「春日なる三笠山」
福岡県東部の立花山説
本日、 「古田史学の会」関西例会が開催されました。次回、2月例会の会場は都島区民センターです。西村秀己さんが『古代に真実を求めて』27集全原稿のゲラ校正で多忙のため、代わってわたしが司会を担当しました。
関西例会でインターネット配信を担当されている久冨直子さん(『古代に真実を求めて』編集部)が初めて例会で発表されました。テーマは、『古今和歌集』の阿倍仲麻呂の歌に詠まれている「春日なる三笠山」を福岡県東部(福岡市東区・糟屋郡)の立花山(367m)とする新説で、大原さんとの共同研究とのこと。
「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に(を) 出でし月かも」
※『古今和歌集』古写本(注①)には「三笠の山を」とあり、月が三笠山から出ると歌っている。流布本では「三笠の山に」と改定されている(注②)。
通説では奈良県の御蓋(みかさ)山(283m)としますが、この山では低すぎて、月は後方の春日山連峰(600~700m)から出ることから、古田先生は太宰府の東にある宝満山(869m、旧名三笠山)とする説を発表し(注③)、以来、古田学派内では最有力説とされてきました。
今回の久冨さんの発表では、奈良県の御蓋山説は当然ダメだが、立花山であれば、博多湾岸の海の中道の付け根付近から見ると、三つの峰(東から松尾山・白岳・立花山)が並んで見え、〝三笠〟山と呼ぶにふさわしい。その点、宝満山は〝三笠〟山と呼べるような姿ではないとしました。なるほど一理ある指摘なので、この立花山説は検討に値する新説と思いました。これからの論争や検証により、歴史の真実へと研究が収斂することを期待しています。
ちなみに、久冨さんの説明によれば、「古田史学の会」案内リーフレットの写真は、立花山上空から見た博多湾とのことです。
1月例会では下記の発表がありました。なお、発表希望者は西村秀己さんにメール(携帯電話アドレス)か電話で発表申請を行ってください。発表者はレジュメを25部作成されるようお願いします。
〔1月度関西例会の内容〕
①懐風藻が記すもう一つの史実 (茨木市・満田正賢)
②大きな勘違いだった古代船「なみはや」の復元 (大山崎町・大原重雄)
③春日なる三笠山は福岡県東部の立花山か (京都市・久冨直子)
④令和六年、年頭の挨拶 (代表・古賀達也)
⑤『日本書紀』中の「オホキミ」と「オホゴオリ」 (東大阪市・萩野秀公)
⑥秦王国は九州の都である 『隋書』帝紀の「倭」を発見 (姫路市・野田利郎)
⑦梁・職貢図の本の紹介 (神戸市・谷本 茂)
⑧野田氏の「邪靡堆」論考への幾つかの疑問 (神戸市・谷本 茂)
⑨多利思北孤の仏教振興と「仏教治国策」 (川西市・正木 裕)
□「古田史学の会」関西例会(第三土曜日) 参加費500円
02/17(土) 会場:都島区民センター
(注)
①延喜五年(905)に成立した紀貫之編纂『古今和歌集』は、貫之による自筆本が三本あったとされるが現存しない。しかし、自筆本あるいは貫之の妹による自筆本の書写本(新院御本)にて校合した二つの古写本の存在が知られている。前田家尊経閣文庫所蔵『古今和歌集』清輔本(保元二年、1157年の奥書を持つ)と京都大学所蔵の藤原教長著『古今和歌集註』(治承元年、1177年成立)である。清輔本は通宗本(貫之自筆本を若狭守通宗が書写したもの)を底本とし、新院御本で校合したもので、「みかさの山に」と書いた横に「ヲ」と新院御本による校合を付記している。教長本は「みかさの山を」と書かれており、これもまた新院御本により校合されている。これら両古写本は、「みかさの山に」と記されている流布本(貞応二年、1223年)よりも成立が古く、貫之自筆本の原形を最も良く伝えている。
②古賀達也「『三笠山』新考 ―和歌に見える九州王朝の残映―」『古田史学会報』43号、2001年。同98号(2010年)に再掲。
同「三笠の山をいでし月 ―和歌に見える九州王朝の残映―」『九州倭国通信』193号、2018年。
同「洛中洛外日記」1842話(2019/02/20)〝九州王朝説で読む『大宰府の研究』(6)〟
同「洛中洛外日記」2825・2828話(2022/09/03~06)〝阿部仲麻呂「天の原」歌異説 (1)~(2)〟
③古田武彦『古代史の十字路』東洋書林、平成十三年(2001年)。ミネルヴァ書房より復刻。
古田史学の会 豊中倶楽部自治会館 2024.1.20
2024年 1月度関西例会発表一覧
(ファイル・動画)
YouTube公開動画①②です。
1,懐風藻が記すもう一つの史実
(茨木市・満田正賢)
①https://www.youtube.com/watch?v=3bzOp2wWtak
②https://www.youtube.com/watch?v=-Kt6gGuKap0
2,大きな勘違いだった古代船「なみはや」の復元
(大山崎町・大原重雄)
①https://www.youtube.com/watch?v=-mmSKQyz-_0
②https://www.youtube.com/watch?v=Z7ELSWwYwJA
3,春日なる三笠山は福岡県東部の立花山か
(京都市・久冨直子)
①https://www.youtube.com/watch?v=jU52kT38ilA
②https://www.youtube.com/watch?v=CdUjV5MIPE8
4,令和六年、年頭の挨拶 (代表・古賀達也)
https://www.youtube.com/watch?v=sQRW09NpUoM
5,『日本書紀』中の「オホキミ」と「オホゴオリ」 (東大阪市・萩野秀公)
https://www.youtube.com/watch?v=BmNhyZ44PnM
6,秦王国は九州の都である
『隋書』帝紀の「倭」を発見(姫路市・野田利郎)
https://www.youtube.com/watch?v=0D9Qo5gUm68
7,梁・職貢図の本の紹介 (神戸市・谷本 茂)
なし
8、野田氏の「邪靡堆」論考への幾つかの疑問
(神戸市・谷本 茂)
なし