古田武彦一覧

第617話 2013/11/02

古田武彦自伝『真実に悔いなし』を読む

 ミネルヴァ書房から出された古田先生による自伝『真実に悔いなし』を少しずつ読み進めています。普通、古田先生の新著は 一気に読んでしまうのですが、今回は少しずつ丁寧に読むことにしました。今まで古田先生からおりにふれてお聞かせいただいた先生の歩まれた人生やその思い出が、先生自らにより詳しく記されており、感慨深く読んでいます。
 将来、「古田武彦伝」を優秀な若者により執筆されることを想像していたのですが、古田先生ご自身による自伝として刊行されたことに、ミネルヴァ書房にも 感謝しています。古田ファンや古田学派研究者にとって必読の一冊です。読了しましたら、また読後感を書きたいと思います。


第595話 2013/09/14

古田武彦著『失われた日本』復刻

 ミネルヴァ書房より古田先生の『失われた日本 — 「古代史」以来の封印を解く』が「古田武彦古代史コレクション17」として復刻されました。同書は1998年に出版された本で、わたしにとっても特に印象に残る一冊です。
 冒頭の第1章「火山の日本-列島の旧石器・縄文」は「二つの海流に挟まれた火山列島、それが日本である。この事実がこの国の歴史を規定してきた。日本人 には、そしていかなる権力者といえども、この運命をまぬがれることはできないのである。」という印象的な文章で始まります。
 そして各章には古田史学の中心的テーマがコンパクトにまとめられており、その学説の真髄がよく理解できるよう配慮されてます。そうしたことからも、古田ファンや古田史学の研究者の皆さんには是非ともお手元においていただきたい一冊です。たとえば、第8章「年号の歴史批判 — 九州年号の確証」は年号研究の基礎的認識を深める上でも、とても重要な論文です。わたしも、読むたびに新たな刺激を受けています。
 最終章の「歴史から現代を見る」は本居宣長批判や村岡典嗣先生の研究にもふれられており、日本思想史上でも重要な論文です。村岡先生の写真なども掲載されており、貴重です。
 そして同書末尾には、復刻にあたり書き下ろされた「日本の生きた歴史(17)」が掲載されており、近年の古田先生の研究動向の一端に触れることができます。その最後を古田先生は次の一文で締めくくられています。

 わたしは、本居宣長の「孫弟子」です。なぜなら、東北大学で学んだときの恩師、村岡典嗣先生は「本居宣長」研究を学問の出発点とされた方です。(略)中でも、「本居さんはね、いつも『師の説に、な、なづみそ。』と言っています。これが学問です。“わたしの説に拘泥する な。”ということですね。」
 この言葉は、十八歳のわたしの耳と魂に沁みこみ、その後のわたしの一生の学問研究をリードしてくれました。そして今、八十六歳の現在に至っているのです。
 この運命の一稿によって、わたしはこれを本居さんの眼前に呈することができた。それを深く誇りといたします。(引用終わり)

 「『師の説に、な、なづみそ。』本居宣長のこの言葉は学問の真髄です。」と、わたしは三十代の若き日に、古田先生から繰り返し繰り返し聞かされてきました。わたしもこの言葉を生涯の学問研究の指針として、大切にしていきたいと思います。


第581話 2013/08/16

古田先生自伝刊行記念講演会のご案内済み

 この二ヶ月ほど出張が連日のように続き、かなりバテています。円安による輸入原材料価格高騰の影響で、価格改定交渉のため全国を飛び回ってきまし た。お盆明けには鹿児島・宮崎出張や上海出張も予定されており、体力回復に努めています。早く本来業務のマーケティングや開発に戻りたいものです。
 本日、ミネルヴァ書房の神内冬人さんが拙宅までみえられ、古田先生の研究自伝『真実に悔いなし』刊行記念講演会の案内チラシをいただきました。明日の「古田史学の会」関西例会で配布します。内容は次のとおりです。是非、お越しください。

「真実の歴史を求めて -私の歩んで来た道、歩み行く道-」

 講師 古田武彦

 講演内容
 ○これまでの学究生活を振り返る
 ○最新の研究成果、発見について
 ○『真実に悔いなし』(シリーズ「自伝」my life my world)「古田武彦・歴史への探究」刊行を機に

 ※講演終了後、質疑応答、書籍販売(サイン本も有)を予定しています。

 とき 9月21日(土)13時30分~16時

 ところ 京都教育文化センター
     京都市左京区聖護院川原町4-13
        電話075-771-4221

 定員 350名(先着順に座席をご用意しております)

 参加費 1000円(当日受付でお支払い下さい)

 主催 ミネルヴァ書房

 

(お問い合わせ・お申し込み)

 電話・FAX・はがき・Eメールでお申し込み下さい。先着順にて受け付けますので、定員になり次第、締め切りとさせて頂きます。
 氏名・住所・電話番号・参加人数を連絡して下さい。
 〒607-8494 京都市山科区日ノ岡堤谷町1番地
 株式会社ミネルヴァ書房内 古田武彦講演会「真実の歴史を求めて」事務局:石原

 電話 075-581-0296
 FAX 075-581-0589
 E-mail eigyo@minervashobo.co.jp


第558話 2013/05/19

古代ギリシアの「従軍慰安婦」

 昨日の関西例会で、わたしは古代ギリシアの「従軍慰安婦」というテーマでクセノポン著『アナバシス』にギリシア人傭兵部隊に娼婦が多数従軍していたという記事があることを紹介しました。
 ソクラテスの弟子であるクセノポンが著した「上り」という意味の『アナバシス』は、紀元前401年にペルシアの敵中に取り残されたギリシア人傭兵1万数 千人の6000キロに及ぶ脱出の記録です。クセノポンの見事な采配によりギリシア人傭兵は故国に帰還できたのですが、その記録中に娼婦のことが記されてい ます。アルメニア山中の渡河作戦の途中に次の記事が突然現れます。

 「占者たちが河(神)に生贄を供えていると、敵は矢を射かけ、石を投じてきたが、まだこちらには届かなかった。生贄が吉 兆を示すと、全軍の将士が戦いの歌を高らかに唱して鬨の声をあげ、それに合わせて女たちもみな叫んだ−−隊中には多数の娼婦がいたのである。」岩波文庫 『アナバシス』(169頁)

 この娼婦たちはギリシア本国から連れてきたのか、遠征の途中に「合流」したのかは不明ですが、将士の勝ち鬨に唱和して叫んでいることから、前者ではないかと推定しています。
 昨今、物議を醸している橋下大阪市長による「慰安婦」発言もあったことから、いわゆる「従軍慰安婦」が紀元前400年頃の記録に現れている例として紹介 しました。この問題は他国への侵略軍・駐留軍が避けがたく持つ「性犯罪」「性問題」が人類史的にも根が深い問題であり、ある意味では橋下市長の発言を契機 に、より深く考える時ではないかと思います。「建前」だけの議論や、単なるバッシングでは沖縄の米兵による性犯罪をはじめ、世界各地の侵略軍・駐留軍により恐らくは引き起こされているであろう各種の問題を解決できないことは明白です。歴史学や思想史学が机上の学問に終わらないためにも、真剣に考えるべきテーマではないでしょうか。
 5月例会の発表は次の通りでした。なお、6月例会は「古田史学の会」会員総会・記念講演会などのため中止となりました。

 

〔5月度関西例会の内容〕
1). シキの考察−−西村説への尾鰭(大阪市・西井健一郎)
2). 古代に忌み名(諱)の習俗はあったのか(八尾市・服部静尚)
3). 歩と尺の話(八尾市・服部静尚)
4). 古田史学会インターネットホームページ運営報告(東大阪市・横田幸男)
5). 古代ギリシアの「従軍慰安婦」(京都市・古賀達也)
6). 和気(京都市・岡下秀男)
7). 「室見川の銘板」の解釈について(川西市・正木裕)
8). 「実地踏査」であることを踏まえた『倭人伝』の距離について(川西市・正木裕)
8). 味経宮のこと(八尾市・服部静尚)
9). 史蹟百選・九州篇(木津川市・竹村順弘)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田先生近況・会務報告・会誌16集編集遅れ・新東方史学会寄付金会計報告の件・行基について・その他 


第533話 2013/03/04

古田武彦著『俾弥呼(ひみか)の真実』

 「編集とはかくあるべきか」。ミネルヴァ書房から出版された古田先生の新著
『俾弥呼の真実』を一読しての感想です。本当に見事な一冊と言うほかありません。同書は「古田史学の会」の友好団体「古田武彦と古代史を研究する会(東京
古田会)」の機関紙「東京古田会NEWS」に連載された古田先生の論稿を分野別に編集されたものです。同会渾身の「作品」ともいうべきものでしょう。
   わたしも「古田史学の会」著作物の編集作業に関わっていますので、編集作業の難しさ、大切さをわかっているつもりですが、『俾弥呼の真実』では見事な
テーマ別分類という編集により、古田先生の思想と学問が系統だって分かりやすく読み続けられるよう工夫されています。それは次の目次を一見しただけでも感
じ取ることができるでしょう。

 第一篇 俾弥呼のふるさと
 第二篇 俾弥呼の時代
 第三篇 真実を語る遺物・出土物
 第四篇 抹消された史実
 第五篇 もう一つの消された日本の歴史 — 和田家文書

 よくこれほどわかりやすく興味を持って読み進められるよう分類されたものだと感心しました。東京古田会による同シリーズは更に二冊が予定されているとのこと。今から楽しみにしています。皆さんにも是非お勧めします。


第532話 2013/03/02

「植本祭」のご案内
       
       
         

 正木裕さんのご尽力により、大阪府立大学なんばキャンパスに古田史学コーナー
が設けられます。古田先生の著作などを書架に並べることになりますが、3月9日に「植本祭」が開催されることになりました。正木さんから下記の案内が寄せ
られましたので、転載します。皆さんのご参加をお待ちしています。

 4月に難波にオープンする大阪府立大学なんばキャンパス「I-siteなんば」に古田史学コーナー(200冊程度収
納)を設けることとなりました。ついては、3月9日(土)13時からのプレオープンセレモニー「植本祭」に、古田史学のセッションを持ち、本の書架入れを
おこないます。
 古田史学関係の本を1冊以上持ち寄れば誰でも参加できます。終了後は学長他も参加するネットワーキングパーティ(2000円)もあります。是非ご参加ください。
 植本祭に関する大学のHPは
 http://opu.is-library.jp/
 「I-siteなんば」の住所は、大阪市浪速区敷津東2-1-41南海なんば第1ビル2・3階
 アクセスは、南海電鉄難波駅 なんばパークス方面出口より南約800m 徒歩12分
  地下鉄なんば駅(御堂筋線)5号出口より南約1,000m 徒歩15分
  地下鉄大国町駅(御堂筋線・四つ橋線)1号出口より東約450m 徒歩7分です。


第530話 2013/02/23

中嶋嶺雄さんを悼む
 2月14日、中嶋嶺雄さん(国際教養大学学長)が亡くなられました。76歳とのこと。中嶋さんの訃報をわたしは名古屋のホテルのテレビニュースで知りました。大変残念でなりません。心よりお悔やみ申し上げます。
 中嶋さんは松本深志高校での古田先生の教え子で、新・東方史学会の会長でもあり、陰に陽に古田先生を応援されてきました。松本深志時代の若き古田先生とのエピソードを「洛中洛外日記」第6話「中嶋嶺雄さんと古田先生」で紹介していますので、是非ご覧ください。
 古田先生も中嶋さんのご逝去を大層残念がっておられました。「古田史学会報」4月号に弔辞をご寄稿いただくことになりました。中嶋嶺雄さんのご冥福をお祈り申し上げます。


第523話 2013/02/09

『古田史学会報』114号の紹介

 『古田史学会報』114号が発行されましたのでご紹介します。久しぶりに古田先生から原稿をいただきました。『続日本紀』宣命中の本居宣長による原文改訂を批判されたもので、新たな問題提起です。今後の展開が楽しみです。
 札幌市の阿部周一さんの論稿「吉野と曳之弩」では、吉野が『日本書紀』に「曳之弩」(えしの・えしぬ)とする表記があることに注目され、軍事拠点として
の「吉野」論を展開されました。亡くなったわたしの父も「斉明天皇陵」がある朝倉の「恵蘇(えそ)」を「よそ」と発音していたことを思い出しました。
「え」と「よ」の音韻変化の一例だったのかもしれません。
 掲載稿は次の通りで、いずれも読みごたえのある論文です。

〔『古田史学会報』114号の内容〕
○「高天原」の史料批判  古田武彦
○続・前期難波宮の学習  京都市 古賀達也
○吉野と曳之弩  札幌市 阿部周一
○『正法輪蔵』の中の九州年号  京都市 岡下英男
○碾磑と水碓 史料の取り扱いと方法論  豊中市 大下隆司
○会報原稿募集
○新年のご挨拶  代表 水野孝夫
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会 関西例会のご案内
○編集後記


第514話 2013/01/15

「古田武彦研究自伝」

 12日に大阪で古田先生をお迎えし、新年賀詞交換会を開催しました。四国の合田洋一さんや東海の竹内強さんをはじめ、遠くは関東や山口県からも多数お集まりいただきました。ありがとうございます。
 今年で87歳になられる古田先生ですが、お元気に二時間半の講演をされました。その中で、ミネルヴァ書房より「古田武彦研究自伝」を出されることが報告
されました。これも古田史学誕生の歴史や学問の方法を知る上で、貴重な一冊となることでしょう。発刊がとても楽しみです。
 当日の朝、古田先生をご自宅までお迎えにうかがい、会場までご一緒しました。途中の阪急電車の車中で、古代史や原発問題・環境問題についていろいろと話
しました。わたしは、原発推進の問題を科学的な面からだけではなく、思想史の問題として捉える必要があることを述べました。
 原発推進の論理とは、「電気」は「今」欲しいが、その結果排出される核廃棄物質は数十万年後までの子孫たちに押しつけるという、「化け物の論理」であ
り、この「論理」は日本人の倫理観や精神を堕落させます。日本人は永い歴史の中で、美しい国土や故郷・自然を子孫のために守り伝えることを美徳としてきた
民族でした。ところが現代日本は、「化け物の論理」が国家の基本政策となっています。このような「現世利益」のために末代にまで犠牲を強いる「化け物の論
理」が日本思想史上、かつてこれほど横行した時代はなかったのではないか。これは極めて思想史学上の課題であると先生に申し上げました。
 すると先生は深く同意され、ぜひその意見を発表するようにと勧められました。賀詞交換会で古田先生が少し触れられた、わたしとの会話はこのような内容
だったのです。古代史のテーマではないこともあり、こうした見解を「洛中洛外日記」で述べることをこれまでためらってきましたが、古田先生のお勧めもあ
り、今回書いてみました。


第486話 2012/10/23

古田先生と森嶋通夫さん

 未明から降り出した強い雨の中、新幹線で東京にむかっています。JR東海エクスプレスカードのポイントを利用して、グリーン車でくつろいでいます。出張の多いビジネスパーソンにはありがたいサービスです。
 今日は東京日本橋のN商社で今年度下期のビジネスの打ち合わせと景気動向について情報交換をした後、今晩は山形市で宿泊予定です。ちなみに、東京の日本橋は「にほんばし」と言い、大阪の日本橋は「にっぽんばし」と言います。なぜ読み方が異なるのか理由は知りませんが、このことに最近気づきました。

 一昨日の日曜日に京都市下京区の旧・成徳中学校校舎で古田先生の講演会があり聴講しました。主催者は「文化政策・まちづくり大学校」(代表:池上惇・京都大学名誉教授)という団体で、旧・成徳中学校校舎を拠点に様々な学習会活動を主催されています。
 今回の古田講演は世界的に高名な経済学者の森嶋通夫さんの奥様(ロンドン在住で一時帰国されています)をお招きして、「森嶋学と日本古代史」というテーマで、古田先生が森嶋通夫さんとの出会いや最新の発見について講演されました。古田史学の会からは水野代表をはじめ木村賢司さん・大下隆司さん・正木裕さん・古賀らが参加しました。古田先生の奥様も参加されました。
 講演で話された古田先生と森嶋さんの出会いのエピソードについては、正木さんの提案により会報に掲載する予定です。
 森嶋さんは何度もノーベル経済学賞候補に名前が上った経済学者で、若くして文化勲章も受賞された方です(53歳のとき)。2004年に亡くなられました が、古田先生の熱心な支持者で、邪馬壱国説や九州王朝説についてもよくご存じでした。1998年11月には古田先生と対談をされ、その様子が『新・古代学』第4集(新泉社刊、1999年)に掲載されています(対談「虹の架け橋 ロンドンと京都の対話」)。
 理系(有機合成化学)出身のわたしには経済学はさっぱりわからない分野ですが、森嶋さんが古田先生同様に学問や論証をとても大切にされる本物の学者であ ることは、氏の著書(『なぜ日本は没落するか』『血にコクリコの花咲けば–ある人生の記録』『智にはたらけば角が立つ–ある人生の記録』他)を読めばよくわかります。また、文化勲章受章にともなってもらえる「年金」は全額ロンドン大学の研究所に寄付されているそうです(森嶋さんはロンドン大学名誉教授でした)。日本では本物の学者は、経済学であれ古代史であれなかなか受け入れられないようですが、世界の知性はしっかりと評価しているのではないでしょう か。
 日頃聞くこともできないような世界の経済学者のエピソードなども森嶋夫人からお聞きすることができ、とても思いで深い京都の一夕でした。


第481話 2012/10/13

九州の書店で古田武彦フェア

 ミネルヴァ書房の神内冬人(かみうちふゆと)さんから、九州・沖縄の主要書店16店で古田武彦書籍フェア開催のご案内をいただきましたので、お知らせします。開催書店のお近くの方は是非行ってみて下さい。

 ミネルヴァ書房刊行の古田先生関連の書籍を集めたフェアとのことで、古田先生のフェアに寄せたメッセージを掲載した特別リーフレットが展示されま
す。「邪馬壹国」「九州王朝」のご当地の九州で、多くの市民の皆様に古田先生の学説を知っていただくよい機会になればと期待しています。

 

【フェア概要】

フェア名称:「古田武彦・古代史フェア」

期間:2012年10月1日~10月末日までの予定

書目:「古田武彦・古代史コレクション」「シリーズ・古代史の探求(古田史学の会編「九州年号」の研究・他)」「なかった」「なかった別冊」「俾弥呼」(日本評伝選)「ゼロからの古代史事典」

ご協力書店:

(北九州市)アカデミアサンリブシティ小倉店、ブックセンタークエスト小倉本店、 喜久屋書店小倉店、白石書店本店

(福岡市)紀伊國屋書店福岡本店、ジュンク堂書店福岡店

(久留米市)紀伊國屋書店久留米店

(福津市)未来屋書店福津店

(粕屋町)フタバ図書TERA福岡東店、ブックイン金進堂長者原店

(長崎市)メトロ書店本店

(熊本市)喜久屋書店熊本店、蔦屋書店熊本三年坂

(荒尾市)ブックスあんとく荒尾店

(鹿児島市)ジュンク堂書店鹿児島店

(那覇市)ジュンク堂書店那覇店


第470話 2012/09/22

坂本太郎さんと古田先生

 第469話で古田先生が皇室御物の『法華義疏』を電子顕微鏡などで調査されていたことに触れました。この「国宝以上」の超貴重文書を古田先生が調査されるに至った経緯をご紹介したいと思います。
 古田先生が『法華義疏』の研究を始められたとき、自らの仮説を証明するためにどうしても『法華義疏』を実見する必要があったのですが、同書は皇室御物本です。そこで古田先生は古代史学界の重鎮、坂本太郎さんのご自宅を訪問し自説を説明され、どうしても『法華義疏』を見たいと訴えられました(昭和61年7 月28日)。いわば、坂本太郎さんの説とは異なる新説を証明するために、『法華義疏』実見のための紹介状を書いてほしいと坂本太郎さんにお願いされたのです。
 このとき、坂本太郎さんは不治の病にかかられていたそうですが、快く紹介状を書かれました。「『法華義疏』は貴重なもので、見せ難いものではあるが、古田氏には是非とも見せていただきたい。」という趣旨の紹介状だったと古田先生からはお聞きしています。
 多元史観の古田先生に対して、近畿天皇家一元史観に立つ坂本太郎さんが、こともあろうに自らの説が誤りであることを証明する目的のための紹介状を書かれたのです。わたしは古田先生からこの坂本太郎さんとのエピソードをうかがったとき、深く感銘しました。学問的立場は異なっていても、真の歴史学者同士の魂の触れ合いをそこに見たのです。御用学者や曲学阿世 の徒が少なくない現代日本にあって、何とも感動的な話ではないでしょうか。
 紹介状を書かれた後、坂本太郎さんは古田先生に対して、「これは大変時間がかかることです。あせらずに待ってください。」と言われたそうです。その後、 宮内庁から『法華義疏』閲覧の許可がおり、古田先生は昭和薬科大学の同僚で電子顕微鏡の専門家である中村卓造先生と共に、京都御所で『法華義疏』を調査されたとのことです(昭和61年10月17日)。宮内庁が電子顕微鏡撮影までよく認めたものだと思いますが、それだけ坂本太郎さんの紹介状の力が大きかったのでしょう。
 この『法華義疏』に関する論文(「『法華義疏』の史料批判」昭和62年11月30日稿了)が完成する前に坂本太郎さんは亡くなられました。坂本太郎さんの学問的寛容と古田先生の学問的情熱を、わたしたち古田学派の研究者はこのエピソードから学ばなければなりません。
 なお、来年発行予定の『九州王朝の「聖徳太子」伝承』(仮称。ミネルヴァ書房)にこの古田先生の論文を再録させていただくことになりましたのでお知らせします。