副会長、日野市)の「古代史エッセー78 天智天皇紀の重複記事」でした。天智紀に散見される重複記事を紹介し、その年次のずれが、七年・六年・五年・三年・二年のケースがあることを指摘され、「それぞれに原因を考える必要がある」とされました。

 なぜか天智紀に重複記事が頻出するのですが、その理由について、本当に重複記事なのか、唐軍の筑紫進駐記事は実際に二度あったのではないかとする見解も古田先生から出されてきました。また、もし重複記事であるのならば、そのことに『日本書紀』編者たちは誰一人として気づかなかったのかという疑問を払拭できませんし、なぜ天智紀に頻出するのかという疑問にも答えることが出来ていないように思われます。橘高稿を読み、この重要な未解決テーマについて、多元史観・九州王朝説でも説明し切れていないことに、改めて気づきました。

(注)
古賀達也「洛中洛外日記」3107~3109話(2023/09/08~10)〝地震学者、羽鳥徳太郎さんの言葉 (1)~(3)〟
同「洛中洛外日記」3110話(2023/09/11)〝興国二年大津波の伝承史料「津軽系図略」〟
同「洛中洛外日記」3111話(2023/09/12)〝興国の大津波の伝承史料「津軽古系譜類聚」〟
同「洛中洛外日記」3112話(2023/09/13)〝興国の大津波の伝承史料「前代御系譜」〟
同「洛中洛外日記」3113話(2023/09/14)〝興国の大津波は元年か二年か〟


第3256話 2024/03/25

6月16日(日)、出版記念講演会

        ・会員総会のお知らせ

 令和六年(2024年)に6月16日(日)午後、「倭国から日本国へ」『古代に真実を求めて』27集 出版記念講演会、並びに「古田史学の会」定期会員総会を開催します。会員の皆様のご出席をお願いいたします。講演会は一般の皆様もご参加頂けます。参加費は無料です。
なお、当日午前中に「古田史学の会」全国世話人会を開催します。

□開催日時 6月16日(日)午後1時開場予定(詳細は後日発表)
□会場 ドーンセンター 大阪市中央区大手前一丁目(京阪・天満橋駅 東へ約350m)
□講演会 講師・演題
谷本 茂氏(古田史学の会・会員、『古代に真実を求めて』編集部)
〔演題〕誤解され続けた『新唐書』日本伝 ―倭国と日本国の併合関係の「逆転」をめぐって―
正木 裕氏(古田史学の会・事務局長、『古代に真実を求めて』編集部)
〔演題〕百済領域の遺跡から見える倭国(九州王朝)の半島進出
□主催 古田史学の会
□参加費 無料