古田史学の会一覧

第3070話 2023/07/16

『九州倭国通信』No.211の紹介

友好団体「九州古代史の会」の会報『九州倭国通信』No.211が届きました。同号には拙稿「古代寺院、『九州の空白』」を掲載していただきました。
拙稿は、七世紀初頭の阿毎多利思北孤の時代、九州王朝は仏教を崇敬する国家であったにもかかわらず、肝心の北部九州から当時の仏教寺院の出土が不明瞭で、七世紀後半の白鳳時代に至って観世音寺などの寺院建立が見られるという、九州王朝説にとっては何とも説明し難い考古学的状況であることを指摘し、他方、現地伝承などを記した後代史料(『肥後国誌』『肥前叢書』『豊後国誌』『臼杵小鑑拾遺』)には、聖徳太子や日羅による創建伝承を持つ六世紀から七世紀前半創建の寺院が多数記されていることを紹介したものです。
また、同号に掲載された沖村由香さんの「線刻壁画の植物と『隋書』の檞」は興味深く拝読しました。国内各地の古墳の壁に線刻で描かれた植物について論究されたものです。その研究方法は手堅く、導き出された結論も慎重な筆致の好論でした。各地の古墳に描かれた同じような葉について追究された結果、それは『隋書』俀国伝に記された倭人の風習として、食器の代わりに使用する「檞」に着目され(注)、それはアカガシであるとされました。なかなか優れた着眼点ではないでしょうか。

(注)『隋書』俀国伝に次の記事が見える。
「俗、盤俎(ばんそ)無く、藉(し)くに檞(かし)の葉を以てし、食するに手を用(も)ってこれを餔(くら)う。」


第3069話 2023/07/15

賛成するにはちょっと怖い仮説

 本日、東淀川区民会館で「古田史学の会」関西例会が開催されました。わたしは久留米大学で追加発表した「吉野ヶ里出土石棺 被葬者の行方」を報告しました。今回の例会では、とても興味深く重要な研究が発表されました。
その一つが上田さんによる河内国分寺研究でした。柏原市にある河内国分寺周辺からは七世紀創建の多くの寺院が出土しており、当地は言わば九州王朝時代における仏教先進地と指摘されたことです。この地域について、わたしは不勉強でしたので驚くことばかりでした。九州王朝と大和朝廷による多元的国分寺という視点での更なる解明が期待されました。

 もう一つ、九州王朝王家の姓の変遷(倭姓→阿毎姓)を歴代中国史書から導き出し、九州王朝内で〝王統〟の変化があったとする日野さんの研究も注目されました。『宋書』に見える倭の五王は「倭」姓の氏族(物部氏とするのが有力)であり、『隋書』俀国伝に見える「阿毎」姓の王家とは異なる氏族とする仮説です。従来の古田説にはなかったテーマであり、賛成するにはちょっと怖い仮説ですが、検討すべき視点と思われました。

 7月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔7月度関西例会の内容〕
①河内国分寺について (八尾市・上田 武)
②宣化の詔について (茨木市・満田正賢)
③二つの大国主神譜 (大阪市・西井健一郎)
④吉野ヶ里出土石棺 被葬者の行方 (京都市・古賀達也)
⑤荷札木簡の干支表示と貢進國分布 (京都市・岡下英男)
⑥俀国伝と阿蘇山(姫路市・野田利郎)
⑦倭国の君主の姓について (たつの市・日野智貴)
⑧「神武」即位年と「皇暦・二倍年暦」 (川西市・正木 裕)

○関西例会・遺跡めぐり運営の提案(正木事務局長)

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
8/19(土) 会場:都島区民センター ※JR京橋駅北口より徒歩10分。


第3058話 2023/07/01

『多元』No.176の紹介

友好団体「多元的古代研究会」の会誌『多元』No.176が届きました。同号には拙稿「七世紀の律令制都城論 ―中央官僚群の発生と移動―」を掲載していただきました。同稿は、本年11月の八王子セミナーで発表予定の〝律令制都城の絶対条件〟という研究テーマ(注①)を、本年三月の「多元の会」月例会で先行発表した内容を論文化したものです。月例会で出された批判や疑問などを参考にして、八王子セミナーでの発表に活かしたいと考えています。
当号冒頭に掲載された八木橋誠さん(黒石市)の「倭国の漢字 ―音読みを探る―」は、倭人伝や『隋書』俀国伝の国名・地名表記が倭国側で成立したものとされ、その漢字使用の経緯や上古音・中古音について詳述した労作で、刺激を受けました。個別の論点では見解がわかれるケースもあるのですが、倭語(地名・人名など)の漢字による表記を論じる上で貴重な研究と思われました。20年ほど前に、わたしも上古音の復元や倭人伝の音韻について論争したことがあり(注②)、当時の研究を思い起こしました。

(注)
①次の「洛中洛外日記」などで提起した。
古賀達也「洛中洛外日記」2963話(2023/03/13)〝七世紀の九州王朝都城の“絶対条件”〟
同「洛中洛外日記」2964話(2023/03/14)〝七世紀、律令制王都の有資格都市〟
同「洛中洛外日記」2965話(2023/03/15)〝律令制王都の先駆け、倭京(太宰府)〟
同「洛中洛外日記」2966話(2023/03/16)〝律令制王都諸説の比較評価〟
同「洛中洛外日記」2967話(2023/03/17)〝異形の王都、近江大津宮〟
同「洛中洛外日記」2970話(2023/03/20)〝続・異形の王都、近江大津宮〟
②内倉武久「漢音と呉音」『古田史学会報』100号、2010年。
古賀達也「『漢代の音韻』と『日本漢音』―内倉武久氏の「漢音と呉音」に誤謬と誤断―」『古田史学会報』101号、2010年。
内倉武久「魏志倭人伝の読みに関する「古賀反論」について」『古田史学会報』103号、2011年。
古賀達也「再び内倉氏の誤論誤断を質す ―中国古代音韻の理解について―」『古田史学会報』104号、2011年。
内倉武久「反論になっていない古賀氏の『反論』」『古田史学会報』106号、2011年。
古賀達也「倭人伝の音韻は南朝系呉音 ―内倉氏との「論争」を終えて―」『古田史学会報』109号、2012年。


第3056話 2023/06/29

『九州王朝の興亡』出版記念

  東京講演会(8月5日)のお知らせ

『九州王朝の興亡』(『古代に真実を求めて』26集)の出版記念東京講演会

『九州王朝の興亡』(『古代に真実を求めて』26集)の出版記念東京講演会を8月5日(土)に開催します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今月発行した『九州王朝の興亡』(『古代に真実を求めて』26集)の出版記念東京講演会を8月5日(土)に開催します。正木裕さんとわたしが講演させて頂きます。詳細は下記の通りです。講演会終了後には、開催にご協力いただいた東京の二つの友好団体(東京古田会・多元的古代研究会)役員の方と懇親の場を持ち、友好を深め、古田史学や古田学派の将来像について語り合えればと思います。

□『九州王朝の興亡』(『古代に真実を求めて』26集)出版記念東京講演会

[日時] 8月5日(土) 13時40分~16時30分 (開場13:20)
[会場] 文京シビックセンター(文京区役所 4Fシルバーホール)

[演題/講師]
○海を渡った万葉歌人 ―柿本人麿系図と「遠の朝廷」― 古賀達也(古田史学の会・代表)
○『旧唐書』と『続日本紀』に記された王朝交代 ―隼人は「千年王朝」の主だった― 正木 裕(古田史学の会・事務局長)

[参加費] 500円(資料代) ※予約不要・先着100名とさせていただきます。
[主催] 古田史学の会 [協力] 多元的古代研究会・古田武彦と古代史を研究する会


第3055話 2023/06/28

30年ぶりに拙論「二つの日本国」を読む

 最近、『古田史学会報』投稿論文審査の必要性から、30年前に発表した拙論「二つの日本国 ―『三国史記』に見える倭国・日本国の実像―」(注①)を読みました。当論文は、1991年に信州白樺湖畔の昭和薬科大学諏訪校舎で開催された古代史徹底論争 「邪馬台国」シンポジウム発表者の研究論文を収録した『古代史徹底論争 「邪馬台国」シンポジウム以後』に掲載されたものです。わたしは同シンポジウムの実行委員会の一員として運営に徹していたのですが、古田先生のご配慮により、特別に論文掲載を許されました。しかも、内容は「邪馬台国」論争と殆ど無関係な『三国史記』の史料批判をテーマとしたものでした。

 同稿の主論点は『三国史記』新羅本紀に見える八~九世紀の日本国記事の日本は大和朝廷ではなく王朝交代後の〝九州王朝〟のことであるとするものです。すなわち、列島の代表王朝の地位を大和朝廷に取って代わられた後も、〝九州王朝〟は完全に滅亡したわけではなく、新羅と〝交流〟〝交戦〟していたとする仮説です。その根拠として、新羅本紀に記された日本国記事の内容が大和朝廷(近畿天皇家)の『続日本紀』の記事とほとんど対応していないことを指摘しました。

 一旦、この理解に立つと、新羅本紀の文武王十年(670年)の記事に見える倭国から日本国への国号変更記事(注②)は、九州王朝が国名を倭国から日本国に変更したと見なさざるを得ないとしました。

 この理解は古田説とは異なるものでしたが、古田先生から咎めらることもなく、『古代史徹底論争 「邪馬台国」シンポジウム以後』に採用していただきました。当時、わたしの関心事は701年の王朝交代後の九州王朝がどうなったのかということでしたので、関連論文を発表し続けていました(注③)。なお、当論文の末尾をわたしは次のように締めくくっています。

 〝「孤立を恐れず。論理に従いて悔いず。一寸の権威化も喜ばす」とは古田武彦氏の言である。思うに、この言葉に導かれて本稿は成立し得た。学恩に深謝しつつ筆を擱くこととする。〟

 37歳の時の未熟な論文ではありますが、今、読み直しても、研究の視点や学問の方法は大きく誤ってはいないようです。(つづく)

(注)
①古賀達也「二つの日本国 ―『三国史記』に見える倭国・日本国の実像―」『古代史徹底論争 「邪馬台国」シンポジウム以後』古田武彦編著、駸々堂、1993年。
②「文武十年(670年)十二月、倭国、更(か)えて日本と号す。自ら言う「日の出づる所に近し。」と。以て名と為す。」『三国史記』新羅本紀第六、文武王紀。
③王朝交代後の九州王朝について論じた次の拙稿がある。
「最後の九州王朝 ―鹿児島県『大宮姫伝説』の分析―」『市民の古代』10集、新泉社、1988年。
 「九州王朝の末裔たち ―『続日本後紀』にいた筑紫の君―」『市民の古代』12集、市民の古代研究会編、1990年。
「空海は九州王朝を知っていた ―多元史観による『御遺告』真贋論争へのアプローチ―」『市民の古代』13集、1991年、新泉社。


第3048話 2023/06/21

『古代に真実を求めて』

   特価販売のお知らせ

「古田史学の会」では書籍の特価販売を行っています。下記の郵便口座に特価代金を振り込んでいただきますと、入金を確認次第、発送します。消費税と送料を差し引いた特別価格でご提供します。
当会の在庫がなくなり次第、特価販売は打ち切りますので、その後は書店などでお買い求めください。在庫状況をお確かめのうえ、ご注文下さい。

郵便口座番号は次の通りです。ご注文書籍名と冊数、お名前・郵便番号・住所・電話番号を明記し、代金を振り込んで下さい。
口座記号:01010-6
口座番号:30873
加入者名:古田史学の会

【販売書籍名と特別価格、在庫冊数】 2023年6月21日時点
[1]『古代に真実を求めて』第1集 1900円  5冊
[2]『古代に真実を求めて』第4集 3000円 11冊
[3]『古代に真実を求めて』第5集 2200円  2冊
[4]『古代に真実を求めて』第14集 2400円 11冊
[5]『古代に真実を求めて』第15集 2200円 17冊
[6]『古代に真実を求めて』第17集 2800円  8冊
―古田武彦先生米寿記念特集―
[7]『古代に真実を求めて』第21集 2600円  1冊
タイトル 「発見された倭京」
[8]『古代に真実を求めて』第22集 2600円  5冊
タイトル 「倭国古伝」
[9]『古代に真実を求めて』第23集 2600円  1冊
タイトル 「『古事記』『日本書紀』千三百年の孤独」
[10]『古代に真実を求めて』第24集 2800円 16冊
タイトル 「俾弥呼と邪馬壹国」
[11]『古代に真実を求めて』第25集 2200円  8冊
タイトル 「古代史の争点」
[12]『古代に真実を求めて』第26集 2200円 1 6冊
タイトル 「九州王朝の興亡」


第3044話 2023/06/17

古代の気候変動と考古学の接点

 本日、エルおおさかで「古田史学の会」関西例会が開催されました。午後からは「古田史学の会」記念講演会と会員総会が開催されました。

 本日の関西例会で、わたしは「和田家文書の明治写本と大正写本」を発表しました。テレビ東京 土曜スペシャル〝みちのく黄金伝承の謎を求めて〟(昭和61年頃に放送)で映された「東日流外三郡誌」明治写本の紙質や筆跡に注目し、大正写本と比較しました。
午後の講演会では、若林邦彦同志社大学教授と正木 裕さん(古田史学の会・事務局長)が下記の講演をされました。

若林邦彦さん(同志社大学歴史資料館・教授)
「大阪平野の初期農耕 ―国家形成期遺跡群の動態」
正木 裕さん(古田史学の会・事務局長)
「万葉歌に見る九州王朝の興亡」

 若林さんの講演では、年輪酸素同位体比による古代の気候変動(降水量)の研究成果と集落・水田遺構の分布と規模の変動から、弥生時代~古墳時代における環境変化による人々の移動を読み取り、大阪平野での国家形成期の歴史を解明するという研究成果が解説されました。

 その中で、「水害を前提に暮らす弥生集団」や「古墳時代中期(5世紀)に水田と集落域分離傾向(おらが田んぼから切り離されていく人々)」の痕跡が示され、「この変化の背景にはBC1世紀からAD1~6世紀の多雨環境の適応もあるが、地域社会の政治的統合の変化とも関係する。→古代国家的社会への動き」と説明されました。最新の理化学的研究成果を駆使されての仮説であり、参加者からも好評でした。

 講演会後に開催された「古田史学の会」定期会員総会では、創立30周年の記念事業企画検討を含む提案事項全てが承認され、滞りなく終了しました。

6月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

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古田史学の会エルおおさか 2023.6.17

6月度関西例会・講演会発表一覧(ファイル・参照動画)

YouTube公開動画は①②③です。

午前の関西例会

1,和田家文書の明治写本と大正写本 (京都市・古賀達也)

YouTube動画①https://www.youtube.com/watch?v=GkNVF8VnOlc

2,秦王国はプレ大宰府である ―国体制の特色― (姫路市・野田利郎)

YouTube動画①https://youtu.be/uWVSvVMKNgI

午後の講演会

1,若林邦彦(同志社大学歴史資料館・教授)
「大阪平野の初期農耕 国家形成期遺跡群の動態」

ファイル・講演記録はありません。

2,正木 (古田史学の会・事務局長)
「万葉歌に見る九州王朝の興亡」

YouTube動画のみ①https://youtu.be/XJFlbXeW1xA
https://youtu.be/1YC4xSdznwIhttps://youtu.be/RV7J_Q9wAUs


第3040話 2023/06/13

『古田史学会報』176号の紹介

 『古田史学会報』176号が発行されました。拙稿「九州王朝戒壇寺院の予察」を掲載して頂きました。「戒壇」とは国家による仏教統制の仕組みの一つであり、僧侶になるためには国家が認証した戒壇寺院で受戒することが必要でした。大和朝廷の場合は東大寺と太宰府の観世音寺、下野国の薬師寺が戒壇寺院と定められ、古代日本の「天下の三戒壇」とも称されています。

 拙稿では、大和朝廷に先立つ九州王朝(倭国)にも国家認証の戒壇寺院があったのではないかとする視点により、共に670年(白鳳十年)の創建伝承を持つ観世音寺と下野薬師寺は九州王朝による戒壇寺院ではないかとしました。更に、高良山(久留米市)にも「戒壇堂」という地名があり、ここにも九州王朝の戒壇があったとする仮説を発表しました(注①)。なお、多元史観による戒壇・受戒などについては日野智貴さん(古田史学の会・会員)の研究、好論があります(注②)。
会報一面に掲載された正木稿は、701年の王朝交代後の九州王朝が大和朝廷により駆逐される様子が〝隼人討伐〟として『続日本紀』に遺されていることを明らかにしようとするもので、その目論見はかなり成功しているように思えました。同テーマは『九州王朝の興亡』出版記念講演会でも発表される予定で、楽しみです。

 176号に掲載された論稿は次の通りです。投稿される方は字数制限(400字詰め原稿用紙15枚程度)に配慮され、テーマを絞り込んだ簡潔な原稿とされるようお願いします。

【『古田史学会報』176号の内容】
○消された和銅五年(七一二)の「九州王朝討伐戦」 川西市 正木 裕
○会員総会(6月17日)のお知らせ 会誌26号『九州王朝の興亡』出版記念講演の案内
○『播磨国風土記』宍禾郡・比治里の「奪谷」の場所 神戸市 谷本 茂
○『日本書紀』の対呉関係記事 たつの市 日野智貴
○土佐国香長条里七世紀成立の可能性 高知市 別役政光
○九州王朝戒壇寺院の予察 京都市 古賀達也
○「壹」から始める古田史学・四十二
多利思北孤と「鞠智城」の盛衰 古田史学の会・事務局長 正木 裕
○書評 待望の復刊、『関東に大王あり』 京都市 古賀達也
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○『古代に真実を求めて』27集 原稿募集
○『古田史学会報』投稿募集・規定

(注)
①古賀達也「洛中洛外日記」2706話(2022/03/24)〝下野薬師寺と観世音寺の創建年〟
同「洛中洛外日記」2723話(2022/04/19)〝高良山中にもあった九州王朝の戒壇〟
②日野智貴「九州王朝の戒壇と僧伽(サンガ)」古田史学の会・関西例会(2021年1月)で発表。
古賀達也「洛中洛外日記」2351話(2021/01/16)〝仏法僧の受戒・得度制度の多元史観〟
日野智貴「菩薩天子と言うイデオロギー」『古田史学会報』174号、2023年


第3038話 2023/06/10

『九州王朝の興亡』いよいよ発刊!

   特価販売も実施!

九州王朝の興亡

古代に真実を求めて 古田史学論集第二十六集
九州王朝の興亡 2023年 明石書店

『九州王朝の興亡』(『古代に真実を求めて』26集、明石書店)が今月15日付けで発刊されます。「古田史学の会」賛助会員(2022年度、年会費5,000円)には順次送付しますので、もうしばらくお待ちください。経費削減のため、西村秀己さん(古田史学の会・全国世話人、会計担当、高松市)がお一人で発送作業を行っていますので。
同書は古田先生の第二著『失われた九州王朝』(朝日新聞社、1973年)の出版50周年を記念して、「九州王朝の興亡」を特集テーマとした一冊です。表紙のデザインには大宰府政庁の鬼瓦を採用しました。迫力があり、美しいデザインで、わたしはとても気に入っています。古田学派の最新の九州王朝研究を収録しており、とりわけ巻頭論文二編は優れたものです。

【巻頭論文】
◎正木裕さん「倭国(九州王朝)略史」
◎谷本茂さん「古代日中交流史研究と『多元史観』」

なお、「古田史学の会」では本書の特価販売を実施します。下記の郵便口座に特価代金(2,200円/1冊)を振り込んでいただきますと、入金を確認次第、発送します。定価は2,200円+税ですが、消費税と送料を割り引かせていただきます。なお、当会の在庫(約40冊)がなくなり次第、あるいは年内で特価販売は打ち切りますので、その後は書店などでお買い求めください。在庫状況については、古田史学の会ホームページ「新古代学の扉」でお確かめ下さい。
郵便口座番号は次の通りです。「『九州王朝の興亡』○冊希望」と記入し、お名前・郵便番号・ご住所・電話番号を明記し、代金を振り込んで下さい。特別価格は1冊 2,200円です。

口座記号:01010-6
口座番号:30873
加入者名:古田史学の会

※お振り込み後、2週間以上経過しても本が届かない場合は、下記までお問い合わせ下さい。
古賀達也 ℡ 075-251-1571 E-mail: kogatty@kyoto.zaq.jp

今回からわたしが書籍担当をさせていただくことになりました。近々、『九州王朝の興亡』以外の在庫特価販売もスタートします。対象書籍・特価など、ホームページでお知らせします。お買い上げいただければ幸いです。


第3028話 2023/06/01

『東京古田会ニュース』No.210の紹介

 『東京古田会ニュース』210号が届きました。拙稿「『東日流外三郡誌』の考古学」を掲載していただきました。拙稿は福島城跡(旧・市浦村)の創建年次などについて論じたものです。東北地方北部最大の城館遺跡とされている福島城(旧・市浦村)は東京大学による調査(注①)により、14~15世紀の中世の城址と見なされてきましたが、他方、東日流外三郡誌には福島城の築城を承保元年(1074)とされていました(注②)。ところが、その後行われた発掘調査(注③)により、福島城は古代に遡ることがわかり、出土土器の編年により10~11世紀の築城とされ、東日流外三郡誌に記された「承保元年(1074)築城」が正しかったことがわかりました。この事実は東日流外三郡誌偽作説を否定するものとなりました。
当号には注目すべき論稿がありました。橘高修さん(東京古田会・副会長、日野市)による「古代史エッセー73 マクロ的に見た史観の推移」です。【皇国史観】【津田史学の登場】【皇国史観に対する津田の立場】【古田武彦の津田史学批判】【津田説から古田説へ】という小見出しからもわかるように、戦前から戦後、そして現在に至る日本古代史学の思潮を概説した好論です。特に津田史学の解説は興味深く拝読しました。
津田史学の特筆すべき業績に、皇国史観による『日本書紀』の解釈を否定したことがあります。戦前戦中は非難の対象となった津田史学でしたが、戦後は一転して評価されます。しかし、神話などを学問(史料批判)の対象から除外するという、行き過ぎた古代史学や戦後教育を生み出す一因にもなりました。こうした津田史学の影響を学問的に乗り越えたのが古田史学であり、フィロロギー(注④)という学問でした。
古田史学の歴史的意義を論じた橘高稿を読み、古田先生亡き後、改めて先生の学問やその方法、歴史的位置づけを確認することが、今日の古田学派にとって重要ではないかと考えさせられました。

(注)
①昭和30年(1955)に行われた東京大学東洋文化研究所(江上波夫氏)による発掘調査。
②『東日流外三郡誌』北方新社版第三巻、119頁、「四城之覚書」。
③1991年より三ヶ年計画で富山大学考古学研究所と国立歴史民俗博物館により同城跡の発掘調査がなされ、福島城遺跡は平安後期十一世紀まで遡ることが明らかとなった(小島道祐氏「十三湊と福島城について」『地方史研究二四四号』1993年)。
④古田武彦「アウグスト・ベエクのフィロロギィの方法論について〈序論〉」『古田武彦は死なず』(『古代に真実を求めて』19集)古田史学の会編、明石書店、2016年。初出は『古代に真実を求めて』第二集、1998年。
古賀達也「洛中洛外日記」1370話(2017/04/15)〝フィロロギーと古田史学〟
茂山憲史「『実証』と『論証』について」『古代に真実を求めて』22集、2019年。初出は『古田史学会報』147号、2018年。


第3022話 2023/05/21

『九州王朝の興亡』出版

   記念講演会のご案内

1,若林邦彦(同志社大学歴史資料館・教授)の
「大阪平野の初期農耕集落 ―国家形成期遺跡群の動態」のYouTube動画はございません。

2,正木裕@万葉歌に見る九州王朝の興亡~倭国(九州王朝)絶頂期の万葉歌
https://youtu.be/XJFlbXeW1xA
https://youtu.be/1YC4xSdznwI
https://youtu.be/RV7J_Q9wAUs

6月17日(土)に『九州王朝の興亡』(『古代に真実を求めて』26号、明石書店)出版記念講演会をエルおおさか(大阪府立労働センター)で開催します。今年は同志社大学の若林教授(考古学)と正木裕さん(古田史学の会・事務局長)の講演を行います。非会員の方も参加できます(参加費無料)。時間・演題などは下記の通りです。

□日時 6月17日(土) 13時15分~16時15分
□会場 エルおおさか(大阪府立労働センター) 5階研修室第2
交通アクセスはここから
※京阪天満橋駅より西300m。
□講師/演題
若林邦彦さん(同志社大学歴史資料館・教授)
「大阪平野の初期農耕集落 ―国家形成期遺跡群の動態」
正木 裕さん(古田史学の会・事務局長)
「万葉歌に見る九州王朝の興亡」
□主催 古田史学の会・他
□参加費 無料

◎講演会終了後(16時20分~16時50分)に「古田史学の会」会員総会を行います。会員の皆様のご出席をお願い申し上げます。
◎午前中(10時~12時)は「古田史学の会」関西例会を開催します。

 


第3021話 2023/05/20

旧王朝が新王朝に取って代わられる時

本日、都島区民センターで「古田史学の会」関西例会が開催されました。来月はエルおおさかで、午後は「古田史学の会」記念講演会と会員総会を開催します。会員の皆さんのご出席をお願いいたします。

本日の関西例会で、わたしは「東日流外三郡誌の考古学 ―「和田家文書」令和の再調査―」を発表しました。北東北地方最大の城館遺跡である福島城の築造年代を14~15世紀とする従来説よりも、発掘調査の結果、東日流外三郡誌に記された承保元年(1074年)が正しかったことなどを紹介し、これは真作説を支持する考古学的事実であるとしました。また、今回実施した弘前市での和田家文書調査の報告も行いました。

今回の例会では優れた発表が続き、なかでも正木さんの「消された和銅五年の九州王朝討伐譚」は、王朝交代前後の九州王朝(倭国)と大和朝廷(日本国)の激しいせめぎ合いを復元したもので、『日本書紀』『続日本紀』『万葉集』を史料根拠に、王朝交代後に〝「禅譲」の約を破り「放伐」に及んだ大和朝廷〟という論証はとても印象的でした。おそらく、旧王朝が新王朝に取って代わられる時とはこのようなものであったかと、目に浮かぶような説明が続きました。論文発表が待たれます。

この他にも大原さんの「男神でもあったアマテラスと姫に変身したスサノオ」や日野さんの「日本書紀の史料批判方法」は示唆に富んだ発表でした。

次回6月は午後から会員総会記念講演会があるため、例会は午前中だけとなります。そのため二名しか発表できないとのことなので、わたしは「テレビ東京 土曜スペシャル〝みちのく黄金伝承の謎を求めて〟の上映」を急いで申し込むことにしました。同番組は昭和61年頃に放送されたもので、藤本光幸さんや和田喜八郎さんも出演され、「東日流外三郡誌」明治写本などが映っており、今では貴重なものです。なお、同番組のビデオは竹田元春さん(弘前市)よりいただいたもので、おそらく関西では初めて見る人が多いのではないでしょうか。

5月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。

〔5月度関西例会の内容〕
①渡来人に関する基礎的考察 (茨木市・満田正賢)
②天之石屋戸と大蛇退治に登場する神々 (大阪市・西井健一郎)
③遺跡巡りハイキング(5月)の報告 (豊中市・中本賢治)
④ハイキング・マニュアルの解説・6月の案内 (上田 武・正木 裕)
⑤〝古田武彦〟著作権利用に関する覚書(案)の説明 (古田史学の会・代表 古賀達也)
⑥東日流外三郡誌の考古学 ―「和田家文書」令和の再調査― (京都市・古賀達也)
⑦男神でもあったアマテラスと姫に変身したスサノオ (大山崎町・大原重雄)
⑧日本書紀の史料批判方法 (たつの市・日野智貴)
⑨消された和銅五年の九州王朝討伐譚 (川西市・正木 裕)

□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
6/17(土) 会場:エルおおさか(大阪府立労働センター) ※京阪天満橋駅より西300m。午後は「古田史学の会」記念講演会・会員総会。

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古田史学の会 都島区民センター2023.05.20

5月度関西例会発表一覧(ファイル・参照動画)

YouTube公開動画は①④⑤です。
「6,」の古賀氏の正式な動画は、ファイルから視聴できます。

1,渡来人に関する基礎的考察 (茨木市・満田正賢)

https://youtu.be/Fkf6eX0V8jQ https://youtu.be/RvseEIlZZV8

2,天之石屋戸と大蛇退治に登場する神々 (大阪市・西井健一郎)

https://youtu.be/zL9a0HN6xwIhttps://youtu.be/E8GFr4Q1pWk

3,遺跡巡りハイキング(5月)の報告 (豊中市・中本賢治)

https://youtu.be/FpyOlhOT0j8

4,5,はなし

6,東日流外三郡誌の考古学 「和田家文書」令和の再調査―
  (京都市・古賀達也)
https://www.youtube.com/watch?v=EtuDJ2WGQyI
(正規版)

https://youtu.be/1RCFty1_zBY ②https://youtu.be/EkTIdnZVLV0

7,男神でもあったアマテラスと姫に変身したスサノオ
(大山崎町・大原重雄)

https://youtu.be/fxftMIQx3d8https://youtu.be/i6GzR-Lw9x4

8,日本書紀の史料批判方法 (たつの市・日野智貴)

https://youtu.be/zT58RwfO_tUhttps://youtu.be/Zd8UyWmnyEg

9,消された和銅五年の九州王朝討伐譚 (川西市・正木 裕)

https://youtu.be/OqOClFljGrU

https://youtu.be/2gSPFCsgv2shttps://youtu.be/DBcmoWHqpjc