関西例会一覧

第599話 2013/09/22

『伊予三島縁起』にあった「大長」年号

 本日の関西例会では、古田説に基づき『「倭」と「倭人」について』を発表された張莉さんのご夫君(出野さん)を始め初参加の方もあり、盛況でした。わたしにとっての今日の例会で最大の収穫は、多摩市から参加されている齊藤政利さんにいただいた内閣文庫本『伊予三島縁起』の写真でした。九州年号史料として有名な『伊予三島縁起』原本(写本)を以前から見たい見たいと私が言っているの を齊藤さんはご存じで、わざわざ内閣文庫に赴き、『伊予三島縁起』写本二冊を写真撮影して例会に持参されたのでした。
 まだそのすべてを丁寧に見たわけではありませんが、一番注目していた部分をまず確認しました。それは「天長九年壬子」の部分です。五来重編『修験道資料集』掲載の『伊予三島縁起』には「天武天王御宇天長九年壬子」と記されており、この部分は本来「文武天皇御宇大長九年壬子」ではないかと、わたしは考え、 701年以後の九州年号「大長」の史料根拠の一つとしていました(『「九州年号」の研究』所収「最後の九州年号」をご参照下さい)。
 齊藤さんからいただいた内閣文庫の写本を確認したところ、『伊豫三島明神縁起 鏡作大明神縁起 宇都宮明神類書』(番号 和42287)には「天武天王御宇天長九年壬子」とあり、『修験道資料集』掲載の『伊予三島縁起』と同じでした。ところが、もう一つの写本『伊予三島縁起』(番号 和34769)には 「天武天王御宇大長九年壬子」とあり、「天長」ではなく九州年号の「大長」と記されていたのです。わたしが推定していたように、やはり「天長九年」は「大長九年」を不審とした書写者による改訂表記だったのです。
 「大長九年壬子」とは最後の九州年号の最終年である712年に相当します。近畿天皇家の元明天皇和銅五年に相当します。なお、「天長九年壬子」という年号もあり、淳和天皇の時代で832年に相当します。『伊予三島縁起』書写者がなぜ「天武天王御宇」と記したのかは不明ですが、九州年号「大長」が 704~712年の9年間実在したことの史料根拠がまた一つ明確となったのです。内閣文庫写本の詳細の報告は後日行いたいと思います。齊藤さんに心より感謝申し上げます。
 9月例会の報告は次の通りでした。古田史学の会・東海の竹内会長が久しぶりに出席され、報告していただきました。

〔9月度関西例会の内容〕
1). 日名照額田毘道男伊許知邇の考察(大阪市・西井健一郎)
2). 記紀の原資料と二倍年暦の形(八尾市・服部静尚)
3). 九州年号から考えた聖徳太子の伝記の系統(京都市・岡下英男)
4). 倭王武は武烈でありヒト大王だった(木津川市・竹村順弘)
5). 倭王武の時代の版図(木津川市・竹村順弘)
6). 邪馬壱国の南進(木津川市・竹村順弘)
7). ワニ氏の北方系海人族としての歴史的考察(知多郡阿久比町・竹内強)
8). 鬯草を献じたのは「東夷の倭人」か「南越の倭人」か(川西市・正木裕)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
 古田先生近況・会務報告・『古代に真実を求めて』16集初校・ミネルヴァ書房からの古田書籍続刊・張莉さんと古田先生の仲介・古田先生自伝刊行記念講演会の報告・古田先生八王子セミナーの案内・浄瑠璃「妹背婦女庭訓」の説明・『大神宮諸雑事記』の紹介・その他


第582話 2013/08/17

西井さんの「歴史記事スクラップ」

 「古田史学の会」関西例会では様々な研究発表を聞けたり、質疑応答など本当に刺激的で素晴らしい勉強会です。終了後の懇親会も楽しみですが、わた しが楽しみにしているものがもう一つあります。それは懇親会などを担当していただいている西井健一郎さん(古田史学の会・全国世話人)が毎回配布されてい る古代史や歴史関連の新聞記事を切り抜いて編集されている「歴史記事スクラップ」(A3、4ページ)です。仕事が忙しくて、日頃は新聞の隅々まで読むこと がないわたしにとって、この西井さんが作成されたスクラップ記事のコピーは大変貴重な情報源となっています。こうした史料を毎月多数入手できる関西例会に みなさんも是非お越し下さい。会費は500円です。
 8月例会の発表は次の通りでした。服部さんの「荒神」に関する報告や、正木さんの発表に対する質疑応答時に、竹村順弘さん(古田史学の会・全国世話人、関西例会担当)から指摘された天智天皇の年号「中元」など、驚きの内容でした。
 なお、9月例会は9月22日(日)で、通常の第三土曜日ではありません。ご注意下さい。

〔8月度関西例会の内容〕
1). 張莉論文を読んで(木津川市・竹村順弘)
2). 多利思北弧の国交断絶(木津川市・竹村順弘)
3). 古代天皇の父子継承について(八尾市・服部静尚)
4). 荒振神・荒神・荒についての一考察(八尾市・服部静尚)
5). 薩夜麻の都督・倭国王即位と近江朝の日本国改名(試案)(川西市・正木裕)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
 古田先生近況・会務報告・ミネルヴァ書房からの古田書籍続刊・張莉さん論文『「倭」と「倭人」について』・古田先生八王子セミナーの案内・古田先生『研究自伝』記念講演会・浄瑠璃「妹背山婦女庭訓」・『先代旧事本紀大成経』の国生み神話の小豆島・その他


第572話 2013/07/21

九州王朝の采女制度

 今日は参議院議員選挙の投票日です。わたしは朝に投票を済ませました。投票所の京極小学校は湯川秀樹さんの出身校で、娘 の母校でもあります。投票所では著名な狂言師の茂山千五郎さんを久しぶりにお見かけしました。茂山さんのご自宅屋上にはいつも阪神タイガースの旗が掲げら れており、ご近所でも有名です。
 なお、今回の投票では、わたしは原発問題を主な判断基準にして政党や候補者を選びました。この選挙を通じて、よりよい日本になればと願うばかりです。
 昨日の関西例会には、高松市在住の会員、寺崎さんが初参加されました。また、遠くは多摩市から参加されている齋藤さんからは、「采女」について研究報告 がなされました。近畿天皇家の采女制度は、九州王朝で先行して行われていたとする仮説です。わたしの記憶では、「采女」については古田学派内でもほとんど 研究されてこなかったテーマではないかと思います。これからの展開が期待されます。7月例会の発表は次の通りでした。

〔7月度関西例会の内容〕
1). 「安帝の鎖」高句麗好太王vs倭王讃(木津川市・竹村順弘)
2). 貴倭国と邪馬たい国(木津川市・竹村順弘)
3). 古代日本の実名敬避俗について(八尾市・服部静尚)
4). 巨大古墳についての一考察(八尾市・服部静尚)
5). 「別」の探求-天孫降臨以前の九州-(姫路市・野田利郎)
6). 采女について(多摩市・齋藤政利)
7). 『粘土に書かれた歴史』を読んで(京都市・岡下秀男)
8). 「常色律令」-『書紀』天武紀の「位冠・律令・法式・礼儀」記事について-(川西市・正木裕)
9). 倭人伝を尊重した末廬国・伊都国・奴国・不彌国の比定(川西市・正木裕)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
 古田先生近況・会務報告・ミネルヴァ書房からの古田書籍発刊・八王子セミナーの案内・行基建立の四十九院・文字より数字が先に発明された・『先代旧事本紀大成経』の国生み神話の小豆島・その他


第558話 2013/05/19

古代ギリシアの「従軍慰安婦」

 昨日の関西例会で、わたしは古代ギリシアの「従軍慰安婦」というテーマでクセノポン著『アナバシス』にギリシア人傭兵部隊に娼婦が多数従軍していたという記事があることを紹介しました。
 ソクラテスの弟子であるクセノポンが著した「上り」という意味の『アナバシス』は、紀元前401年にペルシアの敵中に取り残されたギリシア人傭兵1万数 千人の6000キロに及ぶ脱出の記録です。クセノポンの見事な采配によりギリシア人傭兵は故国に帰還できたのですが、その記録中に娼婦のことが記されてい ます。アルメニア山中の渡河作戦の途中に次の記事が突然現れます。

 「占者たちが河(神)に生贄を供えていると、敵は矢を射かけ、石を投じてきたが、まだこちらには届かなかった。生贄が吉 兆を示すと、全軍の将士が戦いの歌を高らかに唱して鬨の声をあげ、それに合わせて女たちもみな叫んだ−−隊中には多数の娼婦がいたのである。」岩波文庫 『アナバシス』(169頁)

 この娼婦たちはギリシア本国から連れてきたのか、遠征の途中に「合流」したのかは不明ですが、将士の勝ち鬨に唱和して叫んでいることから、前者ではないかと推定しています。
 昨今、物議を醸している橋下大阪市長による「慰安婦」発言もあったことから、いわゆる「従軍慰安婦」が紀元前400年頃の記録に現れている例として紹介 しました。この問題は他国への侵略軍・駐留軍が避けがたく持つ「性犯罪」「性問題」が人類史的にも根が深い問題であり、ある意味では橋下市長の発言を契機 に、より深く考える時ではないかと思います。「建前」だけの議論や、単なるバッシングでは沖縄の米兵による性犯罪をはじめ、世界各地の侵略軍・駐留軍により恐らくは引き起こされているであろう各種の問題を解決できないことは明白です。歴史学や思想史学が机上の学問に終わらないためにも、真剣に考えるべきテーマではないでしょうか。
 5月例会の発表は次の通りでした。なお、6月例会は「古田史学の会」会員総会・記念講演会などのため中止となりました。

 

〔5月度関西例会の内容〕
1). シキの考察−−西村説への尾鰭(大阪市・西井健一郎)
2). 古代に忌み名(諱)の習俗はあったのか(八尾市・服部静尚)
3). 歩と尺の話(八尾市・服部静尚)
4). 古田史学会インターネットホームページ運営報告(東大阪市・横田幸男)
5). 古代ギリシアの「従軍慰安婦」(京都市・古賀達也)
6). 和気(京都市・岡下秀男)
7). 「室見川の銘板」の解釈について(川西市・正木裕)
8). 「実地踏査」であることを踏まえた『倭人伝』の距離について(川西市・正木裕)
8). 味経宮のこと(八尾市・服部静尚)
9). 史蹟百選・九州篇(木津川市・竹村順弘)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田先生近況・会務報告・会誌16集編集遅れ・新東方史学会寄付金会計報告の件・行基について・その他 


第556話 2013/05/08

6月16日(日)、会員総会・講演会を開催します

 来る6月16日(日)に古田史学の会・会員総会を開催します。会員の皆様のご参加をお願いします。当日、総会に先立って午後1時より記念講演会を開催します。こちらには一般の方もご参加できます。
 今回の記念講演会は竹村さんと正木さんに講演していただくことになりました。テーマは次の通りです。

            

○竹村順弘さん 古田武彦著作集で綴る史蹟百選・九州編
○正木 裕さん 周王朝から邪馬壱国、そして現代へ・・倭人伝の官職名と青銅器・・

            

 竹村さんからは、現在、古田史学の会で編集中の「古田武彦著作集で綴る史蹟百選・九州編」(仮称)の概要について報告されます。古田史学関連遺跡の紹介を読みながら、古田史学について学べるという、優れものです。同書はミネルヴァ書房から刊行されます。
 正木さんからは、倭人伝の官職名が中国周代の青銅器に由来するという驚きの新発見について報告されます。倭人伝研究の新段階ともいうべきテーマですのでご期待ください。
 会場は古田先生の著作が多数集蔵されている、大阪府立大学難波キャンパスI-siteナンバです。是非ご参加ください。


第550話 2013/04/21

天王寺にあった「聖徳太子」の往復書簡

 昨日の関西例会は大阪西区民センターで行いました。会場予約抽選の競争倍率が年々高くなり、会場予約担当者のご苦労がしのばれます。

 4月例会の発表テーマは次の通りでした。中でも岡下さんの発表は、「聖徳太子」実は「カミトウの利(利歌彌多弗利)」と善光寺如来の往復書簡が法隆寺ではなく天王寺(四天王寺)に保存されていたというもので、「利」は難波の地で没したのではないかという大変興味深いものでした。

 よくよく考えてみれば、法隆寺は火災で全焼しており、和銅年間頃に再建(移築)されるまで、この往復書簡は別の寺院などにあったと考えざるを得ないのですが、それが天王寺だったというのは、なるほどと思いました。岡下さんには会報への投稿を要請しました。

 

〔4月度関西例会の内容〕
1). 山田宗睦仮説(日本書紀の仁徳~武烈紀は全文作為)の検証:仁徳~安康紀編(八尾市・服部静尚)
2). 「消息往来」の伝承(その2)(京都市・岡下秀男)
3). 史蹟百選・九州篇(木津川市・竹村順弘)
4). 難波朝廷の賀正礼と立礼(京都市・古賀達也)
5). 天皇家と「師木津日子」の系譜(高松市・西村秀己)
6). 「I-siteなんば」に収蔵された古田先生の著作(概要・2013年4月現在)(川西市・正木裕)
7). 博多湾岸「邪馬壱国」と怡土平野なる「奴国」(川西市・正木裕)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田先生近況「研究自伝」執筆中・古田先生テレビ出演・会務報告・大和田始『風土記解体』を読む・「乙巳の変」の中臣鎌足は藤原不比等(水野説)・その他


第548話 2013/04/07

『古田史学会報』115号の紹介

 『古田史学会報』115号が発行されました。今回も好論満載です。古田先生からも中嶋嶺雄さんのご逝去にあたり、追悼文をいただはました。
 西村さんからは「隼人」は北部九州の勢力であったとする新説が発表されました。今後の「隼人」研究における基本論文の一つとなるでしょう。正木さんから は大宰府観世音寺の「碾磑」が観世音寺建立時にベンガラの湿式粉砕に用いられたとする研究を詳述されました。わたしは七世紀の須恵器編年に関する知見から、前期難波宮天武期造営説が成立し得ないことを報告しました。札幌市の阿部周一さんも快調に論稿を発表されています。掲載稿は次の通りです。

〔『古田史学会報』115号の内容〕
○追悼 中嶋嶺雄君に捧ぐ  古田武彦
○隼人原郷  高松市 西村秀己
○七世紀の須恵器編年 -前期難波宮・藤原宮・大宰府政庁-  京都市 古賀達也
○観世音寺の「碾磑」について 川西市 正木裕
○『三角縁神獣鏡辞典』  京都市 岡下英男
○「元興寺」と「法隆寺」(1)「維摩経疏」残巻と「元興寺」の関係  札幌市 阿部周一
○割付担当の穴埋めヨタ話? 「自天祖降跡以逮」とは  高松市 西村秀己
○2013年度 会費納入のお願い
○会報原稿募集
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会 関西例会のご案内
○編集後記


第540話 2013/03/16

讃岐地方に濃密分布する「地神」神社

 本日の関西例会では、高松市に転居された西村さんから早速現地の神社の調査報告がなされました。讃岐地方に濃密分布する 「地神」という珍しい神様についてで、祭神は天照大神や埴安姫、倉稲魂が多いとのこと。逆に讃岐には稲荷神社がほとんど無いそうです。神社の分布にも地方 差があり面白い報告でした。
 竹村さんからは前回に引き続き、東テイ国をテーマとした仮説(東テイ人=縄文人)が発表されました。
 服部さんからも前回に引き続いて古代尺についての研究が報告され、太宰府・前期難波宮・藤原京の条坊が北朝の大尺(29.6cm)に基づくことが示されました。九州王朝と中国北朝との関係について示唆的な研究でした。
 わたしは藤原宮が二つあった可能性について報告しました(大宮土壇と長谷田土壇)。喜田貞吉さんの説を考古学的に発展させた作業仮説ですが、その当否を確かめるためにも現地調査(長谷田土壇)を行う予定です。
 正木さんからは倭人伝に記された「戸数」「家数」と人口との関連についての新説(戸=人口)を発表されました。
 3月例会の発表テーマは次の通りでした。

〔3月度関西例会の内容〕

1). 讃岐の地神(高松市・西村秀己)
2). 東テイ(魚是)人と弥生人の音韻(木津川市・竹村順弘)
3). 東テイ(魚是)人と串間の玉璧(木津川市・竹村順弘)
4). 古代基準尺についての考察(八尾市・服部静尚)
5). 二つの藤原宮(京都市・古賀達也)
6). 宇佐の神託(高松市・西村秀己)
7). 「碾磑」補足説明(川西市・正木裕)
8). 大阪府立大学なんばキャンパス「I-siteなんば」古田史学コーナーについて(川西市・正木裕)
9). 『魏志倭人伝』邪馬壱国等の人口についての問題提起(川西市・正木裕)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田先生近況・会務報告・「乙巳の変」は九州年号大化元年(695)・倭人伝の訓みの疑問・その他


第527話 2013/02/16

「古田武彦著作で綴る史蹟百選・九州編」候補地選定中

 本日の関西例会は京阪天満橋駅近くのエル大阪で行われました。毎回の会場確保は大変です。担当者やご協力いただいた会員の皆様に改めて御礼申し上げます。
   例会冒頭、竹村さんから「古田武彦著作で綴る史蹟百選・九州編」の候補地一覧の収集状況が報告されました。これは古田先生の著作から九州地方の遺跡や地名を会員の協力を得て、検索したものです。関西例会やハイキング参加者のご協力により、すでに百カ所以上の候補地がピックアップされました。もう一ヶ月ほどかけて更に収集し、その後絞り込み選定作業にすすむ予定です。
   正木さんからは、大阪府立大学なんばキャンパスの一角に古田史学著作を集蔵開架する企画の報告と、書籍の寄贈協力が呼びかけられました。四月から正式に開設されますので、後日詳しくご紹介します。
   2月例会の報告テーマは次の通りで、活発な質疑応答や討議が行われました。

〔2月度関西例会の内容〕
1). 古田武彦著作で綴る史蹟百選・九州編(木津川市・竹村順弘)
2). 「法隆寺の物差しは中国南朝尺の材」は成り立つか? 第二報 出雲風土記の里程(八尾市・服部静尚)
3). 「三献の儀」(三々九度)の起源 — 『周禮』の爵と觚-(川西市・正木裕)
4). 前期難波宮と藤原宮の整地層須恵器 — 小森俊寛説が成立しない理由(京都市・古賀達也)
5). 『養老律令』の中の九州王朝(京都市・古賀達也)
6). 大阪府立大学なんばキャンパス 古田史学コーナーの開設(川西市・正木裕)
7). 観世音寺の「碾磑」について(川西市・正木裕)
8). 薩夜麻の「薩」の由来(川西市・正木裕)
9). 筑紫都督府は薩夜麻の府(川西市・正木裕)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田先生近況・会務報告・会誌16号編集状況・『藤氏家伝』の研究(鎌足は火葬ではない)・その他


第516話 2013/01/19

倭人伝の官名と青銅器

 本日の関西例会は新年最初にふさわしく、優れた研究発表が続きました。中でも正木さんの発表は驚きのあまり参加者が拍手を忘れるというほど優れたものでした。詳細は「古田史学会報」で発表予定ですが、倭人伝に記された伊都国や奴国の官職名が古代中国の祭祀に用いられた青銅器に由来するというものです。
 服部さんは初めての例会発表でしたが、これもまた優れたもので、「古田史学会報」への寄稿を要請しました。「法隆寺の物差しは中国南朝尺の材」とされた川端俊一郎説への批判ですが、わたしも疑問に感じていた点を鋭く指摘されました。
 竹村さんの発表は、日本列島や沖縄の縄文人と東てい(魚是)国との関係に言及したもので、今後の展開が期待されます。
 わたしからは、新潟県「城の山古墳」から出土した盤龍鏡は九州王朝からのものとする考察を発表し、大和朝廷一元史観による新聞発表を批判しました。また、七世紀の須恵器編年についての報告では、前期難波宮創建を天武朝とする小森俊寛説が成立しないことと、大宰府政庁の須恵器編年と近畿の須恵器編年との矛盾について論じました。
 1月例会の報告テーマは次の通りでした。

〔1月度関西例会の内容〕
1). 「法隆寺の物差しは中国南朝尺の材」は成り立つか(八尾市・服部静尚)
2). てい(魚是)海(木津川市・竹村順弘)
3). アンチョビとキュウリエソ(木津川市・竹村順弘)
4). 古田武彦著作で綴る史蹟百選・九州篇その2(木津川市・竹村順弘)
5). 新潟県「城の山古墳」出土盤龍鏡の考察(京都市・古賀達也)
6). 7世紀の須恵器編年 — 小森俊寛説が成立しない理由(京都市・古賀達也)
7). 「魏志倭人伝」伊都国・奴国の官名 — 仁平さんとともに(川西市・正木裕)
8). 北河堀町所在遺跡発掘調査現地説明会資料の解説(京都市・古賀達也)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
 古田先生近況・会務報告・賀詞交歓会の報告・中村通敏氏「大津透説批判CD」・谷川清隆氏「日本書紀成立に関する一試案」・その他


第505話 2012/12/15

「多元的木簡研究会」のすすめ

 本日の関西例会で、わたしは「平成24年の回顧」を発表しました。内容は「洛中洛外日記」第504話で紹介したものですが、その中で「多元的木簡研究会」の発足を伝え、会員を募りました。

 「多元的木簡研究会」への入退会は自由で(会費不要)、会員資格要件は「年に一つ以上の木簡に関する論文・報告を発表すること」だけです。会員特権は発表した論文の内容が良ければ「古田史学会報」やHP「新・古代学の扉」に掲載され、将来的には書籍として発刊されるということです(共著者として名を連ね ます)。入会申し込みと論文投稿は古賀までお願いします。なお、多元的木簡研究会の代表・主筆は正木裕さんです。

 例会の発表テーマは下記のとおりでした。原幸子さんの、草薙の剣が盗難の後、一時、大阪の住吉大社にあったという報告は、初めて聞く内容で興味深いものでした。

〔12月度関西例会の内容〕
1). 天皇家の名字は「シキ」(向日市・西村秀己)
2). 縄文人東テイ(魚是)国vs弥生人倭国のゲノム(木津川市・竹村順弘)
3). 古田史学の会「平成24年の回顧」(京都市・古賀達也)
4). 難波宮跡(NW-12-4次)発掘調査現地説明会資料の解説(京都市・古賀達也)
5). 朱鳥改元(奈良市・原幸子)
6). 吉野行幸「丁亥」不在問題と孝徳葬儀の34年遡上理由(川西市・正木裕)
7). すり替えられた南方諸島支配(川西市・正木裕)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田先生近況・会務報告・「発掘で明らかになった長屋王の実体」・長屋王は九州王朝を継ぐべき皇子・田中卓『古典籍と史料』の「古事記裏書」(最古の古事記注釈書)・その他


第493話 2012/11/18

九州王朝と近畿天皇の「婚姻」

昨日の関西例会では、「大長」木簡の実見報告と、冨本銭と和同開珎に関する文献史学と科学的成分分析に関する考察をわたしは発表しました。風邪のため頭がボーッとしていましたので、要領を得ない発表となりました。参加者の皆さん、すみませんでした。内容については「洛中洛外日記」で述べていきたい思います。
 竹村さんと正木さんからは偶然にも同じ「南島」(種子島・屋久島)に関する研究報告がありました。詳細は会報で発表されることと思います。
 今回の例会では西井さんの発表に興味を引かれました。それは九州王朝と近畿天皇家の間での「婚姻」の可能性に言及されたことです。
 列島内の代表王朝である九州王朝とナンバーツーの近畿天皇家間で「政略結婚」があったことは容易に想像されますが、今までこうした研究は古田学派内でもそれほど多くはなされてきませんでした。701年における権力交代を研究するうえで、こうした「政略結婚」という視点で古事記・日本書紀を精査すれば、九州王朝の「皇女」の存在が浮かび上がってくるのではないでしょうか。
 例会の発表テーマは下記のとおりでした。
〔11月度関西例会の内容〕
1). 「自天祖降跡以逮」とは…(向日市・西村秀己)
2). 椿説弓張月と南島志(木津川市・竹村順弘)
3). すり替えられた九州王朝の南方諸島支配(川西市・正木裕)
4). 風説・九州王朝から来た孝徳(大阪市・西井健一郎)
5). 「大長」木簡の報告(京都市・古賀達也)
6). 冨本銭と和同開珎の多元的考察(京都市・古賀達也)
7). 八王子古代史セミナーの報告(明石市・不二井伸平)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
 古田先生近況・会務報告・古事記序文の「天皇」「天位」・TV大学市民講座「朝鮮時代に描かれた日本」他・安富歩『生きるための経済学』・その他