古田史学の会一覧

第990話 2015/06/29

7月19日(日)愛知サマーセミナーで講義します済み

 愛知淑徳高校で毎年開催されている「愛知サマーセミナー」で講義することになりました。主に高校生を対象とはしていますが、一般の方の聴講もOKとのことです。
 同イベントには多くのセミナーや特別講師陣による講演もあり、古田先生も講演されたことがあります。いわば愛知県での一大教育イベントです。このセミナーには「古田史学の会・東海」が毎回参加されており、今回も2時限の古代史講義を担当され、その内の1時限をわたしが受け持つことになりました。
 当日はレジュメの他にプロジェクター映写も予定しています。「九州王朝系図(草壁氏系図)」などもお見せする予定です。東海地方の皆様のご参加をお願いいたします。
 メイン会場は愛知淑徳高校(地下鉄東山線、星ヶ丘駅下車)とされていますが、詳細の連絡はまだ入っていません。日時などは次の通りです。

「愛知サマーセミナー2015」
【日時】7月19日(日) 13:10〜14:30 講師:古賀達也
14:50〜16:10 講師:古田史学の会・東海
【タイトル】教科書が書かない!日本古代史の真実とは!
【紹介文】紀元前から七世紀まで、倭国と呼ばれ中国と通好していたのは、卑弥呼以降も連綿と続いた九州王朝だった。緻密な史料調査をもとに近畿天皇家よりも先に九州王朝が存在していたこと明らかにする。

会場と交通アクセスは、995話をご覧ください。済み


第987話 2015/06/24

「古田史学の会」新役員体制が発足

 6月21日に開催された「古田史学の会」第21回定期会員総会で全国世話人および新役員体制が承認されました。創立以来「古田史学の会」の代表を勤められていた水野孝夫さんが顧問に退かれ、代わってわたしが代表を務めさせていただくこととなりました。
 水野さんからは数年前から代表退任の要望をうかがっていたこともあり、創立20年の節目でもあることから新体制発足となりました。水野さんには引き続き顧問としてご指導いただくことになっています。また、古田先生との日常的な連絡・相談役も引き続きお願いをしております。水野代表と共に創立以来副代表をされてきた太田斉二郎さんも勇退されることとなりました。
 小林嘉朗副代表には留任していただき、事務局体制の復活により、正木裕さんには事務局長、竹村順弘さんには事務局次長として「古田史学の会」の運営にあたっていただきます。インターネット事務局は横田幸男さん、書籍部は不二井伸平さん、『古代に真実を求めて』編集責任者は服部静尚さん、会計は西村秀己さん、会計監査は杉本三郎さんという体制です。『古田史学会報』編集責任者はわたしが引き続き担当し、西村さん・不二井さんに同編集を担当していただきます。
 創立20年を越えて、「古田史学の会」は新たなステージへと向かいます。古田先生と古田史学を支持応援し、古田史学を世に広め、古田史学の発展と会員交流という創立以来の使命を胸に前進してまいります。全国の会員、支持者の皆様のご協力をお願い申しあげ、新体制発足のご報告と決意表明といたします。


第984話 2015/06/20

九州王朝の御子孫が例会参加

 本日の関西例会には大阪市在住の隈(くま)さんが初参加されました。そのお名前が気になり、どちらのご出身ですかとお聞きしたところ、久留米市大善寺とのこと。やはりそうだったのかと思いました。というのも、九州王朝の王族と思われる高良玉垂命の9人の皇子(九躰皇子)の「長男」シレカシ命の御子孫が大善寺玉垂宮の神官の隈家とされており、その御一族のようです。隈さんのお話でも、久留米市大善寺には隈を名乗る家が多いとのことです。
 大善寺玉垂宮の史料には端政元年(589年)に玉垂命が崩御されたとあります。その次代の天子が有名な「日出ずる処の天子」阿毎多利思北孤ですから、隈さんは九州王朝の天子の一族の御子孫ということになります。関西例会で九州王朝の御子孫にお会いでき、とても驚きました。ちなみに、隈さんは「古田史学の会」ホームページに掲載されたわたしの「九州王朝の筑後遷宮」にある大善寺玉垂宮の隈氏に関する記事を読まれ、関西例会に参加されたとのことでした。
 6月例会の発表は次の通りでした。

〔6月度関西例会の内容〕
①元嘉暦が11年ずれたとしたら(高松市・西村秀己)
②再び、日本列島の「倭人」国と朝鮮半島の内の「倭」について(奈良市・出野正)
③中国の王朝は二倍年暦か?(奈良市・出野正)
④再び「倭人貢暢」論議(奈良市・出野正)
⑤相撲の起源(京都市・岡下秀男)
⑥推古紀が明かす近畿朝の真統譜(大阪市・西井健一郎)
⑦大化改新の論点を整理する(八尾市・服部静尚)(八尾市・服部静尚)
⑧「神武東征譚」はリアルか、また、ニギハヤヒ王朝からの「譲位・譲国」ではなかった?(東大阪市・萩野秀公)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田先生近況(『三国志』短里問題の論文執筆。『古代に真実を求めて』次号に掲載予定、『隋書』「犬を跨ぐ」が原文、「志賀島の金印」出土地に疑義、神社の狛犬はライオンか犬か、来日した最初の僧はインドから?)・新年度の会役員人事・5/17会計監査実施・5/23「古田史学の会・四国」と大阪で懇親会・「船の科学館」で南極観測船宗谷を見学・テレビ視聴(NHK歴史ヒストリア「古代日本の愛の力」)・その他


第977話 2015/06/12

「洛洛メール便」好評配信中

「古田史学の会」会員向け無料サービスとして「洛洛メール便」を配信しています。ホームページ掲載の「洛中洛外日記」の他に、「洛中洛外日記【号外】」も配信しています。この【号外】は会員限定情報ですので、ホームページには掲載されません。
【号外】としてこれまで次のようなテーマを配信しました。タイトルのみご紹介します。まだ、配信申し込みをされていない会員の皆様もこの機会に是非お申し込みされてはいかがでしょうか。申し込み先はホームページに掲載していますので、ご参照ください。会員番号が不明の場合は、その旨をご記入ください。

「洛中洛外日記【号外】」日付 タイトル

2015/04/27 久留米大学公開講座レジュメ
2015/04/30 「シルクをまとった女王たち」
2015/05/06 愛知サマーセミナーでの講義依頼
2015/05/10 明石書店が朝日新聞に広告
2015/05/13 『盗まれた「聖徳太子」伝承』再々読
2015/05/17 「万葉集の中の紫外線漂白」
2015/05/22 「事務局」体制復活へ
2015/05/27 愛知淑徳高校でサマーセミナー開催
2015/05/28 2015年度の事業計画
2015/06/06 2015年度の役員体制案
2015/06/09 「戦う!書店ガールズ」最終回を見る


第974話 2015/06/08

『古田史学会報』128号のご紹介

今日は昼過ぎからずっと雨です。梅雨入りですから仕方ありませんが、雨の日は自転車通勤できませんので、朝は1時間ほど早起きしなければなりません。生活や仕事のリズムがちょっとくるいますので、やっぱり晴れのほうが好きです。
うっとうしいのは梅雨空だけではなく、仕事中に聞き慣れない会社から変な電話がありました。用件を聞いてみると、どうやらヘッドハンティングの会社で、わたしを誘っているクライアントからの依頼を受けてとのことでした。もちろん、即、断りました。わたしはこれでも愛社精神は強い方で、今の仕事に使命感も持っていますので。
ちなみに、ヘッドハントを受けたのは、今日で2回目です。1回目は40歳くらいのときで、このときも断りました。勤務地が東京でしたので、京女の妻が反対するのは目に見えてもいましたから。30代のときも、ヘッドハントではありませんが、一緒に起業しないかと誘いを受けたことがありました。全て断って正解でした。そのおかげで今の自分や「古田史学の会」があり、たくさんの研究仲間や同志と出会えたのですから。
『古田史学会報』128号が発行されましたので、掲載稿をご紹介します。1面は久しぶりに投稿された森茂夫さんの論稿で、地元の網野銚子山古墳についての報告です。同古墳の規模が、従来の報告よりも大きいというご指摘で、地元ならではの内容でした。ちなみに、森さんは「浦島太郎」の御子孫です。超有名な人物の御子孫が「古田史学の会」に入っていただいているのですから、それはうれしいものです。
札幌市の阿部さんからは二つの原稿を掲載させていただきました。採用決定はずいぶん以前のことですが、字数が多いため、掲載が延び延びになってしまいました。投稿される方は、なるべく短くまとめた原稿とするようご配慮をお願いします。
掲載稿は次の通りです。

『古田史学会報』128号の内容

○網野銚子山古墳の復権  京丹後市 森茂夫
○6月21日 会員総会・記念講演会のお知らせ
○「短里」の成立と漢字の起源  川西市 正木裕
○「妙心寺」の鐘と「筑紫尼寺」について  札幌市 阿部周一
○長者考  八尾市 服部静尚
○九州王朝の丙子椒林剣  京都市 古賀達也
○「漢音」と「呉音」 皇帝の国の発音  札幌市 阿部周一
○メルマガ「洛洛メール便」配信のお知らせ
○『古田史学会報』原稿募集
○古田史学の会・北海道 2014年度活動報告  「古田史学の会・北海道」代表 今井俊圀
○史跡めぐりハイキング 古田史学の会・関西
○古田史学の会・関西例会のご案内
○編集後記 西村秀己


第959話 2015/05/25

正木講演「東アジアの中の狗奴国」

 6月21日(日)の「古田史学の会」会員総会と記念講演会が近づいてきました(会場:i-siteなんば)。今年の講演は既にお知らせしていますように、庄内式土器研究のスペシャリストである米田敏幸さんと正木裕さん(古田史学の会・全国世話人)のお二方が講師です。
米田さんの講演タイトルは「庄内式土器について〜古式土師器の交流からみた邪馬台国時代の国々〜」というものですが、正木さんの講演タイトルも「東アジアの中の狗奴国」と正式に決まり、グローバルな展開が期待されます。古田説によれば邪馬壹国と戦った狗奴国は関西地方に割拠した銅鐸文明圏の盟主とされています。今回のお二人の講演は共に弥生時代の関西についての研究です。
 わたしも現在の関心事の一つが、淡路島から「出土」した7個の銅鐸と天孫降臨の暦年についてです。狗奴国研究は弥生時代の銅鐸文明圏や天孫降臨、すなわち倭国と狗奴国の激突をどのようなものととらえるのかが重要な研究課題です。「古田史学の会」屈指の論客である正木さんと、通説に鋭い科学的批判のメスを入れる気鋭の考古学者、米田さんの講演は異色の組み合わせでもあり、おそらく歴史的な講演となることでしょう。多くの皆さんの参加をお待ちしています。参加費は無料で、非会員の方も参加できます。ふるってご参加下さい。


第957話 2015/05/23

「古田史学の会・四国」来阪

「古田史学の会・四国」の皆さん17名が昨日から二泊三日の遺跡巡りツアーで関西に見えられました。今日は大阪のホテルで懇親会を行うとのことで、わたしも京都から駆けつけました。関西からは水野代表や正木裕さん、西井健一郎さん、そして前日から案内役をされている小林嘉朗副代表が懇親会に参加しました。小林さんは関西の遺跡や古墳について「古田史学の会」の中でも最も博学で、「古田史学の会・関西」の遺跡巡りハイキングも主催されており、「四国の会」の皆さんにも喜んでいただけるものと思います。
「四国の会」の阿部誠一会長(古田史学の会・全国世話人)や合田洋一さん(古田史学の会・全国世話人)をはじめとする皆さんと夜遅くまで懇親と歴史談義を続けました。わたしからは、前期難波宮をしっかりと見ていただき、前期難波宮九州王朝副都説が正しいか否かを皆さんで確かめてください、とご挨拶しました。
こうした交流会も全国組織ならではの楽しみであり、古田先生を師と仰ぎ古田史学を共に学び研究する同志だからこその幸せな一時でした。7月には正木さんが「四国の会」の会員総会で講演されることが決まっており、関西と四国は益々親交が深まることと思います。


第953話 2015/05/16

北京大学図書館蔵「九州年号史料」の報告

 本日の関西例会には久しぶりに神戸市の谷本茂さん(古田史学の会・会員)が参加され、九州年号に関する研究2件を発表されました。中でも北京大学図書館が所蔵している九州年号「定居」が記された『唯摩結経』写本を神戸外語大の図書館所蔵写真本からコピーして紹介され、感慨深く拝見しました。
 「聖徳太子」による書写とされる同史料については、「洛中洛外日記」でも論じてきたところですが、後代偽作などではなく、同時代九州年号史料、あるいはその写本と思われました。谷本さんも同様の見解を発表されましたが、やはり北京大学で同史料を実見し、紙の科学的調査などにより成立年代を調査する必要を改めて感じました。
 正木裕さんからは、謡曲「桜川」の母子の出身地「筑紫日向」が糸島半島の細石神社付近であることを論証されました。
 5月例会の発表は次の通りでした。

〔5月度関西例会の内容〕
①賀正・大射礼と改新詔(八尾市・服部静尚)
②「白髪三千丈」-二つの欺瞞-(八尾市・服部静尚)
③『三国志』と朝鮮半島の「倭」について(姫路市・野田利郎)
④北京大学図書館蔵敦煌文献「定居元年歳在辛未上宮厩戸寫」『唯摩結經巻下』の史料批判(神戸市・谷本茂)
⑤「貞慧伝」の白鳳年号と『二中歴』の“逸年号”について -11年ずれた干支紀年の仮説-(神戸市・谷本茂)
⑥謡曲「桜川」と九州王朝(川西市・正木裕)
⑦学問としての歴史の論拠について(奈良市・出野正)
⑧中国の王朝暦は二倍年暦か?(奈良市・出野正)
⑨服部静尚氏の「倭国」=「倭人の国」についての不可解を論じる(奈良市・出野正)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
古田先生近況(『古田武彦古代史百問百答』ミネルヴァ書房発刊)・新年度の会役員人事・経費決算・明石城から人丸山柿本神社ハイキング・テレビ視聴(飛鳥仏教と尼寺、巴文探求)・鳥取県湖山長者伝説・その他


第933話 2015/04/25

メルマガ「洛洛メール便」配信のお知らせ

このたび「古田史学の会」では会員を対象としたメールマガジン「洛洛メール便」配信サービスをスタートさせます。コンテンツは当面次のような内容で始めます。

(1)「洛中洛外日記」
ホームページでは週1回のペースで更新していますが、「洛洛メール便」にて随時配信します。
(2)「洛中洛外日記」号外
号外はホームページには掲載されない会員向け限定情報です。
(3)会員へのお知らせ・他。

最初は試行錯誤で進めますが、徐々に充実させたいと考えています。また、会員からのメールでのご質問やご要望などにも、可能な限りお答えしたいと考えています。
「洛洛メール便」配信を希望される会員は、下記のメールアドレス宛に「洛洛メール便配信希望」と記して下記の内容を記入して下さい。会員名簿によるご本人確認の上、「洛洛メール便」配信を開始します。

○お名前
○『古田史学会報』発送先のご住所
○電話番号
○会員番号
○配信先のメールアドレス

【配信申し込み先アドレス】
yorihiro.takemura1@gmail.com
担当者 竹村順弘(古田史学の会・全国世話人)

なお、配信はbccで行います。会員の皆さんのお申し込みをお待ちしています。

参照:当会の入会案内


第929話 2015/04/21

6月21日(日)、米田敏幸さんを迎え、

記念講演会開催済み

 今日は仕事で宝塚市仁川に行きました。途中、阪急梅田駅で乗り換え待ち時間がありましたので、紀伊国屋書店で時間つぶししました。もちろん古代史書籍コーナーに直行したのですが、『盗まれた「聖徳太子」伝承』も聖徳太子コーナーの書棚に並んでいました。『古代に真実を求めて』の他の号は置かれてなかったので、「聖徳太子」特集を前面に押し出したリニューアルの効果が、こうしたところにも出てきているようです。
 一昨日の「古田史学の会」の編集会議で、6月21日(日)開催予定の定期会員総会での記念講演講師を検討しました。今回は庄内式土器研究のスペシャリストである米田敏幸さんと正木裕さん(古田史学の会・全国世話人)のお二方に講演していただくこととなりました。米田さんからは庄内式土器の胎土研究の成果から、「邪馬台国」畿内説の考古学的根拠の一つとされてきた庄内式土器産地(中心地)が大和ではなかったことや、河内での考古学的出土状況などをお話しいただけることと思います。正木さんからは倭人伝の文献史学研究と「呉の年号鏡」研究の成果など、邪馬壹国と争った狗奴国について発表していただけます。
 いずれも、関西(銅鐸文明圏)にあった狗奴国研究において、今後の起点(問題提起)になるものと期待されます。多くの皆さんのご来場をお待ちしています。非会員の方も聴講できます。
 なお、お二人の講演録は、今秋発刊予定の『「邪馬台国」論争を超えて ・・邪馬壹国の歴史学』(仮称、古田史学の会編・明石書店刊)に収録を計画中です。こちらもご期待下さい。
記念講演会の詳細は後日改めてお知らせしますが、会場は「i-siteなんば」で、6月21日(日)午後1時に開演です。


第927話 2015/04/19

「邪馬台国」論争を越えて

・・・邪馬壹国の歴史学

 今日はi-siteなんばで、「古田史学の会」の編集会議を行いました。今秋、発行予定の『三国志』倭人伝研究の本に関する書名や章立て、掲載稿について審議しました。
 書名について様々な案を検討し、従来の「邪馬台国」本とは内容もレベルも異なることが印象づけられる古田史学らしい書名として次の案が採択され、明石書店に提案することにしました。

 『「邪馬台国」論争を越えて ・・・邪馬壹国の歴史学・・』古田史学の会 編

 章立ても検討中ですが、次のような項目(仮称)と切り口で古田史学・邪馬壹国説を説明します。

 ○巻頭言
 ○初めて古田史学、邪馬壹国説に触れられる皆様へ
 ○古田先生からのメッセージ
 ○倭人伝の位置づけ
 ○短里で書かれた『三国志』
 ○倭人伝の二倍年暦
 ○倭人伝の文物
 ○全ての史学者・考古学者に問う
 ○講演録
 ○『三国志』原文(紹煕本)と古田先生の訳文

 若干の変更はあると思いますが、概ね以上のような内容となります。この本もかなり面白く、かつ後世に残る一冊になりそうです。
 ところで、3月に発刊しました『盗まれた「聖徳太子」伝承』(『古代に真実を求めて』18集)が好評により、明石書店の在庫も底をつきそうですので、増刷の方向で検討を進めています。お買い上げいただいた皆様に御礼申し上げます。


第926話 2015/04/18

アポローンは太陽神か?

 本日の関西例会も盛りたくさんの発表で、楽しく有意義な一日となりました。
 冒頭、西村さんからは、ギリシア神話のアポローンは太陽神ではないと史料をあげて説明されました。アポロドーロス著『ギリシア神話』(高津春繁訳、岩波文庫)によれば、アポローンは予言者・神託にかかわる神とされており、古代ギリシアにおける太陽神はヘーリオスとされています。ちなみにヘーリオスはオリンポス山には住んでいないとのこと。アポローンがいつ頃から太陽神とされたのかと質問したところ、5〜6世紀頃ではないかとのことでした。
 原さんは、『住吉神代記』に記された住吉の神領が難波京を取り囲むように位置していることから、これら全体で「一国」を形成していたのではないかとされました。そして『二中歴』「年代歴」細注にある「新羅人来たりて筑紫より播磨を焼く」という記事は、新羅が住吉神社の勢力圏を攻撃したのではないかとされました。
 出野さんからは前回に引き続いて、『漢書』『三国志』倭人伝に見える「倭」と「倭人」が別国(朝鮮半島の「倭」国と日本列島の「倭人」国)であるとする持論を展開されました。先月、茂山憲史さん・正木さん・西村さんから出された批判について、改めて反論されました。特に興味深く思ったのが、西村さんへの反論で示された「在」と「有」の違いについての説明です。『漢書』の「楽浪海中有倭人」にある「有」は倭人の「初見」を表す際に用いられ、既知の場合は「倭人在帯方東南海中」(『三国志』倭人伝)のように「在」の字が使われるとのことで、面白い指摘と思われました。
 岡下さんは、『万葉集』で宇治川を「是川」と表記する例(2427・2429・2430)があるが、これは「この川」と訓むのではないかとされました。そして、古墳時代の銅鏡の銘文で倭人は漢字を習得したとする森浩一説を批判され、交易により記録が必要なため、渡来人から倭人は交易業務と共に文字を習ったとされました。倭国の文字受容の時期や仕方について論議が交わされ、認識が深まりました。
 この間続けられてきた「大化改新詔」論争が今回もなされました。服部さんは、前回の正木さんからの批判は決定的なものではないと反論され、「大化改新詔」は九州王朝により7世紀中頃に前期難波宮で出されたと考えても問題ないとされました。
 正木さんからは「大化改新」論争の研究史と諸説を概説され、自説の「常色の改革」説を再論されました。そして、なぜ九州年号「大化」(695〜703年)を『日本書紀』では645〜649年にずらして盗用したのかが根本の問題とされ、その理由が説明できない服部説を批判されました。
 次に、「短里」の起源が殷まで遡ることを『礼記』などから論証され、「短尺(16cm強)・短寸(2cm強)」と「短歩(25cm強)・短里(75m強)」(周制三百歩を一里とす。『孔子家語』)が別系統の長さの単位であることを漢字の語義などから明らかにされました。
 最後に、服部さんから「長者」の意味について発表があり、「長者」は仏教用語(ギルドの頭領・指導者・組合長を意味するシュリイシュティンの漢訳)として6世紀後半から7世紀にかけて日本に伝来したとされました。そして「長者」は九州王朝の天子の呼称としてふさわしいと締めくくられました。時間が少し余りましたので、ギリシア旅行の報告が服部さんからなされました。
 以上、4月例会の発表は次の通りでした。

〔4月度関西例会の内容〕
①アポローンは太陽神に非ず(高松市・西村秀己)
②住吉神代記と九州王朝(奈良市・原幸子)
③松本清張氏の見解を再び(奈良市・出野正)
④鏡は文字習得に役立ったか(京都市・岡下英男)
⑤「大化年号は何故移設されたか」論考に問う(八尾市・服部静尚)
⑥大化の改新問題について(川西市・正木裕)
⑦「短里」の成立と漢字の起源(川西市・正木裕)
⑧長者考(八尾市・服部静尚)
⑨ギリシア旅行報告(八尾市・服部静尚)

○水野代表報告(奈良市・水野孝夫)
 古田先生近況(お元気で好調、津軽の金光上人新史料入手、太田覚眠新史料入手)・新年度の会役員人事・橿原市博物館ハイキング・テレビ視聴(北摂の窯業生産、平安遷都と瓦生産)・大塚初重氏「三角縁神獣鏡国産説に転向」・その他